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アニメ『シャーマンキング』43話 「思いの力が強ければ勝つ」わけではなかった?

マグミクス / 2022年2月10日 18時30分

アニメ『シャーマンキング』43話 「思いの力が強ければ勝つ」わけではなかった?

■「シャーマン」という存在を一歩引いて見ると…?

 2022年2月10日(木)に放送されたTVアニメ『シャーマンキング』第43話では、「シャーマンVS普通の人間」という構図などを通じて、さまざまな気づきがありました。まずはそれを掘り下げてみます。

 私たちがこれまで目にしてきたのは「シャーマン」の生き様と戦いでした。彼等は持霊(もちれい)を使って物事を解決しようとします。ただそれが必ずしも「普通の人間」の解決手段よりも優れているとは限りません。シャーマン能力を透視や失せ物探しのように使うなら断然優位だと思いますが、戦闘はどうでしょうか?

 シャーマンが普通の人間と霊能力で戦うためにはオーバーソウルが必要です。そうして初めて霊は物理に干渉できるのです。でもそこまで到達するのはシャーマンのなかでもひと握りです。

 こう考えると、銃や兵器を持った普通の人間と戦うのに、シャーマンは特に有利でないことがわかります。作中では実際にそうした現実が突きつけられてしまったわけです。なまじ麻倉葉がもともと憑依合体するシャーマンで、オーバーソウルを使わなくても普通の人間と戦えるばかりに、原作を読んだ当時の筆者はその発想に至りませんでした。

 でも「シャーマンの物語」を描くのなら一歩引いて「全人類のなかのシャーマン」に触れることは重要です。今回、ペヨーテの「狭い世界で閉じこもっているから考えが偏る」「ハオはシャーマンのなかで最強なだけ」という言葉にハッとした方もいるのではないでしょうか?

 同じようなことが地獄での出来事でも描かれています。ここでは葉とリゼルグに着目しますが、このふたりを通じて「想いの力」というものがいかに大切かが、明確に描かれています。

 そして、特にリゼルグはマステマに勝つイメージを強く持ったにもかかわらず、勝つことができず潰されてしまいます。この時「自分は魂を砕かれたかもしれない」というイメージを持ちそうになってしまったところをアバフに止められ、想いの力で自分の姿を再構成します。

 ややトリッキーともいえる演出はまさに「想いの力」を一歩引いてとらえている部分です。これまで「想いの力」とは、「勝つための力」として強ければ強いほど良い……と描かれることが多かったのですが、リゼルグの場合は「負けてしまう力(魂が砕ける)」にもなってしまうことを説明しているのです。

 想いが弱いから負けるのではなく、強いから負ける(魂が砕ける)わけです。こう考えると、「想いの力」も使いどころが重要なのだと気づかされます。

■なぜハオ組は深い絶望を抱いてしまったのか?

ハオが「他人の心が読める能力」隠していたことは、仲間たちに動揺を与えた。アニメ『シャーマンキング』43話より (C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京

 では次に、前回の記事で予告していた葉賢との戦いについて解説します。ここでは「いつ誰が何を」を整理しておくと良いでしょう。麻倉葉賢は麻倉葉王の子孫で、500年前のシャーマンファイトではパッチに転生したハオを倒した人物です。その時の持霊はマタムネで、「恐山ル・ヴォワール」編でマタムネが悔いていたのは葉賢とともにハオを倒したことです。

 その後、経緯は不明ですが葉賢は地獄で戦いに明け暮れ、まだ500年前の時間感覚でいたところに葉がやって来たというわけです。マタムネはすでにそこにいないため、葉賢のオーバーソウルは彼ひとりの想いで生み出されたものです。

 では最後に、ペヨーテが裏切った理由について掘り下げてみます。ハオが「他人の心が読める能力」を隠していたことがペヨーテやハオ組の者たちを絶望させたわけですが、そうは言ってもボスが部下に手の内をすべて明かさないのはよくあることです。

 それがそんなにショックだったのか……こう思う方もいるかもしれません。しかし彼らの境遇を考えれば無理もない話です。不可解な能力を持っていたばかりに人びとから迫害されたり、紛争地域の国に生まれたばかりに死と隣り合わせの毎日を送っていたりしていた彼らは、人間を信頼することに臆病で、相手のすべてを知らないと安心できません。隠し事や嘘などあってはならないことだと考えることもあります。

 そんな、「0か1」しかない彼らがハオを信頼するということは、ハオが何もかもさらけ出してくれていると思い込んでいた証拠です。それが嘘だとなれば、足元を支えていた地面がなくなるのと同じようなショックを受ける……という点は理解できる気がします。

 それでも花組はまだ冷静で、ハオに直接事実を確かめようとしますが、それが仇となり、ハオに魂を食わせろと迫られて嘘を嘘だと理解してしまうのでした。これが地獄での出来事だったら、彼女たちの魂は「負けてしまう想いの力」が強すぎて消滅していたかもしれません。

 なお花組の3人の過去は「なかよし」に連載中の外伝『SHAMAN KING &a garden』で描かれていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

 それにしても、物語も残すところ10話を切り、毎回が見どころ満載の展開になること間違いなしですね! それでは今回はこの辺で。またよろしくお願いします!

●タシロハヤト 
美少女ゲームブランド「age(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。

(タシロハヤト)

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