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『逆転イッパツマン』放送40周年 「悪が勝った」エピソードの真相とは?

マグミクス / 2022年2月13日 6時10分

『逆転イッパツマン』放送40周年 「悪が勝った」エピソードの真相とは?

■モチーフは「野球」、マンネリ化への対応で新機軸を取り入れ

 40年前の1982年2月13日は、『タイムボカンシリーズ 逆転イッパツマン』(以下、イッパツマン)の放送が開始された日です。あれからちょうど40年、主人公・豪速九(ごう そっきゅう)を演じた富山敬さんも、ナレーションを務めた鈴置洋孝さんも、三悪のコスイネン役である八奈見乗児さんも、キョカンチンのたてかべ和也さんも亡くなられてしまいました。まだご存命であるムンムン役の小原乃梨子さんには、末長くお元気でいて欲しいと切に願います。

 さて、1975年にスタートした『タイムボカン』シリーズのなかでも『タイムボカン』と『ヤッターマン』は度重なる再放送も相まって、子供たちの日常の一部となっていました。

 夕方の4時ごろという、今では考えられない時間帯にも『ムーミン(旧)』などとともに放送されることが多く、放課後の子供たちをTVの前に釘付けにしていたものです。いま改めて考えれば、夕食の支度に追われるお母さんにとっては心強い味方だったのではないでしょうか。

『ヤッターマン』の後にも『ゼンダマン』『オタスケマン』『ヤットデタマン』と、趣向を凝らした新作が次々と制作されており、関東圏では午後の6時半から放送され、子供たちを楽しませてくれていたものです。しかし人気こそあったものの、視聴率では『ヤッターマン』をなかなか超えることができず、マンネリ化も指摘されていました。

 このような状況で登場したのが『イッパツマン』でした。当時の男の子に人気のあった野球をモチーフとして取り入れ、主人公もシリーズ恒例の少年少女から青年男性に変更されるなど、マンネリ化を防ぐためのさまざまな工夫が取り入れられていました。

 前作『ヤットデタマン』に引き続き、巨大ロボットも「逆転王」と「三冠王」が登場し、子供たちを歓喜させたものです。また、ストーリーもかなりシリアス方面に舵が切られているのですが、オープニングの一番最初に豪速九が走るシーンと足音を入れるだけで、子供にも「あ、このアニメは今までのとは何か違うぞ?」と理解できるよう作られていることに驚かされました。本作を製作したクリエイターたちが、子供たちに真剣に向き合っているからこそできた演出なのでしょう。

■「自分たちが倒した」と勘違いする三悪

アニメ『逆転イッパツマン』全58話を収録した「逆転イッパツマン 全話いっき見ブルーレイ」(フロンティアワークス)

 本作『イッパツマン』を語るとき、必ずといっていいほど話題となるのが「悪が勝利する回」があることです。ところが実のところ、勝ったのは「悪」ではありますが、シリーズお馴染みの「三悪」ではありません。この点を少し説明しておこうと思います。

 悪が勝利したのは第30話「シリーズ初! 悪が勝つ」となります。本作での三悪は業界2位の巨大企業「シャレコーベリース社」のオストアンデル北部支社に所属する会社員……という設定になっており、ライバル企業である「タイムリース社」の業務を妨害する役どころでした。

 しかし妨害を行おうとすると、どこからともなくイッパツマンが現れて、せっかく用意した巨大メカも逆転王に倒される始末。当然成績は万年最下位なのですが、そんな三悪を尻目にシャレコーベリース社のエリート支社長として登場し、イッパツマンを苦しめていたのが、隠球四郎(かくれ たましろう)でした。

 問題の30話では、まず三悪が逆転王に対して瞬間硬化弾を使用し、動きを封じます。このとき、密かに待機していた球四郎がダイヤモンド弾丸で逆転王の眉間を撃ち抜き、メインコントロールを破壊したのです。やむを得ず逆転王を降りたイッパツマンに対しても球四郎は狙撃を敢行し、銃弾を受けたイッパツマンは爆散してしまうのです。

 当時、このシーンを見た筆者は、しばらく呆然としていたことを覚えています。正義が、イッパツマンがやられるなんてありえない、と。もし現代のようにインターネットが存在していたら、間違いなくさまざまなSNSが大荒れになっていたでしょう。

 このとき三悪は、自分たちが逆転王とイッパツマンを倒したと勘違いして「次回からは自分たちが主人公だ!」と大喜びしており、球四郎の行動には気づいていなかったのです。

 このとき倒されたイッパツマンは、実は豪がコントロールしていたサイキックロボットであり、該当シーンをよく見ると傷口がバチバチとスパークしているなど、実は人間ではないことが巧みに描写されています。そもそも人間は銃弾を受けても爆散しないのです。

 とはいえ、家庭用ビデオデッキもまだあまり普及していない時代だったので見返して確認することもできず、次回までやきもきした子供たちも多かったのではないでしょうか。

 結局、翌週以降は豪が自らイッパツマンに変身するようになり、ロボットもよりパワーアップした三冠王が登場します。アニメ定番のパワーアップ回をこれほど劇的な展開としたことに脱帽する思いです。

『イッパツマン』は最終的に放送が延長され、全58話で終了しました。新たな取り組みが相乗効果を発揮し、人気作となった好例といえるでしょう。

 しかしながら『タイムボカンシリーズ』は本作を持って関東圏での夕方18時半の放送を終了し、次作『イタダキマン』は19時半からの放送となりました。また、シリーズを通じ脚本を執筆した小山高男氏と音楽を担当した山本正之氏も外れることとなり、『タイムボカンシリーズ』は一旦の終焉に向かいます。『イッパツマン』は子供たちを楽しませようと力を注いでくれた方々が生み出した、最後の結晶のような存在だったのかもしれません。

(早川清一朗)

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