20周年迎えた『忍風戦隊ハリケンジャー』 根強い人気を支える「絆」の力とは?
マグミクス / 2022年2月17日 7時10分
■人も知らず 世も知らず 影となりて悪を討つ!
本日2月17日は、20年前の2002年に『忍風戦隊ハリケンジャー』が放送を開始した日です。スーパー戦隊シリーズ第26作にあたる作品でした。
忍者モチーフは第18作『忍者戦隊カクレンジャー』以来となりますが、本作では空、水、陸といった要素や、流派というカテゴリで、ひとりひとりの役割をより明確にしています。また、当初は3人戦隊という点も、第12作『超獣戦隊ライブマン』以来、14年ぶりでした。
メインである忍風戦隊ハリケンジャーは赤、青、黄色という、3人戦隊では定番のカラーリングになっています。これに追加戦士ならぬ追加戦隊として登場した「電光石火ゴウライジャー」は、ハリケンジャーで使用している赤と青をあえて使っていました。これは違うチームということを強調させるためですが、色の濃さは変えています。
ゴウライジャーは、登場当初は敵の幹部である「暗黒七本槍」のメンバーであるというミスリードのため、悪の幹部扱いでオープニング映像に登場していました。こういった作劇は、前作『百獣戦隊ガオレンジャー』で悪役ながら人気があり、搭乗する巨大ロボのオモチャのセールスが好調だった狼鬼の影響もあったようです。
さらに6人目の追加戦士枠として登場したのが「天空忍者シュリケンジャー」でした。このシュリケンジャーは特異な存在で、素顔が最後まで明かされず、毎回、違った役者が変身前を演じています。この変身前を演じる役者が、かつてスーパー戦隊シリーズでヒーロー役を担当していた人たちで、視聴者の興味の的となりました。
このように本作では、それまでのシリーズになかった3つの流派(戦隊)が共闘するという点で他の戦隊と一線を画しています。実際に最終回の冒頭は、生き延びたハリケンジャーの3人だけで最終決戦に挑むという展開でした。
本編でも流派ごとの呼び名で敵から呼ばれるなどしていましたが、これ以降のシリーズで再登場する際などは、6人まとめてハリケンジャーとされることが多くなっています。
余談になりますが、本作がシリーズではじめて「〇〇ジャー」と名付けられた戦隊でした。それまでは「○○レンジャー」と呼称されていたのが、本作から「○○ジャー」というやや省略された形でネーミングに幅を広げることになります。
また、放送途中からオープニング前にアバンタイトルとして本編が始まったり、番組終了時の提供バックに次回エピソードの映像を流したり、最終回で冒頭のオープニングを省略して終盤でオープニング曲を流すスタイルを取ったりと、ドラマ面のフォーマットで革新があったことも、後のシリーズ作に影響を与えています。
■放送から10年後に思わぬサプライズが…
TVシリーズ『ハリケンジャー』の10年後を描いた映画『忍風戦隊ハリケンジャー 10 YEARS AFTER』Blu-ray(東映)
魅力的な作品には魅力的な敵が必要です。本作の敵である宇宙忍群ジャカンジャは、その名の通り宇宙忍者という設定で、幹部である暗黒七本槍は忍者ものにありがちな「〇人衆」から着想を得たそうで、最終回まで全員が並ぶことがありませんでした。
この個性的な7人の中心になったのが、一の槍フラビージョと四の槍ウェンディーヌの女性陣でしょうか。本作での活躍はもちろん、その後のシリーズにも何度か登場する人気キャラとなっています。他にも最後に登場した七の槍サンダールは、声を担当したのが声優の池田秀一さんだったことから、たびたびシャア・アズナブルのようなセリフを使っていて話題になりました。
このほか、味方側のサポートキャラである無限斎が変身して元の姿に戻れなくなった通称「ハムスター館長」など、当時のハムスターブームになぞったキャラも登場しています。
また、タイトルの「ハリケン」を風の「ハリケーン」でなく、前年公開されたヒット作『ハリー・ポッターと賢者の石』を略したとする人もいました。戦隊はその時代を映す鏡と言う人もいますが、こういった当時の流行がわかるのも、過去の作品を見る時の醍醐味のひとつかもしれません。
放送当時の本作の人気を「売り上げ」という単純な数字で計ると、前年の『百獣戦隊ガオレンジャー』が約118億円、本作が約136億円、翌年の『爆竜戦隊アバレンジャー』が約130億円だそうで、前後5年ではもっとも良い成績でした。
放送終了後、後続シリーズでのゲスト出演でも本作の人気がわかります。シリーズメモリアルで第35作『海賊戦隊ゴーカイジャー』でのゲスト出演ではハリケンジャーの3人全員が登場、他の戦隊とは違って変身してゴーカイジャーと共闘しました。
そして10周年を記念して、TVシリーズから10年後を描いた異色作『忍風戦隊ハリケンジャー 10 YEARS AFTER』をリリースしています。それまで放送翌年の『VSシリーズ』や他作品でのゲスト出演は他のシリーズでもありましたが、10年も経過して新作が作られるのは異例中の異例。これには本作の出演者やスタッフが定期的に交流をしていて、「10周年を機に何かをやりたい」という話が出てきたからでした。
企画が成立したのは出演者やスタッフの熱意もあったからでしょうが、「商売として成立する」と、会社を動かすだけの熱量を持ったファンの人気も大きかったと思います。そして、この10周年企画が一定の成功を収めたことで、その後もスーパー戦隊の10周年記念作品が生み出されるきっかけになりました。
また、この「10 YEARS」で霞一甲/カブトライジャーが「JUN烈」というグループで活動していますが、これは演じていた白川裕二郎さんが所属する純烈のパロディです。本作終了後でもっともブレイクした人かもしれません。筆者は作中をならって、いまだにTVで見るたび「兄者」とお呼びしています。
忍者は戦隊のモチーフとして人気ですから、また使われることもあるでしょうが、第39作『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の時のように、ハリケンジャーのみなさんにゲスト出演してもらいたいと思います。
(加々美利治)
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