もっと評価されるべき?「スーパー戦隊の怪人」 デザインは秀逸なのに商品化は少なく…
マグミクス / 2022年2月20日 11時50分
■天才的デザインだけど「一期一会」
最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が大いに注目を集めている戦隊シリーズ。その歴史を紐解けば、シリーズ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』から基本的には毎年、そして毎週、新作の怪人が登場しています。ネットでは、この事実に対し「もしかして、これって凄まじいことなのではないか」という疑問が投げかけられることがしばしばありました。筆者も「やばい」と感じる次第です。
戦隊シリーズにおける怪人は、『仮面ライダー』のように等身大怪人としての戦いを全うしたうえで、さらに『ウルトラマン』の怪獣のように巨大化もするという、とんでもない稼働を見せ続けています。それだけ活躍しているのに、あまり顧みられることもなく、次の怪人が現れるという凄まじい入れ替わりようです。
戦隊シリーズがそのような怪人の代謝をいかに維持してきたのかに関しては別稿に譲るとし、この記事では改めて戦隊怪人のデザインの魅力、そして商品展開の歴史も振り返ります。
まず、『秘密戦隊ゴレンジャー』の仮面怪人たちは、モチーフも動物から日用品とさまざまでした。野球仮面やアバラ仮面などが有名でしょうか。とはいえ、彼らは怪人たちのなかでは幸せな方で、今もたびたびバラエティ番組のネタとして扱われ、また「商品化」の点においても近年、受注生産ながら再びソフビ人形の制作が行われています。
では、2作目以降はどうでしょうか。『ジャッカー電撃隊』の機械怪物たちはというと、「デビルスパイダー」などカッコいい怪人たちが並び、3作目『バトルフィーバーJ』でも初期は作り込まれた古代文明モチーフの怪人たちが出てきました。
そして衝撃的なのが、4作目『電子戦隊デンジマン』に登場するベーダー怪物……これが衝撃的な造形なのです。左右非対称で、ただれたような皮膚感も合わせ、異形の最高峰。ちなみに、『バトルフィーバーJ』以降の初期怪人デザインを担当されたのは、野口竜さんという巨匠です。以降、昭和から平成にいたるまで、彼のユーモラスさとグロテスクさを兼ね備えたデザインが大きな礎となります。
野口竜さんは平成に入っても、『鳥人戦隊ジェットマン』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』など、後世に語り継がれる名作のデザインを担当しています。どれも印象的な怪人ばかりでしたが、こちらもやはり商品化の機会にはなかなか恵まれていません。ただ、のちになって『ジュウレンジャー』のドーラキルケなどが英語版ローカライズの『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』に名を変えて登場し、それが商品化されるケースはありました。
■クリスマスに「シャケ旋風」を巻き起こした怪人も
クリスマス回に登場した怪人が話題を呼んだ『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』ソングコレクション (C)東映
一方、いわゆる「敵幹部」の人形化はたびたび行われています。9作目『電撃戦隊チェンジマン』のゴズマ幹部、10作目『超新星フラッシュマン』の改造実験帝国メス幹部などは、中古玩具店でも見かけます。
また、小さい人形ならどうでしょうか。少し時代は遡りますが、例えば雪印「フラッシュマンソーセージ」のおまけには、なんと獣戦士ザ・ズルルクなど幹部ではない怪人もラインナップされていました。また消しゴム人形シリーズなどミニモデルでは、一般怪人にも光が当たることがあったようです。それでも、幹部のように彩色人形として商品化されることはほとんどなかったと言っていいでしょう。
さて、戦隊シリーズでは野口さん担当以降も篠原保さん、マイケル原腸さん、大畑晃一さんと、名だたる鬼才らが手がけた傑作怪人が生まれていきます。日用品モチーフながらも、悪夢的デザインが魅力のゴーマ怪人が登場した『五星戦隊ダイレンジャー』、アメコミ風にアレンジされたカッパやろくろ首など、「妖怪」の新解釈を提示した『忍者戦隊カクレンジャー』……。どれも怪人のデザイン画も含め息をのむかっこよさなのですが、やはり主力商品となるのは依然としてメカニック玩具でした。
また近年ですと、2018年の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』に登場し、「クリスマスにはシャケを食え」と主張した怪人サモーン・シャケキスタンチンが大いに話題を集めました。シャケの外骨格にイクラと切り身を組み合わせた秀逸デザインでしたが、公式での立体化はまだ実現しておりません。
なお、ここまで述べてきたような怪人たちの魅力や制作背景をまとめた図録『東映スーパー戦隊シリーズ35作品記念公式図録 百化繚乱 [上之巻] 戦隊怪人デザイン大鑑』が2011年に刊行されています。上記の鬼才たちによるデザイン画が堪能できる書籍です。
ここまで、怪人の商品化事情を簡単に見てまいりましたが、見方を変えれば、商品化を想定していなかったからこそ、ここまで攻めたデザインが可能だったのかもしれません。さあ、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』では、どんな怪人と出会えるのでしょうか。このワクワクが半世紀近く続いている奇跡に、心からの感謝を申し上げる次第です。
(片野)
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