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30周年の『テッカマンブレード』 「鬱アニメ」と言われながらも高評価だったワケ

マグミクス / 2022年2月18日 6時10分

30周年の『テッカマンブレード』 「鬱アニメ」と言われながらも高評価だったワケ

■タツノコヒーローが背負った宿命とは?

 本日2月18日は、30年前の1992年にTVアニメ『宇宙の騎士テッカマンブレード』が放送開始した日です。タツノコプロ創立30周年記念作品でもあった本作の魅力について振り返ってみましょう。

 本作は1975年にタツノコプロで製作された『宇宙の騎士テッカマン』を原作として製作されました。しかし名称など一部に共通点はありますが、内容的には、まったくの別作品といっても過言ではありません。

 前作の『テッカマン』は、『科学忍者隊ガッチャマン』、『新造人間キャシャーン』、『破裏拳ポリマー』とあわせて、タツノコ4大ヒーローとして認知されているほどの有名作品です。それがリファインされることになったきっかけは、その認知度の高さと商品展開のしやすさからでした。

 実は、このタツノコ4大ヒーローには面白い共通点があります。それは父と子の物語という点です。

『ガッチャマン』では主人公と幼いころに別れて、最期の時まで名乗らなかった父。『キャシャーン』では父の作ったロボットの暴走を食い止めるため、人間であることを捨てた主人公。『ポリマー』では父のやり方に反発して家を飛び出し、自分のやり方で悪と戦う主人公。……こうした要素がありました。

 前作の『テッカマン』では、主人公の父は第1話で敵宇宙人に殺されましたが、実は打ち切りによって製作されなかっただけで、その後の展開が予定されていたのです。それは中盤から死んだはずの父親が敵に洗脳され、敵側のテッカマンとして主人公と戦う父子対決でした。

 この展開が、本作『ブレード』の核になっています。すなわち、地球を守るために家族や友人、恩師といった親しいものを倒さなくてはいけないというドラマ。主人公Dボウイに起こる悲劇を、前作以上の過酷な展開で進めています。

 当時は、それまでの子供向けアニメとは趣向の違う大人向けのハードな展開が喜ばれる時代で、この作品の他にもさまざまなタイプのリアルな人間ドラマを描いたアニメが制作されていました。しかし、この作品はその中でも飛びぬけてハード。人によって「鬱作品」とまで言われた展開で終始製作されていました。その結果、主人公がたどった苦難の道は他のアニメ作品と比べても突出しています。

 しかし、この作品の最後はバッドエンドではありません。少なくとも筆者はそう思いますし、ファンの中にもそう思う人は多くいると思います。とてもビターなエンド。作中で繰り返された悲劇を主人公であるDボウイが正面から受け切った物語と言えばいいのでしょうか。

 そんな本作の人気は衝撃的だった最終回を迎えてもなお、とどまることを知らず、数年後にOVA作品として展開しています。ただしTV版が過酷だったゆえか、OVAは真逆の明るさをメインとした方向に向かった作品となり、一部のファンからは辛辣な評価を集めています。

■「仮面の下の涙をぬぐえ…」

2020年に発売され、『宇宙の騎士テッカマンブレード』の設定資料や制作関係者インタビューなどを収録した「エンターテインメントアーカイブ 宇宙の騎士テッカマンブレード」 (NEKO MOOK)

 本作は物語開始時、謎の宇宙生命体ラダムの侵攻で始まります。そして、すべての謎を知るであろう主人公のDボウイは記憶喪失ということで、中盤まで敵ラダムに関して謎のまま進んでいきました。

 その物語が動き出したのが中盤、Dボウイの妹であるミユキの登場からです。実はDボウイは記憶など失っておらず、自分への同情、他者を戦いに巻き込みたくないという理由から誰にも真実を話さなかったという理由が語られました。

 それは、Dボウイこと相羽タカヤが家族と一緒に乗った宇宙船でラダムの先兵と遭遇した時のこと。乗組員すべてラダムのシステムに取り込まれ、無理やり肉体をテッカマンにされます。ラダムは寄生生命体で、他の知的生命体をテッカマンにし、その肉体をコントロールすることで繁殖する生物でした。

 しかし、ラダムが肉体的に不適合と判断した生命体は途中で廃棄されて命を失います。廃棄対象となったタカヤの父は、ラダムに支配される前のタカヤを救出。人類を救うため、残った家族や仲間たちを殺すように言うと、宇宙船から脱出させました。

 こうしてDボウイは兄・ケンゴことテッカマンオメガ、双子の弟・シンヤ、他の仲間たちを倒してでも、地球人類を救うという過酷な宿命を背負うことになります。そして、逃げ出してきたミユキもまた廃棄され、残る命はあとわずかだということを知らされました。

 他のアニメ作品でも、身内の命と全人類の命を天秤にかける展開があります。本作はそれをより重く扱った作品でした。そして、Dボウイの決断の裏には、ラダムの支配を受けた人間はその呪縛から逃れられない。家族たちはラダムによってすでに殺されているのも同然……という悲壮な決意がありました。

 物語の終盤に、「ブラスター化」というパワーアップで圧倒的な力を得るDボウイ。しかし、その代償にDボウイは変身するたびに記憶を失うという宿命を背負います。この時、Dボウイは思い出を失うことよりも、ラダムへの怒りと憎しみを忘れることを危惧して自宅を訪れるというエピソードがありました。ここで在りし日の弟シンヤの声を聞くというくだりは、筆者が強烈に心に残っている場面です。

 そして、最終決戦ですべての記憶を失ったDボウイことテッカマンブレードは、それでもラダムへの怒りと憎しみだけで戦い抜き、長い戦いに終止符を打ちました。そして、残されたのは廃人となった凄惨な姿。その姿に「忘却はDボウイにだけ許された救い」と言うセリフで本作は幕を閉じます。

 後期オープニング「永遠の孤独」の歌詞で「血まみれのこの指先止められるのは 何もかもが終わる時だけ狂った運命(ディスティニー)」とありました。すべてが終わり、悲しい過去を思い出すこともないDボウイの姿は、けっして救われないエンディングではないのでしょう。

 そして、この凄惨なドラマを1年間描き切ったスタッフには敬意を表します。こんな凄惨なテーマを夕方の枠で1年間ブレずに製作するには並々ならぬ苦労があったことでしょう。その苦労が、本作を今でも語り継がれるような名作になった要因だと思います。

 この他にも、本作が初主演作になった森川智之さんのマイクを壊すほどの熱演と、子安武人さんの徹底した悪役ぶりも本作の魅力のひとつ。また、大張正己さんの作画と小坂由美子さんの歌によるオープニングが、ファン以外からも傑作として評価されました。作画については今でいう「作画崩壊」と言われそうな部分も見られますが、そこを引いても本作は歴史に名を刻むほどの作品だと思います。

(加々美利治)

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