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『ウルトラセブン』最終話をBSで放映 特撮ドラマ史に残るダンとアンヌの名場面

マグミクス / 2022年2月26日 16時10分

『ウルトラセブン』最終話をBSで放映 特撮ドラマ史に残るダンとアンヌの名場面

■「史上最大の侵略」を2週にわたってオンエア

「アンヌ! 僕は……僕はね……人間じゃないんだ!」

 モロボシ・ダンが衝撃的な告白をすることで知られているのが、『ウルトラセブン』の最終話「史上最大の侵略」です。

 NHK BSプレミアムでは、2022年2月27日(日)と3月6日(日)、2週にわたって朝8時から4Kリマスター版『ウルトラセブン』の最終話「史上最大の侵略」前編・後編を放送します。

 ダンの告白の瞬間、シューマンのピアノ協奏曲が流れる最終話を手掛けたのは、ウルトラシリーズの生みの親のひとりである脚本家の金城哲夫氏、『ウルトラセブン』の人気エピソード「ウルトラ警備隊 西へ」や「ノンマルトの使者」でも金城氏とタッグを組んだ満田かずほ監督です。多くの人の心に刻まれている特撮ドラマの金字塔『ウルトラセブン』の最終話を振り返ります。

■ダンの告白を受け止めたアンヌ隊員

 さまざまなインベーダーたちとの激闘を重ね、ウルトラセブンことモロボシ・ダン(森次晃嗣)は過労状態に陥っていました。コンディションは最悪ですが、責任感の強いダンは「ウルトラ警備隊」の任務を休もうとしません。狙いすましたかのように、ゴース星人の地球侵略が始まります。

 ゴース星人が放った双頭怪獣パンドンに、ウルトラセブンは大苦戦します。エメリウム光線は相手に届かず、必殺技のアイスラッガーまで叩き落とされてしまいます。地面に這いつくばるセブンに、これまでのようなかっこよさはありません。ウルトラホーク3号に乗るアンヌ隊員(ひし美ゆり子)の援護射撃を受け、辛うじてパンドンを倒すセブンでした。

 しかし、ゴース星人は地球侵略を諦めません。アマギ隊員(古谷敏)が人質に取られ、地底ミサイルによる世界の主要都市爆破計画が進められます。さらにゴース星人は改造パンドンも用意します。

 もう一度セブンに変身すれば、命にかかわることになる。M78星雲の上司から忠告を受けたダンですが、アマギ隊員と人類を見捨てるわけにはいきません。ダンの体調を気遣うアンヌ隊員に対し、ダンは冒頭のセリフを口にするのでした。

 ダンがウルトラセブンであることを知り、一瞬驚いたアンヌ隊員ですが、すぐに「人間であろうと、宇宙人であろうと、ダンはダンにかわりないわ」とダンの告白を受け止めるのでした。ダンとアンヌのシルエットが美しい、特撮ドラマ史上に残る名シーンとして語り継がれています。

■ウルトラセブンが疲労困憊していた背後には…

『ウルトラセブン』最終話を収録した、「ウルトラセブン Vol.12」DVD(円谷プロダクション)

 ウルトラセブンは地球での戦いの日々に疲れ、故郷であるM78星雲に帰ることになります。セブンのこの状況は、「円谷プロ」企画文芸室の主任だった金城哲夫氏の当時の精神状態と重なるものがあります。

 TBS系で『ウルトラQ』『ウルトラマン』、そして1967年10月に放送が始まった『ウルトラセブン』を連続して大ヒットさせてきた金城氏でしたが、『ウルトラセブン』のシリーズ後半となる1968年4月から、大人向けの特撮ドラマ『マイティジャック』をフジテレビ系でスタートさせていました。

「円谷プロ」の社運を賭けた1時間ドラマ『マイティジャック』だったのですが、視聴率は一桁台に低迷します。変身ヒーローの登場しない特撮ドラマは、視聴者の心をつかむことができませんでした。ウルトラセブンがインベーダーたちとの戦いに身も心も消耗したように、金城氏も視聴率戦争に神経をすり減らしていきます。

 人間社会の闇を描いた『怪奇大作戦』(TBS系)の制作を終えた金城氏は「円谷プロ」を去り、故郷・沖縄へと帰ることになります。1975年に開催された「沖縄国際海洋博覧会」の開会式・閉会式の演出などを金城氏は担当しますが、海洋博の開催に懐疑的な地元漁師たちの反対の声にずいぶん悩んだそうです。

 次第に金城氏は深酒するようになり、1976年2月22日に不慮の事故でなくなります。37歳という若さでした。

■青春のはかなさを感じさせるピアノ演奏

 ダンがアンヌに告白するシーンに流れるシューマンのピアノ協奏曲イ短調ですが、これはルーマニア出身の名ピアニストであるディヌ・リパッティの演奏によるものです。天才ピアニストとして知られるリパッティですが、彼もまた33歳という若さでその短い生涯を終えています。

 リパッティの演奏には、青春の美しさ、激しさ、はかなさ、切実さが感じられます。劇中のダンとアンヌ、そして特撮ドラマのなかに夢や情熱を注ぎ込んだ金城氏ら当時のスタッフの想いとシンクロするかのように、ピアノ演奏がきらびやかに流れます。

「モロボシダンの名をかりて」という歌詞の一節が、『ウルトラセブン』の主題歌にはあります。ダンはウルトラセブンの仮の姿であり、また金城哲夫氏の理想の姿でもあったのではないでしょうか。ダンは地球人と宇宙人との板挟みになりながらも、懸命に闘い続けました。人類愛のみならず、この宇宙に生きとし生けるものへの慈しみが、『ウルトラセブン』の最終話からは感じることができます。

(長野辰次)

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