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『機動戦士Zガンダム』は当時の子供には難しかった? 真価が分かったきっかけは…

マグミクス / 2022年3月2日 6時10分

『機動戦士Zガンダム』は当時の子供には難しかった? 真価が分かったきっかけは…

■突然現れた「ガンダムの続編」

 37年前の今日、1985年3月2日は、『機動戦士Zガンダム』が放送を開始した日です。

「ガンダムの続編」が始まることを教えてくれたのは、たぶん前番組の『重戦機エルガイム』が終わった後に、番宣を見た友達だったと思います。もう37年も前の話ですが、最初に話を聞いた時は、驚きと困惑が入り混じった気持ちになったことをよく覚えています。なぜならば、そのころの筆者にとってガンダムは「最終回を迎えた」作品だったからです。

 今ではロボットアニメに続編はつきものですが、当時のロボットアニメは放送終了から数年をあけてからシリーズの新作が作られた例がなく、続くとすれば『ゲッターロボ』から『ゲッターロボG』へ移行したように、最初のシリーズが終わったらすぐに次のシリーズが始まるパターンしかありませんでした。

 このとき筆者は、土曜日の夕方は習い事をしており、残念ながら新しいガンダムを見ることはできませんでした。1985年の時点で家庭用ビデオデッキはそれなりに普及し始めてはいましたが、まだ筆者の自宅にはなかったので録画もできず、仕方なしに友だちから話を聞くことしかできなかったのです。

 そして新しいガンダム、すなわち『機動戦士Zガンダム』の放送が開始された翌週の月曜日、さっそく友達に感想を聞いて回ったのですが、反応は芳しいものではありませんでした。

「ガンダムはいた」
「アムロはいなかった」
「なんか話が分からなかった」

 当時の子供たちにとって、ガンダムは「アムロが乗るもの」でした。アムロはいないのにガンダムが出るのは、今となっては笑い話でしかありませんが、矛盾の極みにも思えたのです。

 しかも、1985年という時代は「ガンダム」にとって向かい風が吹いていました。1983年に発売された「ファミリーコンピュータ」に子供たちは夢中になっており、今までプラモデルに消えていたお小遣いは、貯めて新しいカセットを買うために使われていたのです。

 さらに、TVではビートたけしの「俺たちひょうきん族」が大ブームとなっていた時期でもあり、子供たちはこぞって真似をしていました。このような状況のなか、『Zガンダム』は一定の評価は得たもの爆発的なブームとはならずに終了し、放送枠は次作『機動戦士ガンダムZZ』へと移行しました。

 筆者が『Zガンダム』の真価を知ったのはそれから約3年後、1988年ごろに行われたテレビ東京の早朝枠での再放送がきっかけでした。

 そう、このとき筆者の家にはビデオデッキがあったのです。

■繰り返し見ることで内容を把握できた

大人気作となった『Zガンダム』は、2005年から新たなカットや解釈を加えた『劇場版・新訳『機動戦士Ζガンダム』三部作』が順次公開された。画像は同作の第2部「恋人たち」Blu-ray(バンダイビジュアル)

 家庭用のビデオデッキは1980年代前半にはすでに販売されていましたが、急速に普及したのは1980年代半ばから後半にかけての時期となります。1985年にはまだビデオデッキがなかった家にも、1988年にはあった……そういう記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

『機動戦士Zガンダム』はティターンズ、エゥーゴ、アクシズの3勢力が入り乱れているだけでなく、パプティマス・シロッコ率いるジュピトリスのように、立ち位置が分かりづらい勢力も存在していました。そもそもティターンズとエゥーゴ自体も地球連邦軍の内部組織であり、だれが何のために戦っているのか、子供には見えづらい部分がありました。

 この問題を解決してくれたのがビデオデッキでした。本放送で一度見ただけでは理解できない部分も繰り返し見ることで、内容を把握できるようになったのです。再放送とビデオデッキの普及時期がちょうどマッチしたことが、『Zガンダム』の人気を飛躍的に高めたのではないでしょうか。

 ただ、このときの再放送のオープニングは全編を通して森口博子さんが歌う後期OP「水の星へ愛を込めて」が使用されており、最後の方が少しカットされていました。鮎川麻弥さんの前期OP「Z 刻をこえて」を実際に目にするまでにはさらに数年がかかりましたが、これは仕方のないことでしょう。

 かつて富野由悠季監督はNHKの「トップランナー」に出演した際に、「『Zガンダム』は他のロボット作品の売り上げが芳しくなかったために経営陣が打ち出した、ファンの心を無視した作品であり、嫌だとは思ったけれどもやるしかないと覚悟を決めた」と語っています。

 この時期のファンの声として有名な逸話としては、主人公であるカミーユ・ビダン役の飛田展男さんがオーディションの際に「あんな良い終わり方をしたのになんで続編なんか作る必要があるんですか」と語ったことが挙げられるでしょう。

 作り手もファンも望んでいなかった続編ではありましたが、富野監督は「Z」の文字をタイトルにつけるときに、「これでガンダムは終わらない」と予感したと語っており、事実2022年の現在、「ガンダム」は世界中で評価されるコンテンツとなっており、なかでも『Zガンダム』は極めて高い評価を得た作品となっています。

 ガンダム世界の原点は初代『機動戦士ガンダム』ではありますが、「ガンダムの世界には派生があってもいいのだ」という概念を産み出し、世界そのものを大きく押し広げる原動力となったのは、おそらく『Zガンダム』なのでしょう。そうした意味で、『Zガンダム』は「第二の原点」と言えるのかもしれません。

(早川清一朗)

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