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30周年『セーラームーン』TVアニメがヒットした理由 『エヴァ』にも影響を与える

マグミクス / 2022年3月7日 6時10分

30周年『セーラームーン』TVアニメがヒットした理由 『エヴァ』にも影響を与える

■月の光に導かれた新ジャンルの先駆者

 30年前の1992年3月7日は、TVアニメ『美少女戦士セーラームーン』が放送開始された日です。その大ヒットは国内だけにとどまらず、海外にも及び、日本TVアニメの代表作と言えるほどの知名度となりました。

 本作は「セーラー服の美少女が戦うアクションもの」というコンセプトで、武内直子先生が描いた読み切りマンガ『コードネームはセーラーV』が原点です。この作品のアニメ化を企画した東映動画(当時)との話し合いの結果、『セーラーV』をアニメ用に練り直して誕生したのが本作『セーラームーン』でした。

 このため、マンガとアニメが同時進行するということになります。そこでアニメではマンガを原作としながらも、独自の展開で物語を進めるという方向になりました。それゆえマンガは前世からの宿命と恋愛という少女マンガに沿った展開が中心となりますが、アニメではギャグも織り込んだ、笑いありバトルあり感動ありといったエンターテイメントに徹した物語が中心になっていきます。

 この比較的、原作の流れをなぞりながらもアニメ独自の面白さを追求する方針は、結果的により多くのファン層の獲得に成功しました。しかし、本作は最初から大ヒットしたというわけではありません。ファンの熱は、1年の放送のなかで徐々に高まっていったのです。

 その理由のひとつが、知名度のなかったことです。女の子による集団ヒーローものは本作が初めての試みだったので、一般の視聴者には内容が分からず絵を見ただけで敬遠するということもありました。そういう点では、まず本作はアニメファンから人気に火が付いた作品だったと思います。

 また、当時の裏番組も強力で、TBS系列は長寿アニメ番組の『まんが日本昔ばなし』、フジ系列は『たけし・逸見の平成教育委員会』という人気番組で、この牙城を崩すのは容易ではありませんでした。

 そのため、おもちゃの人気も当初はいまひとつだったそうです。ところが、この年の女の子系おもちゃで大ヒット商品となる「ムーン・スティック」が登場する辺りから急激な人気上昇をしました。このムーン・スティックは約42万個というかつてないほどの売り上げを記録し、女の子向けのアニメおもちゃは一定以上の売り上げを見込めないという玩具業界の常識を打ち破った商品と言われています。

 この売り上げの高さから、本作は1年の終了予定で後番組が決まっていたにもかかわらず、異例の放送延長となりました。しかし、あまりにも急だったことからスタッフの確保が間に合わず、次回作『美少女戦士セーラームーンR』の最初の1クールはアニメオリジナルとなったそうです。

■新ジャンルゆえの苦労を乗り越えて…

『劇場版 美少女戦士セーラームーンR』DVD(東映ビデオ)

 前述したように、本作は女の子がチームを組んで戦うという、まったく新しいフォーマットが結果的に大きなヒットとなった要因でした。系列的には魔法少女ものに属する作品ですが、それまでのジャンルでは魔法少女はひとりというのが原則です。この魔法少女要素に男児向けであるスーパー戦隊のチーム要素をミックスしたことが、対象の女児層だけでなく、全世代に受け入れられた理由なのかもしれません。

 それゆえ、本作のヒット後は各社で同じようなバトルヒロインものが制作され、アニメの1ジャンルとして確立されました。

 そして、影響を与えた作品は女の子向け作品だけではありません。オマージュやパロディとしても他のアニメ作品に多大な影響を与えたほか、意外なジャンルの作品にも影響を与えています。それが、あの大ヒット作『新世紀エヴァンゲリオン』でした。

 主人公の碇シンジ役を演じた緒方恵美さんは、『劇場版 美少女戦士セーラームーンR』で子供の頃の地場衛の演技を見た庵野秀明監督が決めたそうです。また、葛城ミサトの前髪は月野うさぎから拝借したと言われていました。

 そしてヒットの要因で忘れてはいけないのが、主人公のうさぎ/セーラームーンを演じた声優・三石琴乃さんの存在です。本作が初主演作品となった三石さんですが、新人とは思えない力量で硬軟さまざまな表情を見せるうさぎ役を熱演しました。その実力は、あのレジェンド声優の神谷明さんが共演した際に、「自分もあの歳にあれだけの演技ができれば……」と言わせるほどのものだったそうです。

 本作のヒットもあり、一気に声優界のスターダムに上っていった三石さんでしたが、最終回間際に大病をわずらい長期入院で、うさぎ役を降板するというハプニングに見舞われました。後に事務所社長が「仕事を取らせすぎた」と後悔したそうで、一時期は命にもかかわるほどの状態だったそうです。

 この三石さんの代役としてうさぎ役を演じたのが荒木香恵さん(現在は荒木香衣名義)。三石さん復帰後は、ちびうさ役を演じることになりました。しかし、この交代劇で第1期の最終回に参加できなかったことは三石さんには痛恨の出来事だったそうです。リベンジとしてカセット文庫でこの最終回を改めて演じたほか、2020年に放送された『発表!全美少女戦士セーラームーンアニメ大投票』では、この最終回のシーンをあらためて生アフレコしました。

 この最終回間際でひとつの出来事が話題になります。最終回一本前にセーラームーンを進ませるため、他のセーラー戦士が次々と倒れるという展開にショックを受けた子供が続出し、新聞の投稿欄に掲載されたことがありました。

 これはチームバトルものではお約束の展開で、製作側の東映動画でも『聖闘士星矢』などで何度となく行われた演出だったことから寝耳に水だったそうです。これは、それまでバトルものに興味のなかった女児層がいかに本作を熱心に見ていたかの証明でした。

 このことが直接影響したかはわかりませんが、第2期の『R』以降はマンガで無残な最期を遂げた敵役の一部が、説得されて改心するというパターンも見られるようになります。こういった視聴者の声に耳を貸したアップデートが本作を人気作として支えてきたのかもしれません。

 そして、本作の影響はさまざまな分野におよび、何度かのリバイバルブームを生んだ名作として、日本国内のみならず世界にコンテンツとしての『セーラームーン』を定着させました。

(加々美利治)

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