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宮崎駿ファンなら気になる航空映画『ブルーサーマル』と『シャドウ・イン・クラウド』

マグミクス / 2022年3月4日 18時10分

宮崎駿ファンなら気になる航空映画『ブルーサーマル』と『シャドウ・イン・クラウド』

■つかまえたら幸せになれる上昇気流

 大空を鳥のように自由に飛んでみたい。誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。そんな夢を叶えてくれるのが、劇場アニメ『ブルーサーマル』です。2022年3月4日(金)より全国公開されます。

 小沢かなさんの人気コミックを原作に、大学の体育会系航空部に入部した女子大生・たまきがグライダーに乗って、さっそうと空を舞う様子がスクリーンいっぱいに描かれています。2008年にTV放映された『東京マグニュード8.0』(フジテレビ系)が高く評価された橘正紀監督の最新作です。

 タイトルになっている「ブルーサーマル」とは、青空のもとで発生する上昇気流のこと。ブルーサーマルをつかまえたら幸せになれると、航空部の先輩からたまきは教わります。目には見えないブルーサーマルに乗って、たまきはぐんぐんと空を舞い上がっていくことになります。

■観客の高揚感を心地よく刺激する飛行シーン

 空を舞うヒロインといえば、宮崎駿監督の人気アニメ『風の谷のナウシカ』(1984年)や『魔女の宅急便』(1989年)などをすぐに思い出しますが、『ブルーサーマル』も、ヒロインのたまきが初めてグライダーに搭乗し、空へと浮遊するシーンは臨場感たっぷりです。観客の高揚感を心地よく刺激してくれます。

 恋と友達を求めて、大学で気軽なサークルを探していた都留たまき(CV:堀田真由)は、ひょんなことから体育会系航空部の体験搭乗会に参加し、グライダーから見た空の世界に魅了されます。航空部に入部しての初合宿、新人戦、そして全国大会まで、上映時間104分のなかにテンポよく収められています。

 制作はテレコム・アニメーション。宮崎駿監督の劇場監督デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)を手掛けたことで有名な、老舗のアニメーションスタジオです。美術背景のクオリティの高さでも知られるテレコムならではの、グライダーからの雄大な眺めはスクリーンで味わいたい作品です。

 燃料なしで飛行するグライダーのエコな魅力に加え、たまきが合宿や大会を経て、航空部主将の倉持(CV:島﨑信長)や他校のライバルたちと触れ合い、人間的に成長していく姿も印象に残ります。原作コミックとは異なるラストにも注目です。

■『未来少年コナン』を彷彿させるスカイアクション

ヒロインが空中で魔物と対峙する緊迫シーンが展開する『シャドウ・イン・クラウド』 (c)Atarangi Kiriata Limited 2020

 新作『君たちはどう生きるか』の完成が待ち遠しい宮崎駿監督ですが、宮崎アニメで育ったファンとして気になる劇場公開作がもう1本あります。2022年4月1日(金)より公開される、クロエ・グレース・モレッツ主演の実写サスペンス映画『シャドウ・イン・クラウド』です。『キック・アス』(2010年)のヒットガール役で大ブレイクしたクロエ・グレース・モレッツが、空を飛ぶ大型爆撃機を舞台に手に汗を握るスカイアクションに挑戦しています。

 第二次世界大戦時、空軍大佐のモード(クロエ・グレース・モレッツ)はある密命を帯びて、B-17に搭乗します。ニュージーランドからサモアへとB-17は向かいますが、途中で日本軍の零戦と遭遇し、さらには飛行機を墜落させると恐れられている空の魔物・グレムリンとも戦うはめになります。

 B-17の下部にある銃座に押し込められた状態だったモード大佐は、狭い銃座を抜け出して機体を伝い、別の搭乗口から機内に入ろうとします。高度は2500メートル。緊張感たっぷりなこのシーン、宮崎駿監督の監督デビュー作『未来少年コナン』(NHK総合)のギガントでの攻防を彷彿させるものとなっています。

■クロエ・グレース・モレッツvs.伝説のモンスター

 ニュージーランド生まれの女性監督、ロザンヌ・リャン監督が『シャドウ・イン・クラウド』を撮っています。リャン監督は『未来少年コナン』を参考にしたとは明言していませんが、クロエ・グレース・モレッツがコナンばりのタフネスさを発揮する、スリリングな場面の連続となっています。こちらも上映時間83分と、タイトな仕上がりとなっています。

 グレムリンと聞くと、ジョー・ダンテ監督のホラーコメディ映画『グレムリン』(1984年)を思い浮かべがちですが、今回は第二次世界大戦中に英軍のパイロットたちの間で噂された都市伝説をモチーフにしたもの。映画『グレムリン』に登場したかわいいギズモとは異なる、不気味なモンスターがクロエちゃんに襲いかかります。

 大空を飛ぶことのワクワク感、そしてちょっとでも気を抜くと死に直結する緊迫感とがうまくバランスを取り合うことで、『ブルーサーマル』も『シャドウ・イン・クラウド』も物語は前へ前へと進んでいきます。ファンタジックな宮崎駿作品とはひと味違った空の世界を、ぜひスクリーンで体感してみてください。

●『ブルーサーマル』
原作/小沢かな 監督・脚本/橘正紀 脚本/高橋ナツコ
CV/堀田真由、島﨑信長、榎本淳弥、白石晴香、大地葉、村瀬歩、古川慎、高橋李依、八代拓、河西健吾、小松未可子、小野大輔、寺田農
配給/東映 3月4日(金)よりロードショー
(c)2022「ブルーサーマル」製作委員会

●『シャドウ・イン・クラウド』
監督・脚本/ロザンヌ・リャン 脚本/マックス・ランディス
出演/クロエ・グレース・モレッツ、ニック・ロビンソン、ビューラ・コアレ、テイラー・ジョン・スミス
配給/カルチュア・パブリッシャーズ 4月1日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
(c)Atarangi Kiriata Limited 2020

(長野辰次)

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