名曲「誰がために」生んだ『サイボーグ009』第2作 制作陣は多くの難題に挑んで…
マグミクス / 2022年3月6日 13時10分
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■忘れられない主題歌「吹きすさぶ風が よく似合う…」
43年前の今日、1979年3月6日は、TVアニメ『サイボーグ009(第2作)』が放送開始した日です。故・石ノ森章太郎先生の代表作である原作を、東映の『がんばれロボコン』や『スーパー戦隊シリーズ』で知られる名プロデューサー、鈴木武幸氏が手掛けた本作は、1970年代後半のアニメブームのなかで大きなインパクトを残す作品となりました。
筆者が『サイボーグ009』のことを思い出すとき、決まって連想するのが、オープニングテーマ「誰がために」の勇壮なメロディーです。作曲者は歌手として歌謡曲「星は何でも知っている」「ミヨちゃん」でヒットを飛ばした故・平尾昌晃(ひらおまさあき)氏。また、『009』は当初から交響組曲を作る話があったため、さまざまな楽器編成で演奏するための編曲を故・すぎやまこういち氏が担当しています。
そして作詞は故・石ノ森章太郎先生(当時は「石森」表記)。死の商人、黒い幽霊団(ブラック・ゴースト)によって兵器に改造された9人のサイボーグ戦士たちの使命感と「ひとでありながら人でないもの」となってしまった悲壮感を表現した言葉の数々は、今なお薄れることなく脳に刻み込まれています。すでに本放送から40年以上が経過しており、この曲に関わられた方々も故人となってしまったことが、ただただ残念です。
なお、「誰がために」は2番までが歌われているのですが、実は3番目の歌詞が存在しています。正確にいうと、採用されたのは1番と3番であり、間に入るはずだった2番が没になっています。1980年に発売されたとある雑誌に手書きのメモが掲載され、世に知られることになったのですが、長い間、存在を知る人は少ない状況でした。2009年にあるイベントで展示されて以降は知る人も多くなり、今では簡単に調べることができるようになっています。
■石ノ森先生の要望に応え、原作に近づけたアニメに
9人のサイボーグのなかで紅一点のフランソワーズが描かれる、「サイボーグ009 1979 コンパクトBlu-ray VOL.2」(東映)
本作の監督を務めたのは、後に『装甲騎兵ボトムズ』などを手掛け、アニメの世界に新たな風を吹き込んだ高橋良輔氏。制作は日本サンライズが手掛けることになったのですが、ちょうど『機動戦士ガンダム』が同時に進行しており、部屋がなかったのでアパートを借りてスタッフルームにした……というエピソードが残されています。
メインキャラクターデザインは故・芦田豊雄氏が担当し、石ノ森氏の描いたサイボーグ戦士たちをアニメ向けにブラッシュアップすることに成功しています。また、009のアップが印象的なオープニングアニメーションは、後に個性的な演出で名をはせる金田伊功氏が原画を担当しており、才能を思う存分に発揮した形となっています。
しかし、本作をアニメ化するには、大きな問題点が存在していました。それは、原作が当時としてはかなりの大作で、どのエピソードをアニメにするのか選ぶ必要があったのです。また、1968年に放送された第一作は007が子供になるなど、原作の改変が行われており、石ノ森先生は不満を感じていたそうです。そのため、本作では石ノ森先生から「キャラクターを変えないでほしい」と要望があり、鈴木プロデューサーは可能な限り原作に近づけたアニメを作るために奔走することとなりました。
最終的には北欧神話に着想を得たエッダ編をベースとし、「宇宙樹」編としてスタートを切ったのですが、当時の北欧神話は、現代とは違って人びとになじみのある設定ではなく、資料の入手にも事欠いたため、9話で一旦区切りをつけて仕切り直しとなりました。
その後は、サイボーグたちそれぞれのエピソードを描いた「戦士の休息」編でキャラクターのクローズアップを行い、さらにネオ・ブラック・ゴーストとの戦いを描いた「ネオ・ブラック・ゴースト」編へと突入するなど、さまざまな展開を見せて1年間の放送を見事に走り切っています。
声優も豪華なメンバーが揃っているのですが、なかでも特筆すべきは井上和彦氏が主役である島村ジョーを演じたことでしょう。井上氏は当時『キャンディ・キャンディ』のアンソニー・ブラウンでブレイクしていましたが、主役となると『超合体魔術ロボ ギンガイザー』のみの状況でした。
しかし『009』以降は『とんでも戦士ムテキング』『太陽の牙ダグラム』『百獣王ゴライオン』『蒼き流星SPTレイズナー』など、次々と少年向け作品で主役を演じるようになっていきます。『009』のような注目度の高い作品で実力ある先輩たちに囲まれながら1年間のアフレコを乗り切ったことが、井上氏にとって大きな力となったのかもしれません。
※参考文献:『夢を追い続ける男』(著:鈴木武幸 講談社)
(本文を一部修正しました。 (2022.3.6 14:58)
(早川清一朗)
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