40周年『ミンキーモモ』 打ち切りから延長へ…誤解されがちな裏事情とは?
マグミクス / 2022年3月18日 6時10分
![40周年『ミンキーモモ』 打ち切りから延長へ…誤解されがちな裏事情とは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_82887_0-small.jpg)
■誤解されがちなブームの背景とは?
2022年3月18日、1982年に放送開始されたTVアニメ『魔法のプリンセス ミンキーモモ』が40周年を迎えました。本来のターゲットである女児層以上に、当時のアニメファンから大きな支持を得た本作は、その数奇な運命ゆえに「魔女っ子もの」というジャンルとしては異例のエンディングを迎えることになりました。
本作でまず特筆される点は、それまで圧倒的なシェアを誇っていた東映動画(現在の東映アニメーション)以外で魔法少女アニメ、いわゆる「魔女っ子もの」を初めて製作したことです。この時期の東映動画の少女系アニメは、マンガ原作のアニメ化という方向にシフトしており、「魔女っ子もの」は休眠状態にありました。
これにより本作が一定の成功を収めたことで、第2期魔法少女ブームという流れが起き、後年に『魔法の天使クリィミーマミ』をはじめとする作品が生まれていきます。明確なシリーズではありませんが、その多くは女の子が魔法で成長して大人になるという作風で、女の子の大人への憧れ、将来の夢といったものへの希望を感じさせる作りとなっていました。
この大人への変身シーンをバンクにして、見どころのひとつにしたのも本作が後の作品に影響を与えたことです。長い呪文とダンスを思わせる華麗な動き、当時の新体操ブームに影響されたこのシーンは人気となりました。
本来のターゲットである女児層にも人気の高い作品でしたが、前述したように本来なら対象としていない層にも注目された作品となります。その理由はいくつか考えられます。
まず製作陣に、当時の人気作だった『戦国魔神ゴーショーグン』からのスタッフが多かったこと。総監督は湯山邦彦さん、原案・構成は首藤剛志さんというコンビは、この後にも多くの名作を生み出しますが、最も知られたアニメとして『ポケットモンスター』があります。
さらに、主役のミンキーモモを演じ、主題歌を歌うのは当時の人気声優であった小山茉美さん。こういった『ゴーショーグン』からの流れでアニメ雑誌での扱いも最初から大きく、アニメファンの注目を早い段階から集めていました。
そして当時の世相として、『うる星やつら』のヒットによる美少女アニメブームが始まりつつあったことです。たとえば過去作品の『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリス、『女王陛下のプティアンジェ』のアンジェといった美少女キャラが取り上げられ、この年の「月刊アニメージュ」4月号付録に「ロリコントランプ」という美少女キャラの絵によるトランプも世に出ました。
この「ロリコン」という言葉が広く世に出回り始めたのもこの時期で、同人誌即売会が大きくなってきたことから成人向けパロディの二次創作の同人誌が出回り始めます。これに合わせるように成人用美少女雑誌も創刊され、この数年後には「美少女アニメ」と言われる18禁アダルトアニメも製作されるようになりました。
こういった時期と重なったことにより、本作の評価はそういった時代とは切り離して語ることが難しく、本作を誤解する人も少なくないでしょう。特に当時を知らない世代は、伝聞による誤解をそのまま受け入れることもあります。
しかし本作を見てきた世代には、いかに作品の内容がバラエティ豊かであることを知っていることでしょう。そして、本作がジャンル以上に印象的な作品になったことも覚えていると思います。
■突然の打ち切りから放送延長という、前代未聞の流れ
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本作は玩具会社「ポピー」をメインスポンサーとして1年・52話の予定で始まりました。しかし、スポンサーから年内の42話で打ち切りという指示が出てしまいます。これにスタッフは猛反対し、広告会社の仲介もあって1月いっぱいの全46話で最終回を迎えることとしました。
そのため、本作の目的であったハッピーティアの収集は42話でほとんどがそろい、残りの43話以降は最終回に向けての伏線を散りばめた作りになります。
そして、最終回となる46話で主人公のモモが交通事故により亡くなり、改めて人間として地球のパパとママの娘に生まれ変わるという衝撃の展開となりました。その後、赤ん坊から大人の女性として成長したモモの前に、夢の国「フェナリナーサ」が下りてくるという夢で幕を閉じます。
ところが、この製作中に事態が二転三転しました。スポンサーから別の作品に使用予定だった竜型のハサミを作品に登場させて放送を延期してくれ……と、急きょ言われたのです。この依頼に困惑したスタッフでしたが、モモのコスチュームに若干の改良を加えて、総集編を2本挟んだ後、49話から第2部をスタートさせます。
そして、このハサミのオモチャは「カジラ」という名前で作品に登場することになりました。こうしてモモの再登場という謎をはらみつつも、同じ作風だった第2部も変わらぬ人気で視聴者に受け入れられ、最終回となる63話までトータルで5クールの放送となります。
実は最終回で、この第2部はすべて第1部で赤ん坊に生まれ変わったモモの見ていた夢だということが明かされました。そして、新たに登場したカジラこそ、モモの死を知った人びとの悲しみの涙の化身……という設定で、第2部でモモを苦しめていた悪夢と戦うという展開を見せます。
ちなみに仮に放送が順調に行っていた場合の物語を、後に原案・構成の首藤さんが語ったことがありました。それはモモが悪夢との戦いで傷つき、千年の眠りにつき、その夢の中でフェナリナーサが下りてくるというものです。いずれにしても当時の女児向けアニメとしてはハードな最終回が予定されていました。
実は、本作はモモの仲間を新しくしてさらなる延長も打診されていたそうです。しかし、このスポンサーからのプランはスタッフから拒絶され、この放送枠の残り1クールは再放送となりました。
当時、さまざまな大人の事情や世情といったものに振り回された本作でしたが、作品として現代でも通じるほどの完成度だったと筆者は思っています。もし未見の方で興味があるというのなら、お試しと思って観てみることをおススメしたい。それは、当時の名作として今でも鑑賞に耐えうる作品だと筆者は思っているからです。
(加々美利治)
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