アニメ『シャーマンキング』47話 敵に対し「非情になる覚悟」を固めるには…?
マグミクス / 2022年3月19日 12時10分
■侮れない能力を持っていた、木刀の竜
2022年3月17日放送のTVアニメ『シャーマンキング』第47話。放映も残すところあと4回(全52話)となり、原作でいえば全35巻中31巻のエピソードに入りました。ここから先は全てがクライマックス! 10のプラントを抜けるための戦いが描かれます。
その前段となったのがパッチ族十祭司のシルバとの戦いでしたが、決着がつかずに終わります。しかしそこでわかったことは、シルバは他のパッチ族によって「何か」をされたということ。それについては後ほど触れるとして、まずは第一の門、砂漠プラントでの戦いを振り返ります。
十祭司・ナマリの挑発に応えた道蓮(タオ・レン)でしたが、砂漠には雷を起こす「素」がなく、攻撃は不発に終わります。ホロホロも湿度が低すぎて氷を作り出すことができません。代わって立ちはだかったのが、木刀の竜でした。竜はナマリに「借りがある」と言っていますが、これは無人島の東海岸での出来事を指しています。
麻倉葉がサティによって地獄送りにされた後、ハオ一派の月組に彼女たちは殺害されます。ナマリは見て見ぬふりをしていました(第42、43話)。サティに大恩がある竜にとって、直接の仇は月組ですが、ハオ一派だったから放置していたくせに「パッチ族は中立」という言葉で正当化した卑怯なナマリの方が、より許せなかったのでしょう。
さてここで初登場した甲縛式オーバーソウル・刺身包丁スサノロウですが、これは竜が操るオーバーソウルの集大成なので、本来なら「刺身包丁トカゲオロチ」のように「蜥蜴郎」と「ヤマタノオロチ号」を合わせた名前でも良さそうです。そうでないのは、形が包丁(剣)であることから、ヤマタノオロチを剣で倒したスサノオノミコトにあやかって、スサノオ+蜥蜴郎というネーミングになったからだと思われます。
それにしても、ただの不良だった木刀の竜が甲縛式を生み出すほどの成長を遂げていたのは驚きです。実は竜の巫力(ふりょく)はなかなかの値を叩き出しているのです。前回の記事で触れたライハイトの巫力は1万(蘇生後は1万200)ですが、竜の巫力は8万程度です(蘇生後は8万5千)。
葉たちは10万を超えているのでそれに比べれば低いのですが、値だけでいえばサティを殺した月組と戦っても十分仇を討てた可能性があるのです! この巫力値は次回48話で明らかになるはずですから、注目していてください!
■決まった覚悟と揺れる覚悟の明確な対比
パッチ族十祭司を倒していく戦いに迷うリゼルグに、十祭司・ブロンが揺さぶりをかけてくる (C) 武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京
竜の活躍でナマリを撃破した一同は、続く「谷のプラント」へ向かいます。覚悟の上とはいえナマリを殺したこと、それをあと9回続けなければならないことに心が揺らぐものの、手を汚した蓮とホロホロが率先して気持ちを切り替えようとします。このシーンはふたりの精神の成長と同時に、まだ割り切れていないリゼルグとの対比が明確に描かれている深い場面です。
リゼルグの魅力のひとつは優しさですが、非情になれないことが大きな欠点でした。ここでもそれが悪く出ています。直前に葉は「済んだことに囚われるな。じゃねえと変化する状況に心が負けるぞ」と竜に語っており、揺るがない覚悟を表明していますが、対してリゼルグはナマリの死を受けて揺らいでいます。
チョコラブが「殺すことに慣れる方がおかしい」とフォローすると、リゼルグはそれに乗って弱音まで吐いてしまいます。そして心を切り替えて扉を破壊しようとする蓮とホロホロの言動に驚くのです。つまりリゼルグは彼らの覚悟を理解しきれていないわけで、それは自分の覚悟が決まっていない証拠です。
十祭司のブロンとのやりとりでは、さらに追い討ちをかけた表現がされています。蓮の死を馬鹿にされ、ホロホロを殺されたリゼルグは「そんな挑発に乗らない」と強く出るのですが、葉には強がりであることを見透かされています。敵に言われるのも悔しいものですが、味方に指摘されるのもまた、ばつが悪いものです。
ただ、もちろんこのリゼルグの弱さを追求する表現は、これからの対ブロン戦に向けたものです。ここまで自分の弱さを実感させられた彼が覚悟を決めたとき何が起きるのか、次回はそれが描かれることになるでしょう!
さて、その場面でのやりとりでブロンが語っていた「パッチソング」ですが、これは竜が的確に語っているように「シャーマンキングが絶対の存在であると疑問を抱かず信じ込むための歌」です。揺るぎない心によって巫力が増大する、自己暗示のような仕組みですね。これを繰り返し聞かされたことで、シルバは人が変わったようになってしまったというわけでした。
なお劇中で流れた歌は、原作者の武井宏之先生にイメージを聞いた上で、劇伴担当の林ゆうき先生に作っていただいたとのこと。歌詞が原作のセリフ通りでないのも、それを受けてのものだそうです。武井先生のイメージは「宗教的な歌」だったとのことですが、みなさんの耳にはどう聞こえたでしょうか?
それでは今回はこの辺で。またよろしくお願いします!
●タシロハヤト
美少女ゲームブランド「age(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
(タシロハヤト)
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