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レジェンド声優・井上和彦 枕を涙で濡らした新人時代、転機となったキャラとは?

マグミクス / 2022年3月26日 7時10分

レジェンド声優・井上和彦 枕を涙で濡らした新人時代、転機となったキャラとは?

■声優人生を大きく変えたキャラ

 3月26日は声優の井上和彦さんのお誕生日です。井上さんといえば、代表作も多いレジェンド声優ですが、これまでの道のりはけっして平坦なものではありませんでした。

 学校を卒業した井上さんは、プロボウラーを目指してボウリング場に就職したそうです。しかし、思い描いていた理想と現実のギャップから人間不信になって退職、一人暮らしのアパートで引きこもり状態になりました。

 そんな時、ボウリング場での同僚が声優を目指していたことから、一緒に試験を受けることになります。本人的には人と話すリハビリと考えていました。ところが、この試験に合格し、声優養成所に通うことになります。

 この養成所の講師だった永井一郎さんの指導のもと、井上さんは声優の勉強を重ねました。そして養成所卒業後、永井さんの推薦で青二プロダクション入りを果たします。この永井さんは井上さんの師匠的存在でした。プライベートでも深い親交があり、時には私生活のことでも注意を受けるようなこともあったそうです。

 そんな井上さんのデビューは『マジンガーZ』(1972~1974年)の兵士役でした。しかし、緊張からタイミングに合わせて声を出すことができず、後から別録りとなったそうです。

 そして、次なる試練だったのが初めてのレギュラー役をもらった『UFOロボ グレンダイザー』での出来事。井上さんは一度だけの出演で役を下ろされてしまいました。この時、情けなさから毎日、枕に顔をうずめて泣いていたと語っています。

 しかし、ここで挫折することなく毎日、近所の土手でその時の「大変です、UFOが来ました!」というセリフを練習しました。途中で通報されそうになってからは台本を持って練習したそうです。

 この努力が少しずつ実り、『一休さん』(1975~1982年)の第22話から三代目の哲斉(てっさい)役を演じることになりました。井上さんにとって初めての名前付きキャラです。

 その後、最初の代表作といえる『キャンディ・キャンディ』(1976~1979年)でアンソニー・ブラウンを演じ、初の主演作となる『超合体魔術ロボ ギンガイザー』(1977年)の白銀ゴローを演じるなど、ようやく順調に歩んでいきました。

 井上さんがスターダムに昇っていくきっかけとなったのは、やはり『サイボーグ009』(1979年)の009こと島村ジョーでしょう。

 人気マンガの二度目のTVアニメ化という話題性のある作品だったことから、かなりの人数の声優がオーディションを受けていたそうです。しかし、なかなか009役は決まらず、新人である井上さんにも機会が回ってきました。

 この時、井上さんはまず自己紹介をしたそうです。「サイボーグ009・島村ジョー役をやる井上和彦です!」……そうしたら、監督がバッっと立ち上がり「それだよ!」と言って、井上さんが009を演じることが決まりました。井上さんいわく、地声を気に入ってくれたそうです。

 この時の監督が高橋良輔さん。後に自身の監督作品である『太陽の牙ダグラム』(1981~1983年)ではクリン・カシム、『蒼き流星SPTレイズナー』(1985年)ではアルバトロ・ナル・エイジ・アスカと、井上さんを主演に抜てきしています。この高橋監督の起用が、声優としての井上さんの実績と自信を育てたのでしょう。

■二度目の転機となった、オンとオフの使い分けが必要だったキャラ

『美味しんぼ』山岡士郎役 画像はBlu-ray BOX2(バップ)

 井上さんといえば代表作が多いので、ここからは筆者のチョイスで失礼いたします。

 前述した通り、井上さんが活躍を始めた1980年代はロボットアニメが多かった時代ですから、出演作も比較的、ロボットアニメが多くありました。主演作でいえば、前述した作品以外にも『百獣王ゴライオン』(1981年)の黄金旭、『忍者戦士飛影』(1985年)のジョウ・マヤ、『マシンロボ クロノスの大逆襲』(1986年)のロム・ストールなどがあります。

 他にもゲストキャラだけど印象的なもので『宇宙戦士バルディオス』(1980年)のデビット・ウェイン。一度の登場で多くのファンを生み、劇場版でも活躍した人気キャラです。

 この1980年代後半からは、さらに井上さんがそれまで演じてきた直線的な主役キャラとは違う、軽口をたたくオンとオフの切り替えがうまいキャラを演じることが増えたのも特徴的でした。

『赤い光弾ジリオン』(1987年)のチャンプ、『天空戦記シュラト』(1989年)の迦楼羅王レイガなどがそうです。こういったキャラとは違う面もありますが、井上さん自身が二度目の転機となったキャラとして挙げているのが『美味しんぼ』(1988~1992年)の山岡士郎でした。

 実は『美味しんぼ』放映直前に井上さんはマイコプラズマ肺炎で3週間入院するトラブルに見舞われています。本来ならキャスト交代も考えられた状況でしたが、この時、スタッフは特番を放送することで放映開始を遅らせ、井上さんの復帰を待ちました。

 そんなこともあって気負いすぎたのか、井上さんは役作りに苦労したそうです。しかし、山岡役を紹介してくれた録音監督の浦上靖夫さんから、「カッコ良すぎ」「もっとぼそぼそしゃべてみたらどうか」……というアドバイスをもらい、ようやく役をつかめました。これがきっかけでオンとオフのある役に自信がつき、この後の『NARUTO -ナルト-』(2002~2007年)のはたけカカシや、『夏目友人帳』(2008~2017年)のニャンコ先生/斑につながっていったそうです。

 このオンとオフのあるキャラでも、特にかわいさと凛々しさの両極端で印象的だったのが、『とんでも戦士ムテキング』(1980年)の遊木リン/ムテキング、『KAWARI-BOY スターザンS』(1984年)のスターザンS/夢野星男、『レジェンズ 甦る竜王伝説』(2004年)のシロン/ねずっちょでした。

 近年ですと『機動戦士ガンダムAGE』(2011年)のフリット・アスノ、『おそ松さん』(2015~2021年)の松野松造、『吸血鬼すぐ死ぬ』(2021年)のY談おじさんなど、高齢の男性役も増えていますが、まだまだ青年の声が出ないわけではありません。意味深げに登場した『鬼滅の刃 遊郭編』(2021年)の剣士役は、これからも登場が期待できるイケメン男子でした。

 井上さんはこれからもさまざまなキャラで活躍が期待できる声優だと思います。しかし、時になんでこんな役を? と思うキャラもいて、ファンからは「井上さんの無駄遣い」「もっと仕事を選んで」……という声も少なくありません。それも新人時代にあった苦労を考えれば、どんな役でも演じるという気持ちは痛いほど理解できます。

 あらためて井上和彦さん、お誕生日おめでとうございます!

(加々美利治)

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