アニメ『シャーマンキング』48話 ハオの言動を理解するヒントになる「乙」の文字
マグミクス / 2022年3月26日 12時10分
■「乙」の意味とそこに込められた、ハオを理解するヒント
2022年3月24日に放送されたTVアニメ『シャーマンキング』第48話では、作中における重要情報がいくつか明かされました。まずオパチョの能力、そして「ゼット」の文字です。
オパチョは、ハオやかつてのアンナと同様に人の心を読む能力を持っていました。設定ではさらに、遠隔地の状況を把握する能力を持っている……などとされています。なぜハオはそんなオパチョが麻倉葉たちと行動するのを認めたのか……それだとハオを止めようとする計画が成功してしまうかもしれませんよね。
これに悩む葉の脳裏に、謎の「ゼット」の文字が浮かびます。この正体は、「SHAMAN KING KC完結版」27巻に収録されている読み切り「麻葉童子(マッパどうじ)」に描かれていますが、残念ながらアニメでは触れられていないので、ここで簡単に紹介しましょう。
平安時代、霊能力を持っていた麻葉童子(後の麻倉葉王)は、鬼の子として迫害されていました。母・麻ノ葉はキツネだと言われ殺されています。そのため人間への復讐を誓っていましたが、ある日、乙破千代(おはちよ)と名乗る鬼と出会い、自分は鬼(霊)が見えるだけの人間で鬼ではなく、復讐する力などない……ということを知らされます。
童子は目標を失うものの、乙破千代と暮らすうちに平穏を取り戻し――たかに見えましたが、心の喪失は埋まりません。そこで乙破千代は復讐に協力することにします。人の心を読む力を一時的に童子に与え、今で言うオーバーソウルの方法を指南しました。乙破千代はちょっとした仕返しができればいいぐらいの気持ちでしたが、母の仇を目の前にした童子は乙破千代の制止を聞かずに相手を殺してしまいます。復讐を遂げた童子でしたが、彼の元から乙破千代は去り、心を読む力は童子に染みついてしまったのでした……。
この乙破千代が身につけていた腹巻きに「乙」の字が書かれていました。葉が見たのは「ゼット」ではなく漢字の「乙(おつ)」だったんですね!
実はこの読み切りには、他にも重要な情報があります。乙破千代が持っていた「心を読む力」は、彼が生前人間だった頃に「いつも誰かの顔色ばかりうかがって生きてきた」ことで身についたもので、それが童子に染みついたというのです。これは童子も似た者だからだと解釈するのがよく、このことはこれから先、ハオの言動を理解するための手がかりとなるのでぜひ覚えておいてください! オパチョの同行を許した理由も無関係ではないでしょう。
■蓮の「成長の理由」は、観る者の解釈次第
ハオの手下だったはずのオパチョ(右)だが、プラントの戦いでは葉たちと行動をともにする。アニメ『シャーマンキング』第48話より (C) 武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京
次の重要な情報は、道蓮(タオ・レン)の強さの秘密です。マグナとの戦いで見せた成長についてチョコラブに問われた蓮は、監視されていること、未完成であることを理由に回答を拒みます。
そして嫌でも知る時が来る……と言うのですが、実はこの答えは、原作を最終回まで読んでも明確には描かれていません。しかし、ヒントとなる出来事がムー大陸上陸後にいくつか描かれています。それらに共通するのは、「自分が抱える問題を乗り越えて成長する」ということです。
本作は当初から「過去の自分を乗り越えて成長すること」が描かれており、物語としてはシンプルかつ基本的な構成になってい
るのですが、必ずしもわかりやすく描かれていたとは限りません。
特に、原作はハリウッド映画に対するフランス映画というか、明確な答えがないなかで読者なりの解釈が求められる傾向が強いといえます。この蓮の場面もそうで、蓮が強くなった理由を誰も直接言葉では説明しないのですが、全体を見てみると想像がつくようになっています。
以前取り上げたマルコとラキストの「正義とは何か?」の激突や、前回の記事で触れたリゼルグの覚悟の弱さとその克服は、想像を助ける材料のひとつです。いずれも、それぞれが抱えていた問題の克服でした。蓮にとってそれが何なのかは、これから先を観ていくことで気づけるかもしれません。
これからのクライマックス続きのエピソードでは、目先の迫力に注意が向いてしまいがちなのですが、少し引いてみることで新しい発見があると思いますよ!
ところで、最終プラント「宇宙プラント」でのラザホーの姿に驚いた方もいたのではないでしょうか? 外見やオーバーソウルは宇宙人そのものです。確かにそれもオカルト分野ではあるものの、霊的・呪術的な方面とは毛色が異なります。ましてや本作の根底には仏教があるので、この広がりには驚いた方もいるのではないでしょうか?
もちろんこれらは、原作者である武井宏之先生の好みですが、好きな要素を全部放り込んで上手くまとめているのは素晴らしいことですよね! 筆者もこれらの話題は大好きなので設定を見る度にワクワクします。葉たちの戦いは一筋縄ではいきそうもないラジム戦ですが、今からラザホー戦がどうなるのか楽しみです!
それでは今回はこの辺で。またよろしくお願いします!
●タシロハヤト
美少女ゲームブランド「age(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
(タシロハヤト)
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