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2次元作品は陰謀論をどう描いてきたか ゲームの悪役にぴったりな世界を支配する組織…

マグミクス / 2022年4月6日 18時46分

2次元作品は陰謀論をどう描いてきたか ゲームの悪役にぴったりな世界を支配する組織…

■フィクションと相性のいい陰謀論

 特定の出来事や状況について「邪悪で強力な集団による陰謀が関与している」という見方、いわゆる「陰謀論」は、現実世界では慎重に対応するべきものですが、人びとの好奇心や恐怖心を刺激する効果があるのもまた事実です。そして、多くのフィクション作品もまた「陰謀論」をネタとして取り入れてきました。今回は、「アニメ・マンガ・ゲームはどのように陰謀論を描いてきたか」について、一部の作品を例に紹介します。

●陰謀論そのものなマンガ 『MMR マガジンミステリー調査班』

『MMR マガジンミステリー調査班』は、20世紀末の日本で全国の青少年に不要な恐怖を与え続けた、陰謀論そのものみたいな少年マンガです。本作で通奏低音として引用されていたのは、20世紀末に一部の人々を騒がせた「1999年に人類が滅亡する」というノストラダムスの大予言です。ノストラダムスの予言は極めて抽象的に書かれているため、どうとでも解釈のしようがあり、主人公のキバヤシが強引なロジックで何でもかんでも人類滅亡に結びつけてしまう展開は創造的ですらありました(ノストラダムスの予言はあまりにも抽象的であるため、予言ではなく権力者の批判を巧妙に躱して書かれた風刺詩との説もあります)。

 一方で超常現象を科学的に解明しようとする展開も多く、一種の科学ドキュメンタリーとしての側面も持っていました。とりわけ印象的だったのは、狂牛病(BSE)の原因としてプリオン(特殊なタンパク質)を紹介していたことです。当時、プリオンは日本でまだ報告例がない新しい学説で、のちにプリオンが狂牛病の原因と断定されたため、結果的に『MMR』は時代を先取りしていたことになります (そして結局は人類滅亡に結びつける)。

 筆者は子供の頃に本作を読んで勝手に震えていましたが、ノストラダムスの大予言が大外れした今は笑って読めます。現代史の三面記事的な記録として、心の本棚に収めておきたいですね。

●バックグラウンドしての陰謀論

 前述の通り、陰謀論には邪悪で強力な集団が登場します。5pb.Gamesとニトロプラスによる「科学アドベンチャー」シリーズでは三百人委員会、『メタルギアソリッド』ではビルダーバーグ会議、『アサシンクリード』ではテンプル騎士団が世界を支配していることになっていました。フリーメイソン、イルミナティ、黄金の夜明け団なども陰謀論系フィクションの定番です。

 こういった団体は、それ自体を話の主軸にする場合より、バックグラウンドとして名前が採用されているケースが多いように思います。世界観の基本設計書として都合がいいのでしょう。

■陰謀論の王道「フリーメイソン」

切り裂きジャック事件の背後にある陰謀論を描いたコミック『フロム・ヘル』新装合本(みすず書房)

●歴史の一部としての陰謀論 『フロム・ヘル』

 陰謀論系都市伝説の人気者・フリーメイソンはいろいろなところに節操なく名前を出しています。なかでも、世界一有名な殺人鬼・切り裂きジャックを題材にしたイギリス製コミック『フロム・ヘル』では、「連続殺人の裏にフリーメイソンと王室を巻き込んだ巨大な陰謀が渦巻いていた」という仮説が採用されています。

『ウォッチメン』でも知られるアラン・ムーアによる『フロム・ヘル』はセリフの量がとにかく多く、日本の漫画と比べるとコマ割りが平板で正直読みづらいです。歴史や哲学の話が延々と続くパートもあるので、マンガだと思って軽い気持ちで読むと脱落する可能性があります。

 同作にはオカルトな要素(主に魔術)も含まれていますが、ここで描かれているのは思想史としての魔術であり、歴史の一部としての陰謀論です。筆者の大学院時代の指導教授(英文学者)が書評で『フロム・ヘル』を取り上げていましたが、わざわざ教授が取り上げた理由が読んで改めてわかりました。取っつきやすい代物ではありませんが、陰謀論を文学に昇華させた稀有な作品なので、興味があればぜひ挑戦してみてください。

『HELLSING』や『ドリフターズ』の作者として知られる平野耕太先生が、22年3月にTwitterでこのような発言を残しています。

「陰謀論に染まらないためにも人間は思春期にしっかりと中2病に罹患して体内に抗体を作っておかないといけないんです」

 確かに、娯楽として陰謀論に接することができないと、真に受けて信じてしまう危険性もあります。陰謀論にはフィクションのなかでたっぷりと触れておき、体内に抗体を作っておきたいところです。

(ニコ・トスカーニ)

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