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本当は怖い『ウルトラマン』の宇宙人 子供がトラウマになった怪奇演出、異質な考え方

マグミクス / 2022年4月10日 9時10分

本当は怖い『ウルトラマン』の宇宙人 子供がトラウマになった怪奇演出、異質な考え方

■何を考えているのか地球人には理解不能な存在

 ウルトラシリーズにはさまざまなタイプの侵略宇宙人が登場します。しかし、シリーズでもっとも宇宙人に異質なものを感じるのは、やはり第一期シリーズの『ウルトラマン』かもしれません。

 あくまでも筆者の持論ですが、『ウルトラマン』に登場する敵宇宙人は他のシリーズの明確な侵略者たちと違った、異質なイメージがあるように思います。人間、地球人との考え方が大きく異なる雰囲気を持っている存在。そんな宇宙人たちについて振り返ってみましょう。

 まずは第2話「侵略者を撃て」に登場した「宇宙忍者バルタン星人」です。バルタン星人が地球に来た本来の目的は、宇宙船の修理と欠乏した予備パーツの調達でした。そして、宇宙船にいた20億3千万人のバルタン星人たちは、狂った科学者の実験で故郷を失うも、たまたま宇宙旅行中だったことから難を逃れていたのです。

 こう振り返ってみるとバルタン星人は難民のような存在で、本来なら保護対象でしょう。しかし、彼らは突如として行動を侵略行為に切り替えてきました。そして、巨大化してウルトラマンと戦うことになります。

 筆者がバルタン星人に異質さを感じるのが、ハヤタとの交渉の際に「生命」の意味を理解できなかったことです。ここが地球人の概念と大きく異なります。その後、いくつかの設定でバルタン星人の命の概念は個としてより、集団としての要素が強いことがわかります。昆虫の生態に近いとされているのです。

 そう考えると、分身するバルタン星人の姿は実はひとりでなく、それぞれが本体で不必要なときはひとつの身体を共有しているだけなのかもしれません。核ミサイルの直撃を受けて脱皮したかのように復活した姿も、ひとりが犠牲になっても他の個体が後を引き継いだものとも考えられます。

 このように不気味なバルタン星人の生態ですが、その後の復活劇以降は普通の侵略宇宙人と同じ扱いになり、その出演頻度からウルトラシリーズでも屈指の人気者になりました。しかし、初見のエピソードだけ見ていると、その不気味さは愛しがたいものです。

 続いては第18話「遊星から来た兄弟」に登場した「凶悪宇宙人ザラブ星人」。にせウルトラマンに化けたことで有名です。

 にせウルトラマンに変身して本物のウルトラマンの信用を失墜させようとしたり、地球人に近づいて自分を信用させたりするなど、ザラブ星人はメンタル面は比較的、地球人に近い存在なのかもしれません。

 しかし、地球人の概念と大きく異なるのは、ザラブ星人が他の文明を滅ぼすという目的に特化している点です。地球を欲しているわけではなく、侵略者ではありません。侵略目的でやってきた他の悪の宇宙人たちとは違い、どちらかというと悪魔的な愉快犯だと感じられます。

 そういう意味では、宇宙の平和を無償で守るウルトラマンと対の存在と言えるかもしれません。ザラブ星人が文明を滅ぼすこと自体には特に意味はなく、使命として淡々と遂行しているのでしょう。

 ちなみにザラブ星人の由来はブラザー(兄弟)を反対にしたもので、劇中で自分の名前を母国語で「兄弟」という意味と言ったのは、嘘ではなかったのかもしれません。

■その存在自体がミステリアスな雰囲気を醸し出す

ダダが表紙の「ウルトラ怪獣DVDコレクション」14巻(講談社)

 筆者が幼少の頃にもっとも怖かったウルトラ怪獣が、第28話「人間標本5・6」に登場した「三面怪人ダダ」です。その後、キャラクターとしての人気が高まり、今では愛されキャラ的な扱いになっていますが、幼少の頃に抱いた不気味なイメージは今でも消えていません。

 物体をすり抜ける能力やテレポートまで使う神出鬼没さ、「ダダ…」という不気味な声、そして人間をとらえて小型化して標本にするという行動。どれを取っても、恐怖しかおぼえません。宇宙人というよりは、妖怪や物の怪の類のイメージを強く感じます。

 子供心的に言うと、他の宇宙人は「〇〇星人」なのに、ダダはダダと名前に何もついていないのも不気味に思えた要因でした。後に『ウルトラマンパワード』でパワードダダというバリエーションが登場しましたが、宇宙人ではなくコンピューター生命体という設定になり、原典とは大きく異なります。しかし、その能力や行動は原典に近いもので、むしろダダの不気味さを一層色濃く描いていました。

 また、第33話「禁じられた言葉」に登場した「悪質宇宙人メフィラス星人」は、ウルトラマンと互角の戦い方をした強者でしたが、本来誇るべきものはその知能でした。書籍によれば、知能指数は1万以上だそうです。

 それだけにメフィラス星人は侵略というよりも、ゲームに近い感覚で地球人に挑戦してきました。武力を使えば簡単に勝てるとばかりに他の侵略者を見せつけたり、フジ隊員を巨大化して操ったりと、自分の力を誇示しています。

 そんなメフィラス星人の目的は、フジ隊員の弟サトル少年に「地球をあげます」と言わせることでした。ただの子供にそんなことを言わせても何が起きるというわけではありませんが、メフィラス星人は地球人とは別の価値観で戦っていたのでしょう。人の心への挑戦。それによる勝利が、武力制圧以上に価値があると思っているわけです。

 だからこそ、メフィラス星人はウルトラマンとの戦いに価値を見出せず途中で撤退しました。もしも、あの時のメフィラス星人が最初から武力による侵略をしていれば、ウルトラマンと科学特捜隊の苦戦はいかほどのものだったかわかりません。

 そして、最後に地球へやって来たのが、最終回「さらばウルトラマン」に登場した「変身怪人ゼットン星人」です。40年前から円盤で地球を偵察し、大軍団で侵略を開始した本格的な侵略宇宙人でした。そういう点では、これ以降の主流となる侵略宇宙人とあまり変わりません。

 しかし、当初は名前が決められておらず、放送後の資料で名前が決められたという経緯があります。それゆえに長い間、謎の宇宙人と呼ばれていました。一部の雑誌では同じく最終回に登場したゾフィーと混同され、「謎の宇宙人ゾーフィ」と紹介されています。

 造形としてはケムール人のマスクを前後逆にかぶったもので、そのために筆者や多くの子供たちはケムール人だと思っていました。そういう意味では、ウルトラ怪獣のなかでもミステリアスな存在だったと言えるかもしれません。

 以上、『ウルトラマン』に登場した宇宙人たちです。この他の怪獣もグリーンモンス、ミイラ人間やケロニアなどは、どこから襲ってくるかわからないという恐怖感がありました。おそらく、前作『ウルトラQ』の怪奇要素から引継いだのでしょう。そう思うと、最近の『ウルトラシリーズ』は怪奇要素が少ないですね。やはりこれも時代なのでしょうか?

(加々美利治)

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