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衝撃の「プリンセスハオ」演出のウラ話とは? アニメ『シャーマンキング』49話

マグミクス / 2022年3月31日 18時30分

衝撃の「プリンセスハオ」演出のウラ話とは? アニメ『シャーマンキング』49話

■武井先生や製作陣が想いを込めた「プリンセスハオ」の演出

 2022年3月31日(木)に放送されたTVアニメ『シャーマンキング』第49話について、まず取り上げるべきは何といっても「寝るぞー!」からの「プリンセスハオ」登場です!

 ご存じの方も多いでしょうが、本作『SHAMAN KING』は週刊連載時にここで最終回を迎えています。さりげなく描かれていた果物のミカンが、「未完」の暗喩だと気付いた方も多かったようで、ハオをプリンセスに例えるという想像のナナメ上を行った表現も相まって、話題になりました。

 もちろん現在発売されているマンガ単行本「KC完結版」は物語の最後まで描かれ、今回のアニメでも全部描かれるのですが、この区切りでエンディングが流れるという構成は実に心憎いですね! 当時を知るファンの方に向けたサービスです。

 なお、これは原作者の武井宏之先生からの要望のひとつでした。その時はそこで次回に続く形にしたい……という話だったのですが、さすがにそれだと誤解と不安を招くのでシャレにならないのでは? という意見があって、Cパート(エンディングの後の部分)でその先が描かれる現在の構成になったと記憶しています。スタッフのサービス心でこうした演出が実現したことは、筆者としては感慨無量です! 同じ気持ちの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

 なお、この「プリンセスハオ」は小山田まん太の夢に出てくる存在ですが、そのきっかけを作ったのはアンナの言葉でした。そしてここにハオの生き様が凝縮されています。

 前回の記事で筆者は「人の心を読める能力」は「いつも誰かの顔色ばかりうかがって生きてきた」乙破千代(おはちよ)が身につけた能力で、それが麻倉葉王に染みついたと書きました。今回アンナはハオのことを「執念という魔王に囚われたお姫様」「千年経っても死んでも治らないバカで、しつこくてちっちゃい、かわいい眠り姫」と言っています。

 これらをひと言で表すと、ハオは「臆病で執念深い、かわいい小者」ということになり、これまで描かれてきたハオ像とは真逆のイメージですが、だからこそ力を欲し、それを振り回して強がっていた……と考えれば、そして少なくとも麻倉葉はそのことに気付いていたとするなら、「あいつ友達いねえだろ」という言葉や、ハオを救おうとする言動にも説明がつくのです。

 本作にはこうした解釈が求められる場面が多く、それが作品の魅力でもあります。例えば、今回のラジム戦も同じです。

■ラジム戦で葉が発した言葉は、作品の根幹に関わるものだった?

葉はハオの「弱さ」やラジムの「気遣い」に気づき、それらを受け入れる覚悟をもっていた。アニメ『シャーマンキング』49話より (C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京

 ラジムは葉が無無明亦無(むむみょうやくむ)を使って倒しますが、その直前のセリフは「愛することは簡単だ、難しいのはそれを受け止める事なんよ」です。なぜ突然そんな言葉が出てきたのでしょう?

 そもそもラジムは完全に敵対しておらず、実力差を見せつけ撤退するよう気遣っていました。葉はそれを受け止めて感謝しながら命をかけて戦っていた……とすれば、あの言葉は「一方的に想いを向けたり、向けられていると感じるだけなら簡単だが、その想いの中身を正面から受け入れることは難しい」という意味ではないかと筆者は解釈します。あれは戦いの最中に葉が抱いていた気持ちをラジムに簡潔に伝えた瞬間だったと感じるのです。

 そしてこれは葉の基本的な考えで、「想い」とは実は「優しさ」でも「敵意」でも何でもよく、それどころか「相手の想い」ではなく「自分の気持ち」でも構わないとすら思うのです。ただ葉は相手を憎むことがないので、これらを「愛(慈愛)」という言葉にまとめたのではないでしょうか?

 振り返ると本作ではずっと想いを受け入れることの大切さが説かれていました。「シャーマンは思いひとつ」とは自覚、覚悟を持つことですし、「恐山ル・ヴォワール」編は葉がアンナを全身全霊で受け入れた話です。

 物語を最初から観直すまでもなく、ムー大陸に到着後の出来事……マルコ対ラキスト、対ナマリ戦での木刀の竜、覚悟の決まった蓮たちとリゼルグの対比、パッチソング、「ふんばりの詩」……これらをとっても、自分や他人の想いを受け入れる表現が込められていました。カリムとのやりとりもそうでしょう。もちろんそれは今後も続きます。原作をご存じの方は、次回どういう展開になるか思い出してください。

 さてそうなると前回の記事で触れた、道蓮の強さの秘密にもこれが当てはまるのではないかと仮定できます。次回の放送ではそれも深掘りされるはずなので、ぜひ皆さんなりの解釈をしてみてください。

 なお、想いを受け入れ切れなかった描写もあります。セイラームです。ゴーレムを動かしていたのはルドセブ兄妹の母の霊ですが、セイラームは受け入れ切れていません。そのためまったく知らずにいたルドセブは、ハオによって最悪の形でそれらを強制的に受け入れさせられるのです。

 このように、まるでこれまでの総括のようなプラント編、次回も目の離せない展開が待っていますよ!

 それでは今回はこの辺で。またよろしくお願いします!

●タシロハヤト 
美少女ゲームブランド「age(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。

(タシロハヤト)

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