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『鬼滅の刃』堕姫は「天国に行ける」可能性があった? 妓夫太郎の想いを読み解く

マグミクス / 2022年4月11日 18時10分

『鬼滅の刃』堕姫は「天国に行ける」可能性があった? 妓夫太郎の想いを読み解く

■「遊郭編」で感じた妓夫太郎兄妹への違和感

『鬼滅の刃』に登場する鬼は、その多くが人間だったときの記憶を持ちません。しかし、頸を斬られて倒された時には、鬼の王・鬼舞辻無惨の精神支配から解放され、人間だったときの自分を思い出すことが多くあります。

「上弦の陸(ろく)」である「堕姫」と「妓夫太郎」兄妹も、そうした鬼です。妓夫太郎は、遊郭の吉原で生まれ、容姿の醜さから忌み嫌われていました。妓夫太郎の妹である堕姫こと「梅」は、美しい容姿であり、兄は妹を誇りにしていました。

 妓夫太郎は借金などの取り立てを仕事としながら、妹を養っていました。しかし、梅が13歳になったときに、悲劇が起こります。遊郭の座敷で、梅が妓夫太郎を馬鹿にした客の侍に腹を立て、カンザシで目を突いたのです。

 梅は報復のために縛られて、生きたまま焼かれます。妓夫太郎は侍を殺害しましたが、刀傷を負って倒れました。瀕死のふたりのところに現れたのが、当時「上弦の陸」であった鬼でした。上弦の鬼に血を与えられたことで、妓夫太郎兄妹は鬼になったのです。

 ところが、この設定を踏まえると、筆者には違和感を持つことがあります。

「遊郭編」の最後で頸を斬られたことで、記憶を取り戻した妓夫太郎は、梅に「お前とはもう兄妹でも何でもない。俺はこっちに行くから、お前は反対の方。明るい方へ行け」と指示しているのです。

■地獄に堕ちる「基準」はどこにあるのか

TVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』第2弾キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

『鬼滅の刃』には、明確に死後の世界が描かれています。善人が行く明るい場所(天国?)と、悪人が落ちる暗い場所(地獄?)です。「遊郭編」以降のネタバレは書きませんが、善人の側が望んで地獄に行くことはできるようですが、逆はできません。

 那田蜘蛛山の鬼・累は、頸を斬られた後で両親が迎えに来ますが、これは両親には「子供(累)を殺そうとした罪」があり、累には「親を殺した罪」があるため、どちらも地獄に堕ちているから、できたわけです。

『鬼滅の刃』では仏教の「輪廻転生」的な「生まれ変わり」が起きています。悪人が再び人間に生まれるためには、地獄で「五戒」と呼ばれる厳しい規律を守る必要があるという考えです。梅は「何度生まれ変わっても、アタシはお兄ちゃんの妹になる」と言っていますから、この世界で輪廻転生的な考えがあることは間違いありません。

 ただ、なぜ妓夫太郎は梅が「明るい場所に行ける」と思ったのでしょうか。梅は上弦の鬼として、鬼殺隊の「柱」を7人は殺害しているようですし、京極屋の女将も殺害しています。女将によれば「ケガ人や足抜け、いじめで自殺する子も出している」とのことです。

 堕姫には殺人やいじめといった「悪行」が多数あるのに、妓夫太郎は梅が「天国に行ける」と考えていたということです。つまり「梅は罪を犯していない」と解釈できる余地があるのかもしれません。筆者は『鬼滅の刃』の世界では「亡くなった時点までの罪が、死後に問われる」のではないかと想像します。

 梅は侍に生きたまま焼かれています。妓夫太郎が来たときには虫の息で、上弦の鬼には「間もなく死ぬ」と言われています。上弦の鬼はその後も喋りつづけていますが、その間に梅は息絶えて、妓夫太郎だけが鬼になったのではないでしょうか。

 梅が堕姫として犯した罪は「死んだ後なので問われない」か「鬼になる決断をした兄・妓夫太郎の罪」となっているのではないかということです。実際、堕姫の自由意志を、妓夫太郎は奪い、操れるとも描写されており「梅の犯罪行為を止めること」は可能でした。

 また、妓夫太郎は「梅は染まりやすい素直な性格で、俺が育てたからこうなった」とも言及しています。つまり、自分の一部となった梅に「遊郭で生きるために、こうしろ」と妓夫太郎が教え「梅は素直にその教えを守っていただけ。だから、梅の罪は減じられる」とも考えられるわけです。

 作中全体として善人でも鬼になると、凶暴性が増す傾向も描写されています。しかし堕姫は、自身に無礼を働いた我妻善逸を取りなす、京極屋の主人の要求を受け入れます。それだけでなく「旦那さん、顔をあげておくれ。私の方こそご免なさいね」と、自身の非を認めて謝り「手当てしてやって頂戴」とも指示しているのです。

 鬼となることで生じる凶暴補正を差し引いて考えると、梅の気立ての良さは相当なものです。実際、鬼として戦っている時でさえ、兄の妓夫太郎への信頼感と愛情が描かれています。

 こうしたことも含めて「堕姫の悪行は、梅の責任とは言い切れない」となり、妓夫太郎が「梅は天国に行ける」と考えたのではないでしょうか。

(安藤昌季)

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