江戸のおまわりさんの初任務は「犬」の飼い主探し！？ 珍道中に「癒やされる」

■人情の町・江戸の、知られざる暮らしぶり

　大捕り物（犯罪者を捕まえること）がしたい「江戸のおまわりさん」の新入りが任された仕事は、迷い犬の飼い主探しでした。その犬・ぶちは「おかげ犬」と呼ばれ、縁起がいいと人びとからかわいがられる存在でした。ひとりと一匹の飼い主探しの始まりです。

　笹井さゆりさん（@chiyochiyo_syr）による創作マンガ『江戸のおまわりさん、犬に出会う』はTwitter上でいいね数が4万を超えました。「おかげ犬」という江戸時代の市井の風習をもとにしていて、かわいらしいイラストに癒やされながら、昔の文化を知ることができる作品です。

　絵のやわらかい雰囲気と心温まるストーリーが多くの読者の心をつかみ、「ほっこりする」「いい話！」「癒やされる」という声があがっています。『江戸のおまわりさん、犬に出会う』の作者・笹井さゆりさんにお話を聞きました。

ーー笹井さゆりさんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

　もともとは、江戸時代の解説イラストを中心に描いていました。そのうち「江戸時代のこの文化は、ストーリーで伝えられた方が面白そうだな……」と思うことが増えまして、それならマンガにしてみよう！　と。マンガは描くのがとにかく大変というイメージがあったため、なかなか踏み出せずにいたのですが、「おかげ犬」という風習の面白さに背中を押されました。

ーー『江戸のおまわりさん、犬に出会う』の「ぶち」にはモデルがいるとのことですが、この物語はどのように生まれたのでしょうか？

　参考元にもあげさせていただいたのですが、江戸時代のある藩の記録に「伊勢参りに送り出された犬一匹の飼い主が見つからなくて捜索中。いったん藩で預かることにする」という旨の記述が残っているんです。この背景にいったいどんな騒動があったのだろう、これを書いた人はどんな顔でこれを書いたのだろう……と想像すると面白くて。そこから、このお話が生まれました。ちなみに、記録によるとその犬は無事に飼い主が見つかり、飼い主の元に返されたそうですよ。

「ぶち」のモデルは実家の犬です。人懐っこい性格や、エサを食べるときの仕草や表情などは、実家の犬そのままです。「ぶち」自体の造形がシンプルなので、仕草で「犬あるある」を感じていただけるように気をつけました。

ーー『江戸のおまわりさん、犬に出会う』に対してたくさんの感想が寄せられていますが、特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。

　どの感想もありがたく拝見しています。実は、少ないページ数ということもあり、このお話には「ぶち」をのぞいてキャラクターの名前は出てこないんです。そんな少ない情報からも、キャラクターの背景やその後を想像して伝えてくださる方が多くて、それがとてもうれしかったです。お話の余白に込めたものを感じてくださったのかなと……ありがたいなと思いました。

「江戸時代のちいさな話」シリーズ・江戸時代にいた、こんぴら狗（いぬ）（笹井さゆりさん提供）

ーーこれまでに投稿されたイラストやマンガなどで、反響が大きかったもの、ご自身が気に入っているものを教えて下さい。

　やはり印象深いのは、シリーズ化している「江戸時代のちいさな話」という解説イラストでしょうか。ここで調べたことの蓄積があったおかげで、マンガを描くことができました。

ーー今後、発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか？

　私は歴史が好きなので、歴史を描いていきたいです。と言っても、関心があるのは歴史のメインストリームから少し外れた、市井の人の細かい暮らしぶりばかりで……。今後もそんな人たちを中心とした、スケールの小さな「歴史モノ」を描いていく気がします。まずは引き続き江戸時代を中心に、昔の暮らしを調べつつ、そこで拾い集めた小さなエピソードを絵にしてお伝えしていきたいです。今後も楽しんでいただけますと幸いです！

（マグミクス編集部）