間違いなしの面白さ!アニメの名脚本家たち 実写化も成功させた職人、誇張表現の名手も
マグミクス / 2022年4月14日 17時20分
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■あまり前に出ない脚本家の名前
「世界のクロサワ」と呼ばれた偉大なる映画監督の黒澤明は、複数の脚本家を雇って別々に同じシーンを書いていたそうです。ワンシーンごとに、脚本コンクールをしていたということですね。これは、それほどに脚本が大事という一例です。
ですが、アニメのレビューでは、監督、声優、作画などへの言及に比べ、脚本家(シリーズ構成担当)への言及は少ないように思います。今回は筆者が、独断で凄いと思うアニメの脚本家を紹介します。
※監督兼任ではなく脚本をメインにしている方に絞っています。
●虚淵玄……絶望とバイオレンス
虚淵玄(うろぶち・げん)さんは、『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』などで知られるベテラン脚本家です。ゲーム、アニメが主戦場ですが、実写特撮の『仮面ライダー鎧武/ガイム』なども手掛けており、ニチアサ好きにとってもお馴染みの名前ですね。
作風は趣味性が全開で、バイオレンスで絶望的な終わり方をするのが特徴です。初期はその特徴が顕著でハードポイルドな『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』、鬱ゲーの怪作『沙耶の唄』、原作担当の『Fate/Zero』などがその典型と言えるでしょう。
しかし、近年は作風がマイルドになりつつあり、『翠星のガルガンティア』はほとんど死人が出ず、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』はひとりも死人が出ませんでした。「見たことのある設定」とのレビューも散見された『楽園追放』ですが、王道エンタメに必要な要素を104分に凝縮した教科書のようなシナリオで、話作りのお手本のような一本です。
●岡田麿里……泣かせ上手
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『凪のあすから』『荒ぶる季節の乙女どもよ。』など、小規模な人間ドラマジャンルを得意にしている脚本家・岡田麿里さん。得意な作風を乱暴に表すると、メロドラマです。絶望エンドの虚淵さんとは対照的に、色々ありながらも最後には雨降って地固まるほろ苦ハッピーエンドがお決まりのパターンです。
派手な事件こそ起きませんが、表現が瑞々しく、感性の若さを感じます。『キズナイーバー』『ひそねとまそたん』もおすすめです。22年4月現在、シリーズ構成を担当した『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 特別編』が放送されています。
■実写でも活躍する脚本家も……
実写作品をメインにする古沢良太さんが手掛けたアニメ『GREAT PRETENDER』ビジュアル (C)WIT STUDIO/Great Pretenders
●古沢良太……コミカルとデフォルメ
古沢良太さんは基本は実写の人で、『コンフィデンスマンJP』『リーガル・ハイ』『相棒』などで有名です。同じく実写をメインフィールドにしている脚本家・坂元裕二さんが、実写ならではの淡々とした表現に終始しているのと対照的に、コミカルで誇張された表現が特徴。アニメの表現は、基本的に誇張とデフォルメの世界と言えます。そんな作風なので、古沢脚本とアニメの相性は抜群でした。
初のアニメ作品となった『GREAT PRETENDER』は予備知識無しで見たら実写畑の人が書いたものと思えないほど、とことんアニメ的な誇張表現の連発です。同作は浮世絵を思わせる原色主体の色使いで、立体感を消したデフォルメされた画面設計でした。大仰なセリフ回しや不自然な設定は古沢さんの特徴的なスタイルですが、それが画面のデフォルメ具合とマッチしており、もっとアニメの脚本を書いて欲しいと思わさせられます。
●小林靖子……マンガ実写化も成功させる職人
小林靖子さんはアニメ、特撮の分野で活躍するベテラン脚本家です。非常に多作であり、代表作は上げていくとキリがありませんが、近年の仕事で最も印象的なのは実写版『岸辺露伴は動かない』です。『ジョジョの奇妙な冒険』のエッセンスは残しつつ、『世にも奇妙な物語』と探偵小説を融合させたような新しい世界観に着地させていました。アニメ版『ジョジョ』のシリーズ構成を担当し、作品を知り尽くした小林さんならではの技ですね。
小林さんは多作かつ、手掛けた作品のジャンルもオリジナル、原作つき問わず多岐に渡るため、作風を一言で表すのは難しいです。筆者はこういうタイプの脚本家を、オーダー通りに仕事を仕上げる「職人」と呼んでいます。
同様にオリジナル・原作問わず様々なジャンルをこなす、吉田玲子さん(『デジモンアドベンチャー』『たまこラブストーリー』『ガールズ&パンツァー』など)、横手美智子さん(『カウボーイビバップ』『SHIROBAKO』『若おかみは小学生!』など)、大河内一楼さん(『コードギアス』シリーズ、『ぼくらの7日間戦争』『アイの歌声を聴かせて』)なども同じタイプの職人だと思います。実写、アニメ問わず商業脚本家で最も多いのは彼らのような職人でしょう。これらの脚本家たちは、平均点の高い仕事をしている人たちで、彼らを基準に見る作品を選べば、間違いは少ないのではないでしょうか。
(ニコ・トスカーニ)
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