『ストII』世代が体験した、驚きのアーケード事情 対戦は横並び、穴場はボーリング場…
マグミクス / 2022年4月12日 19時40分
■今では考えられない、『ストII』黎明期のアーケードゲーム事情
世界規模の大会が開かれ、数多くの人気シリーズが今も支持されている対戦格闘ゲーム。一大ブームを巻き起こし、このジャンルの知名度を一気に引き上げた立役者といえば、1991年に登場したアーケードゲーム『ストリートファイターII』(以下、ストII)に他なりません。
格闘家同士が己の技を駆使して戦い、勝利を目指す。その構図はゲームのなかだけでなく、プレイヤー同士の関係にも当てはまり、対戦プレイという遊びが一気に加速。友達同士で遊ぶこともありましたが、名も知らぬプレイヤー同士の対戦も頻繁に行われ、目の前にいる「誰か」に勝つ感覚は新鮮で刺激的な体験でした。
こうして対戦格闘ゲームは黄金期を迎え、一時期の熱が収まった後も人気ジャンルのひとつとして定着し、今現在に至ります。
『ストII』登場から数えると30年を超える歩みを刻んでおり、そのあり方は時代と共に変化し続けました。今では盛んなオンライン対戦がないなど、当時の環境とはまるで違う点も少なくありません。
そこで今回は、『ストII』現役世代が直接体験した、現代とは異なるアーケードゲームの対戦事情をお届けします。
●黎明期の『ストII』対戦は一触即発だった!?
現在の対戦格闘は、向かい合う2台の筐体を使った対面方式がほとんど。配置にもよりますが、対戦相手の顔を見る機会もないまま勝敗がつくことも珍しくありません。しかし、こうした対戦環境が整ったのは後の話です。
『ストII』が出始めた頃は、1台の筐体を共有する対戦スタイルが主流で、誰かがプレイしている脇に座ると、それが対戦の合図に。1台の筐体にふたりが向き合うため、物理的な距離はかなり短め。かろうじて触れあわない程度の、パーソナルスペースに入りまくりな距離感です。
これが友達同士ならいざ知らず、見知らぬ他人の乱入も多々。本来の意味とは異なりますが、一触するか否かの距離に誰かが来ると、対戦が即発する──勝敗とは別種の緊張感も伴う、独特な対戦環境でした。
■ゲームセンターに向かわない『ストII』プレイヤーの行き先とは?
画像はWii U バーチャルコンソール版『ストリートファイターII ザ ワールド ウォーリアー』(カプコン)
●筐体に積み上がる50円玉
一般的なアーケードゲームは、敵にやられてゲームオーバーになるか、クリアしてエンディングを見ると、1回のゲームプレイが終了します。『ストII』の場合、そこに「対戦で負ける」も加わりますが、基本的には同じルールです。
ですが、ゲームが終われば席を空ける……かどうかは、一概に言えません。というのも、あらかじめ次回以降のプレイに使う50円玉や100円玉を何枚も筐体に積み上げ、「このプレイが終わった後も続けて遊びます」と意思表示をする慣習が当時ありました。
「連コイン」とも呼ばれるこの行為自体は、明確なルールとして提示している店舗が現在もあります。また、連コインを禁止する店も存在し、店舗ごとにそのルールは異なります。
しかし当時は、店がルールを定めること事態が珍しく、プレイヤー間で生まれたルールが暗黙の了解的に広がっていました。そのため、50円玉を積み上げて台を占領する人もいれば、1プレイで交代を迫るプレイヤーもおり、ルールの違いでぶつかることも少なくありません。
連コインを続ける相手に勝負を挑み、負かして追い出すこともできますが、相手が格上だとただ硬貨が吸われるだけ。また、対戦が出来ないひとりプレイ専用筐体もあり、その場合は指をくわえて待つか、諦めて別の店に行くかの2択のみ。初心者~中級者プレイヤーは、存分に遊べる環境探しにも苦労したものです。
ちなみに連コインだけでなく、プレイの順番待ちを主張するため自分の50円玉を台に置く文化もありました。知らない相手がプレイしている最中に、その筐体に硬貨を置く。順番待ちが複数いればその人数分だけ硬貨が並ぶ光景は、今思えばかなり特殊だったかもしれません。
●『ストII』を遊ぶならボーリング場へ行け!
当時の『ストII』人気は凄まじく、順番待ちも当たり前。そのため、腕を磨くために練習したい場合、対戦が飛び交うゲームセンターは不向きです。また、仲間内だけで遊びたい時もあまり向いていません。
人気絶頂の『ストII』を、友達だけで気軽に楽しみたい──そんな時に向かう先は、なんとボーリング場でした。当時のボーリング場は、レーンが空くまでの時間も楽しめるようにアーケードゲームを設置するところが多く、店によっては『ストII』もあったのです。
しかもボーリング場は、風営法に縛られるゲームセンターと違い、24時間営業も可能。成人であれば、ボーリング場という裏技で、深夜でも『ストII』を楽しめました。
こうした黎明期ならではの苦労は、店舗側が環境を整えたり、家庭用版が出て存分に遊べるようになるなど、時代の変革とともに移り変わり、現在の形に至りました。今の便利さを噛みしめつつも、当時の悪戦苦闘の日々をどこか懐かしく思い出します。
(臥待)
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