マンガに登場する超「金持ち」キャラたち！物語に欠かせない彼らの大事な役割とは？

■どんな設定も可能にする圧倒的な「お金」の力

　壮大な世界観で展開していくストーリーやド派手な演出など、読者にさまざまな「夢」を見せてくれるマンガ作品。しかし、その物語を成り立たせるためには「夢」や「想い」だけでは足りないところがあります。それが「お金」です。主人公の前に立ちはだかる難解な状況を作るためには、たとえマンガのなかだろうと、豊富な資金力とそれを惜しみなく提供してくれる「金持ち」が必要なのです。今回は、そんなマンガのストーリーで重要な役割を担う超「金持ち」キャラを紹介します。

●『賭博黙示録カイジ』兵藤和尊

　まずは『賭博黙示録カイジ』をはじめ、「カイジ」シリーズに登場する兵藤和尊です。「帝愛グループ」という莫大な資金力を有する巨大企業のトップであり、カイジにとっての宿敵となります。物語は、カイジがこの「帝愛グループ」からの借金を返すために命を懸けたギャンブルに挑むことから始まりますが、その元凶がこの兵藤会長です。人が地に落ちてゆく姿を見ることに喜びを感じるえげつない性格をしており、その欲を満たすために部下たちを使って、カイジら債務者を「死」のギャンブルへ招待します。

　その内容は、豪華客船で大掛かりなカードゲームをしたり、ビルの間の鉄骨を通して人を渡らせたりと、とにかくお金と人手が掛かるものばかり。さらには敗れた者たちを地下強制労働施設に送ったり、やり過ぎな罰ゲーム（最悪の場合は死）を与えたりするなど、法律や倫理さえも無視しています。「ざわざわ」という擬音が現すスリリングなギャンブルの世界観は、この酔狂な「金持ち」がいるからこそ担保されているといえるでしょう。

●『グラップラー刃牙』徳川光成

　続いては「刃牙」シリーズに登場する徳川光成です。徳川財閥十三代目の当主であり、バキが強敵と戦う地下闘技場の支配人でもあります。その権力は、政治家や警察組織に対しても絶対的な影響力を持つフィクサー的な存在です。

　強者同士の戦いを見ることに強い執念を持ち、良い戦いが期待できそうな人物であれば、表舞台の実力者だろうが裏世界のはみ出し者であろうが、手段は選ばずに戦いの場を提供します。ときには、自分の手のかかった科学者たちを使って伝説の剣豪・宮本武蔵をクローン人間として復活させるという離れ業も。戦う相手のインフレ化が止まらない「刃牙」シリーズにおいて、彼が持つ莫大な資金力、権力、人脈、倫理やモラルを超えた発想は必要不可欠です。

■事件の影に「金持ち」あり？

あいちゃんが大活躍のDVD『TVシリーズ クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ イッキ見20!!! 第6のかすかべ防衛隊?わたくしが酢乙女あいですわ編』（双葉社）

●『クレヨンしんちゃん』酢乙女あい

　続いては『クレヨンしんちゃん』に登場する、あいちゃんこと酢乙女あいです。しんのすけに想いを寄せる5歳の女の子で、黒磯というSPを常に従えた超お金持ちのお嬢様。その発想もかなりブッ飛んでいて、しんのすけと海で遊びたいというためだけに巨大プール施設を建設させたり、雪山で男女が遭難して絆が深まるというシチュエーションを体験したいという理由だけで雪山の特別な装置を作ったりしています。

『クレヨンしんちゃん』といえば、普段、野原家での家族の話や、幼稚園での友達同士の話など、日常的なテーマが主に描かれますが、非日常的でダイナミックな話が展開されるときにはあいちゃんが発端となることが多いです。

●『こちら葛飾区亀有公園前派出所』中川圭一

『こち亀』の中川圭一は、スポーツや勉強は超一流、顔はイケメンで性格も爽やか、世界的大企業・中川財閥の御曹司という完璧な男。そんな彼は、金儲けのためなら悪魔的才能を発揮する両津勘吉にとって、なくてはならない存在です。両津といえば、売れそうな商品を思いついたら投資を惜しまずにすぐに量産体制に入る「勝負師」ですが、普通ならここで金融機関などから融資を受けるためにひと苦労するところ……この過程を中川に頼むことで軍資金と設備、人手を一気に補うことができます。

　あるエピソードでは「亀有ケーブルテレビ」というケーブルテレビの加入者を増やすために中川財閥のコネを使って、海外ドラマの放映権を買い取るという荒業を使ったこともありました。『こち亀』のダイナミックな展開において、中川という存在は重要なスポンサーです。

●『名探偵コナン』鈴木園子

　最後は『名探偵コナン』に登場する鈴木園子です。コナンの元の姿である工藤新一、毛利蘭と同級生の彼女は、鈴木財閥という大企業のお嬢様。好奇心が強く、いろいろなコネも持っているため、コナンたちをよく流行の店やテーマパークに誘ってくれ、そこで事件が起こることも多々あります。また「劇場版」シリーズなどで起こる大規模イベントや、パーティでの事件も、園子が誘ってくれたのがキッカケということも多いです。コナンを活躍させるためのきっかけとして、なくてはならない存在となっています。

　ファンタジーな展開を実現するために、「お金」や「コネ」という説得力を提供してくれる「金持ち」キャラ。読者に「夢」を与える主人公の活躍の影には、彼らの存在があることも忘れてはいけません。

（吉原あさお）