10周年『ファイアーエムブレム 覚醒』存続が危ぶまれていたシリーズに新風!
マグミクス / 2022年4月19日 6時10分
■シリーズ存続をかけて作られた『FE』の新境地
どんな媒体やコンテンツであれ、一般的にシリーズものは作品数を重ねると、どこかのタイミングで方針転換やテコ入れが余儀なくされます。この傾向はTVゲームでも同じで、作品ごとにシステム調整や大幅なバージョンアップが図られるのは日常茶飯事。その結果、人気を保ったまま隆盛を極めることもあれば、支持を失って徐々に衰退していく場合もあります。
この記事で取り上げるニンテンドー3DS用ソフト『ファイアーエムブレム 覚醒』(以下、FE覚醒)も例に漏れず、任天堂が誇るシミュレーションRPG「ファイアーエムブレム」(以下、FE)シリーズの大きな転換点となった作品です。本作は存続そのものが危ぶまれていた「FE」シリーズに変革をもたらすべく、(当時の)ファイアーエムブレム集大成として市場に送り出されました。
『FE覚醒』が日の目を浴びたのは2012年の4月19日。スーパーファミコン版のリメイクにあたる前作『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄』(ニンテンドーDS)から約2年後に発売となりました。
本作の舞台は、神竜ナーガと邪竜ギムレーが互いに影響力を及ぼす「東の大陸」。何らかの理由で記憶を失い、あてもなく大陸を彷徨っていたプレイヤー(マイユニット)でしたが、イーリス聖王国の王家に生まれた「クロム(CV:杉田智和)」と出会い、彼が率いる自警団へ加わることを決意。以降、国家間の騒乱や正体不明の「屍兵」に襲われながらも、運命を切り開くべく戦乱へ身を投じていきます。
単に『覚醒』とだけつけられた本作のタイトル名は、副題(例:暗黒竜と光の剣)が多くみられた「FE」シリーズの過去作と比べるとなかなかに異質です。作中の舞台設定をはじめ、キャラクターデザイン周りも刷新されたほか、任天堂では初となる有料ダウンロードコンテンツの実装も大きな話題を呼びました。
また、開発スタッフがシリーズ集大成と銘打った通り、ゲームシステムの大部分を過去作から踏襲しつつ、シリーズに新風を巻き起こすべくブラッシュアップを施されているのも特徴です。攻防にまつわる直接的な恩恵を受けられるようになった「デュアル」。ストーリー進行に左右されず、戦闘を繰り返してユニットを育成できる「フリーマップ」……などなど、過去作の財産を生かした上でゲームシステムの根幹が組み立てられていました。
ちなみにキャラクターボイスが本格的に採用されたのも『FE覚醒』から。過去作でもイベントシーン等で一部ボイスが流れましたが、『FE覚醒』以降は戦闘シーンを含め、よりキャラクターボイスの存在感が強まっています。
■『FE覚醒』が『ときめきエムブレム』と呼ばれた理由
『FE覚醒』が過去作から取り入れたエッセンスのうち、とりわけインパクトの大きかったのが「結婚」システムです。こちらは隣接ユニット同士のパラメータ向上をうながす「支援」システムに基づくものであり、結びつきを強めれば該当ユニット同士が恋仲となって子供が生まれる……といった仕様。作品によって多少の違いはあれど、「FE」シリーズを象徴する名システムと言っても過言ではありませんでした。
その結婚システムが『FE覚醒』にて数作ぶりにまさかの復活。ユニット同士の結婚とは別に、プレイヤー(マイユニット)と結婚した場合のみ、そのユニットの特別な一枚絵が出現しました。さらに、通常プレイでは絶対に聞けないであろう甘いセリフ(ボイス付き)も楽しむことができたのです。
作中に登場する男女ユニットは計40人以上。それぞれの一枚絵と専用セリフを回収しようものなら周回が必須となり、ファンの間では本作の結婚システムを指した『ときめきエムブレム』という言葉まで生まれています。
そのうえで、「結婚後に生まれた子供が未来からやって来る」というSFチックな展開も実装済み。時間軸を越えた子供たちは成長後の姿で現れるため、「親子ユニットで共闘させる」といった過去作には見られなかったプレイスタイルが実現しました。
長年の伝統をもとに新境地を開拓し、結果としてシリーズ存続を成功させた『FE覚醒』。本作が「FE」に及ぼした影響は今後もファンの間で連綿と語り継がれていくことでしょう。
(龍田優貴)
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