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シュールな特撮ヒーロー『レッドマン』50周年 「赤い通り魔」と呼ばれ、現代で人気が爆発

マグミクス / 2022年4月24日 6時10分

シュールな特撮ヒーロー『レッドマン』50周年 「赤い通り魔」と呼ばれ、現代で人気が爆発

■第二次怪獣ブームのなかでも異質な存在?

 本日4月24日は半世紀前の1972年に特撮ヒーロー作品『レッドマン』が放送開始した日。つまり今年で50周年となります。当時の話題から21世紀に入ってからのブレイクまで、『レッドマン』が歩んだ道を振り返ってみましょう。

 本作は、一般から募集された子供たちが参加するバラエティ番組として毎日(月〜日)放送していた『おはよう! こどもショー』内のいちコーナーとして製作された作品です。この『おはよう! こどもショー』では、ロバくんやガマ親分などの人気キャラを生み、司会を担当していた海老名美どりさんが共演をきっかけに体操のおにいさんの峰竜太さんと結婚するなど、話題の多い番組でした。

 そのなかで『ウッドペッカー』や『トッポ・ジージョ』、『たまげ太くん』といった5分程度のショートアニメのように、番組の1コーナーとして放送されたのが本作『レッドマン』です。

 本作は、第二次怪獣ブーム誕生のきっかけとなった『ウルトラファイト』の新規撮影部分と同様に、ミニチュアのない屋外でヒーローと怪獣が戦うというコンセプトで製作されました。製作はウルトラシリーズでおなじみの円谷プロです。

『レッドマン』という名称は、それまでにもウルトラシリーズの仮題として使われてきた名前ですが、本作で初めて正式にヒーロー名として採用されました。戦う怪獣は前年に放送していた『帰ってきたウルトラマン』で実際に撮影で使われたものを中心にしつつ、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』のアトラクション用怪獣の改造、時にはウルトラシリーズ以外の作品からも使用しています。

 本作が後年、シュールな作品として評価された要因のひとつが、「ドラマ性の欠如」でした。たとえば前作にあたる『ウルトラファイト』ではプロレス風の解説で作品の流れを作っています。次回作にあたる『行け!ゴッドマン』では人間が登場してセリフがあるなど、ドラマ性が若干強化されていました。

 しかし、本作では主人公のレッドマンが怪獣を見つけて戦いを挑み、それを倒すまで延々と戦う場面だけで終始しています。その間、流れるBGMも重苦しいものが多く、一種独特の世界観を作っていました。

 これには理由があります。それが「怪獣おじさん」の存在でした。本放送時はナビゲーターとして怪獣おじさんが解説して、本作のストーリーテラーの役目を果たしています。この解説が、ドラマ部分の味付けを大きく担っていました。

 このような理由もあって、筆者を含む当時の子供たちは、ごく普通のヒーロー番組のひとつとしてとらえており、現代のように『レッドマン』を特殊な存在と評価していたわけではありませんでした。詳細は後述しますが、昨今のよな評価は目からうろこでした。おそらく、そこまで真面目に見ていなかったのかもしれません。

 あまり集中して本作を観られなかった理由。それは、当時の子供にしか体験できなかった本作の放送形態にありました。

■ブレイクの要因は近年の「視聴形態」?

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 本作は、もととなる『おはよう! こどもショー』の放送時間が月曜から土曜の朝7時25分から8時15分の枠だったので、その間のほぼ決まった時間に放送されていました。この時間の子供といえば、普通は学校に行く支度や登校時間、あるいは教室に入っている時間です。

 筆者の場合、『レッドマン』を観て怪獣が死んだのを確認してから小学校に向かい、到着すると始業時間ギリギリでした。そんなあわただしい状況で、TV番組を楽しんで見て記憶していることは無理というもの。あえて現代風に言えば、毎日出かける前のTVで星座占いを見ても、翌日には忘れているのと同じことでしょう。朝のあわただしい時間に見た作品をようやく冷静に評価できたのは、後年の落ち着いた環境で視聴した時だったわけです。

 本作の再放送は「放送形態」の都合もあって行われず、フィルムも長年見つからなかったことで「幻の作品」とされていました。それが1990年代に偶然発見され、1996年にレーザーディスクで初めてソフト化される流れになります。もっとも、この時も大きな話題にはなりませんでした。

 最初のネット配信は2012年で、「ニコニコ動画」で公式に配信されます。この時、レッドマンの戦いに異常さを感じる人が多く現れ、「赤い通り魔」と呼ばれるようになりました。そして、フィーバーとも言える状況になったのが、2016年にYouTubeで配信された時だと言われています。

 掛け声や必殺技以外の言葉を発しない。逃げる怪獣でも「レッドファイト!」と言って戦いを仕掛ける。倒した怪獣は爆発もせず死体として残る。敵に刺さったレッドアローが墓標に見える。空を飛べるのに徒歩で帰っていく。……そういった現代の感覚とは違う部分が、ツッコミとして現在の視聴者層に受け止められたわけです。

 当時はヒーローが敵を倒すのは問答無用。あのウルトラマンでさえ、たびたび残虐ファイトで怪獣を倒しています。また、前述した部分のほとんどは時間と予算の都合を考えると、当然の処置でしょう。

 しかし、21世紀の感覚ではズレていたことは否めません。この感覚のズレと、いわゆる「ネット民」という新しいタイプの視聴者層が、本作の魅力を現代風に盛り上げました。例えるなら長い何月をかけて熟成されたワイン。それが本作『レッドマン』だったわけです。

 その後、『レッドマン』のTシャツ、LINEスタンプが発売され、当時の資料を展示したイベントなど、当時ではありえなかったほどの人気を得ることに成功しました。さらに、この勢いはとどまることを知らず、2018年にアメコミ版『ゴジラ』を手がけたマット・フランク氏によるアメコミ版『レッドマン』が発売されています。

 近年では2020年に放送された『ウルトラマンZ』の第13話で、ウルトラマンゼットベータスマッシュの外見がレッドマンと似ていたことから、カネゴンがその姿を見て「赤いアイツだ!」とおびえているシーンがありました。ちなみに両者には関連性はなく、似たのは偶然の一致だそうです。

 リメイクや新作を望むファンの声も多い作品ですが、あの時代ならではの空気感は再現が難しそうです。むしろ近年、ファンにはおどろきのゲストキャラが登場する『ウルトラギャラクシーファイト』のような舞台で登場してほしいものです。もちろんセリフなしで……って、『ゴルゴ13』みたいになりそうですね。

(加々美利治)

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