「アニメ聖地」生んだ『究極超人あ〜る』OVA 地元出身者が見た「まさかの展開」とは
マグミクス / 2022年5月8日 15時10分
![「アニメ聖地」生んだ『究極超人あ〜る』OVA 地元出身者が見た「まさかの展開」とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_88452_0-small.jpg)
■実在の駅や町を描いた「聖地巡礼アニメ」
1985年から1987年にかけてゆうきまさみ先生が「週刊少年サンデー」で連載していた『究極超人あ〜る』は、近年でも新作マンガが描かれ、可動フィギュアシリーズ「figma」でも商品化される、伝説のマンガ作品です。
その『究極超人あ〜る』唯一のアニメ化作品として1991年にリリースされたOVA(オリジナルビデオアニメ)は、74分という短い時間のオリジナルエピソードでありながら、原作の雰囲気を余すことなくギュギュッと詰め込んでいました。
なかでも一番の注目ポイントは、実在の駅を巡るスタンプラリーを描いたことでした。しかも、ゴールの長野県伊那市に至る飯田線のルートには、筆者の出身地である駒ヶ根市も含まれているのです。今回は、田切駅と伊那市駅の間に位置する駒ヶ根市出身の筆者が、OVAを見た当時の感想と、アニメ聖地として注目を集めている地元の「今」を紹介します。
■山本正之さんの楽曲「飯田線のバラード」が心に染みる
OVA版『究極超人あ〜る』の時系列は、原作でいうところの最終回を迎えた後のこと。光画部を困らせることに執念を燃やす元・生徒会長でお嬢様の「西園寺まりい」が、実家が経営する旅行会社を通じて「達成不可能」なスタンプラリーを企画したところからはじまります。
期日までにゴールの伊那市駅に到着すれば旅費がタダになるということで、「あ〜る」たち光画部の面々は何も知らずスタンプラリーにチャレンジするわけですが、行き当たりばったりの光画部OB、鳥坂さんのせいで道中はトラブルばかり! 彼らは無事に東京から長野県伊那市まで辿り着けるのか……?
原作では「N県の昇天峡にある」と濁されていた「山田さん温泉」が、作中では長野県飯島町の田切にあることが言及されたり、下山村駅から伊那上郷駅までの路線を徒歩でショートカットする「下山ダッシュ」にチャレンジしたりするなど、ネタの宝庫としてファンに愛されています。
特に「下山ダッシュ」は、実際にチャレンジした人の動画が今なお投稿されており、そこからも本作の人気のほどがうかがえます。
また昭和アニメで数々の楽曲を歌唱してきたシンガーソングライターの山本正之さんが作詞・作曲・歌唱する「飯田線のバラード」も、のんびりとした曲調に癒やされる、とても素敵な楽曲でした。
■地元出身ライターが実際に鑑賞して驚愕…
2018年に出版された、『究極超人あ~る』31年ぶりの最新刊・第10巻(小学館)
「え? 駒ヶ根はスルーなの!?」
筆者が本作を視聴したのは、まさにOVAがリリースされた1991年のこと。まだVHSビデオテープの時代です。スタンプラリーのゴールが伊那市ということは、当然、我が故郷の駒ヶ根市にも降り立つはず!……そんな期待に胸を膨らませてビデオデッキにVHSをセットしたのでした。
ちなみに駒ヶ根市は伊那市に負けない規模の、地元ではわりと大きな町です。絶対的に負けていると思うのは映画館がないことくらい。しかしいざアニメ本編を視聴してみると、駒ヶ根駅にはスタンプが設置されていない様子……。
「あれ? いやいやいや……。開始1分で判断するのはまだ早い。それでも何か触れることはあるだろう」
しかし物語は進んで1時間ほどが経過。光画部の面々は、なぜか駒ヶ根市のわりと手前の「田切駅」で下車してしまいます。なぜならそこには「山田さん温泉」があったからです。
これには筆者も、作中の「西園寺まりい」や光画部部長「天野小夜子」も「なんでそこで降りた?」とビックリ。
ちなみに田切駅以降は、伊那福岡、小町屋、駒ヶ根、大田切、宮田、赤木、沢渡、下島ときて伊那市駅にたどり着きます。劇中では残り約1時間で伊那市まで行かなければならないのですが、そのまま電車に乗っていれば余裕でした。
さらに驚いたことに、光画部の面々はそこから「あ〜る」の自転車「轟天号」に10人乗りして伊那市へ向かおうとします。
劇中では街並みが描かれているので、どうやら駒ヶ根市に入ったような感じはするのですが、そこから一気にルートを外れて田園地帯へ。
気づけば高速道路(中央自動車道)に迷い込み、どうやら伊那市を通り過ぎて岡谷あたりまで爆走した様子。そこから「高遠」の地名が出てくることから、彼らはUターンして高遠の山道を引き返してきたことがうかがえます。
しかし高速に入ったあたりから筆者は「ここどこ?」状態。劇中ではそんな「視聴者」の気持ちなどどこへやら。さらに天竜川を渡って伊那市駅へと突っ込んでいきます。
……もう、わけがわからないよ。
しかも、駒ヶ根市の街並みらしい街並みも登場せず、親しみある田切と伊那市は見られたものの、複雑な気分でした。
■現在は「アニメ聖地」としてファンに愛されて…
原作マンガ『究極超人あ〜る』第1巻(小学館)
現在、田切駅には『究極超人あ〜る』ゆかりの地として、「アニメ聖地」であることを記した記念碑が建てられています。発端は1993年にファンが「田切ネットワーク」を結成したこと。年に2度、感謝の意味を込めて田切駅の掃除などをしていました。
その後、2012年に伊那市役所の自転車部が、田切ネットワークの支援を受けて自転車イベントを実施。田切駅から伊那市まで走破するという劇中再現イベントは好評で、以降も毎年開催されることとなりました。
そして2018年、自転車イベントを企画した伊那市職員が発起人となり、田切駅に記念碑を設置することが決まったのです。記念碑の設置に際しては、田切駅の近くにある聖徳寺さんの土地を無償で提供してもらったとのこと。
今でも田切駅には、「あ〜る」のトレードマークである、日の丸扇子、学生服、ゲタ、轟天号のイラストとともに「アニメ聖地巡礼発祥の地」と刻まれた記念碑がファンを待っているそうです。
そして我が駒ヶ根市といえば、2018年に放送されたアニメ『ゆるキャン△』の第9話「なでしこナビと湯けむりの夜」で、ついに地元の光善寺(わんこ寺)が登場! 個人的に、ようやく「悲願達成」した気分でした。
さてそんな伊那市も駒ヶ根市も新宿発の高速バスで1本の場所にあるので、ご興味があるかたは、ぜひ伊那・駒ヶ根・田切を聖地巡礼してみてください! 名物の五平餅やソースカツ丼がお待ちしております!!
(気賀沢昌志)
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