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マンガからの改変が絶妙な実写映画4選 ビジュアル、バトル表現、脚本に光る工夫

マグミクス / 2022年4月29日 11時50分

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■マンガから映画にするには工夫が必要

 22年4月19日に『ゴールデンカムイ』の実写映画の製作が発表され、ファンを中心にいろいろと話題を呼んでいます。マンガを映画にする際には、上映時間の都合などもあり、どうしても原作との違いが生じてしまうもの。今回は、マンガとはまた「別物」になっていることを前提として、それでも原作を映画にする際の「改変」が上手くいっている実写映画を振り返ります。

●『ピンポン』の「キャラビジュアル改変」

 松本大洋先生の代表作『ピンポン』は、松本先生の平面的でデフォルメされた絵柄とマジックリアリズム的な表現が特徴で、湯浅政明監督のアニメ版はそのデフォルメされた表現に対し、アニメならではのデフォルメされた表現で迎え撃っていました。

 逆に、それ以前に作られた2002年の実写版『ピンポン』は、あくまでも生身の俳優が演じることを念頭に置き、原型を残しつつギリギリ現実にいそうなレベルにまで、キャラクターのビジュアルを改変しています。ペコのおかっぱ頭や海王学園が全員スキンヘッドなど原作に寄せるのは極めて特徴的な部分に留め、他のキャラクターについては髪型すら無理に再現しようとしていません。脚本の宮藤官九郎さんは舞台畑の出身で、今流行りの「2.5次元舞台」のようなテイストになっていました。

 内容は概ね原作に忠実ですが、カットされたエピソードもいくつかあります。原作で非常に印象的だった今後の方針をかけてスマイルと小泉先生が試合をする場面はカットされた大きな部分のひとつですが、カットによって流れが損なわれている印象あまりなく、そもそも原作が全55話しかないので、114分にまとめられた上映時間でも物足りなさは感じませんでした。

 映像的に出色なのが試合の場面で、生身の肉体の動作など、実写でしか得られない躍動感を感じることができます(ピンポン球の動きは多分ほとんどCGですが)。試合の場面については、アニメと違った魅力が感じられると思います。

●『アイアムアヒーロー』のゾンビアクション映画としての改変

 花沢健吾先生による、異色のゾンビマンガの実写映画『アイアムアヒーロー』。同作の特徴はゾンビが突如増殖する伝統的なゾンビパニックものであるにもかかわらず、主人公の内面描写が非常に多く、内省的な要素を兼ね備えていることです。主人公の年齢も30代半ばと高めに設定されており、少年誌にはない良い意味で青年誌的な青年マンガでした。

原作では単行本1巻がほとんど丸々主人公の日常描写でしたが、映画では登場人物のバックグラウンド描写を大胆に刈り取り、サバイバルサスペンスとしてコンパクトにまとめています。原作とは別物ですが、これはこれで効果的な改変だと思います。それでいて、日常からゾンビパニックへ変貌する原作の雰囲気はしっかりと残っているのも見事です。

 映画で描かれているのは原作では半分弱程度の部分までで、ショッピングモールから脱出するところがクライマックスになっています。ここで原作にも登場する「陸上ZQN」をゾンビ映画では珍しいラスボス的な位置づけに昇格させ、視覚的にも盛り上がる展開にしているのも見事です。

■映画としての完成度のためにはストーリーは削るべき?

大ヒットし、シリーズになった実写版『るろうに剣心』 画像は『るろうに剣心 最終章 The Final』 Blu-ray(アミューズ)

●『るろうに剣心』シリーズのビジュアルとバトル描写の工夫

 和月伸宏先生の人気マンガ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の実写映画は大ヒットし、「最終章」まで5作品が作られました。

『BLEACH』(ルキアは違いましたが)にしても『鋼の錬金術師』にしても『ニセコイ』にしてもそうですが、マンガを実写化した映画に、「原作のビジュアルに無理に寄せすぎ」という印象を受けることが多くあります。「お金のかかったコスプレPV」として割り切って見るなら楽しめるかも知れませんが、「映画」として考えるとあまりにも実在感がなすぎて違和感につながるのかも知れません。

 一方の実写版『るろうに剣心』は、キャラのビジュアルは原型を留めつつも、ある程度実写の「時代劇」としてリアルな範囲に調整されています。

 衣装のデザインもおおむね原作に忠実ですが、汚れや着古した加工をしっかりと施し、実在感があります。剣心の十字傷にも生傷感があり、実写としてギリギリの実在感を感じるレベルまでビジュアルを落とし込んでいました。また、刃と峰が逆になった「逆刃刀」は相手の動きを止める鈍器のように扱われており、ヒーローがコスチュームを着て戦うマーベル映画のような、ちょうどいい具合のリアリティの武器になっています。「時代劇」の範疇に収めるため、戦闘の時に技の名前を叫ばないようにしているのも良い改変だと思います(オリジナルアニメの『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 星霜編』でも、技の名前を叫ばない演出が採用されていました)。

 上映時間内にまとめるために、原作を忠実に再現し過ぎなかったのも、一部に議論はありましたが、映画作品としては「妥当な判断」と言えるでしょう。

●『バクマン。』原作からのキャラの整理とマンガ愛あふれる終わらせ方

 漫画家を主人公にした『バクマン。』の実写映画は、登場人物を中心に大きく話を「整理」しています。原作の『バクマン。』は全176話の長編ですが、映画は120分。1本の映画にまとめるために、ヒロイン・小豆以外の名前のある女性キャラは全員カットし、編集部のキャラクターはふたりの人物に役割を統合しています。

 多くのキャラクターを削除したことで群像劇的な要素と恋愛要素は希薄になりましたが、主人公ふたりにフォーカスしたドラマとして、スッキリとテンポよくまとまっています。176話もあるマンガを120分に収めるのですから、取捨選択はどうしても必要になります。物語構成は原作とは「別物」になってしまいますが、効果的な処理の仕方でしょう。

原作では大量の文字情報で処理されていたマンガ制作の過程が、映画らしくモンタージュで処理されているほか、プロジェクションマッピングを使った映画ならではの演出もあったのもポイントが高いです。高校卒業後も続く原作とは違い、「俺たちの戦いはこれからだ」的なエンディングにしたのも、いかにも少年マンガ的でジャンプ作品への愛も感じます。また、「マンガ愛」あふれるエンドロールも、好評を得ました。

 マンガでも「お仕事もの」はもともとフィクション度が低い(現実との地続き感が強い)からか、実写との相性が良いです。学園ドラマでもありますが、酪農を扱ったある種の「お仕事もの」である『銀の匙 Silver Spoon』も、実写版ならではの魅力が感じられる作品でした。

(ニコ・トスカーニ)

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