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パロディでしか見ない?マンガの「お約束」の原点 パンをくわえて走る元ネタは?

マグミクス / 2022年5月9日 6時10分

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■「食パンをくわえて登校」の元ネタは?

「いっけな~い!遅刻遅刻ぅ~!」

 誰もが一度は見聞きしたことがあるであろう、このセリフ。聞いた途端、「食パンをくわえた少女」の姿が思い浮かびます。パロディとしてもこすられ続けている、もはやマンガの「お約束」の代表格です。

 ほかにもマンガには、こんなお約束といえるセリフ・描写が他にも多数存在しています。この記事では、そんなお約束の用例とともに、「パロディでしか見ないが、元ネタは何か?」の部分まで可能な限り掘り下げて考察します。

●食パンをくわえた遅刻少女

 まずは前述の「食パンをくわえた遅刻少女」。「マンガで見るけど現実ではまず見ない」でお馴染み描写です。少女マンガ、というかいろんなマンガの「お約束」ですが、もはやこすられすぎて、ネタ的に使用されているイメージの方が強いのではないでしょうか。

 1996年放送『新世紀エヴァンゲリオン』の最終回でも、綾波レイが「食パン少女」と化していました。しかし、遅刻の描写としてパンをくわえて走るというのは、あらためて考えてみると画期的です。

 この描写を有名にしたと言われているのが、1989年46号からビッグコミックスピリッツで連載されていた『サルでも描けるまんが教室』(著:相原コージ、竹熊健太郎)です。作者をモデルにした主役のひとり・竹熊健太郎が少女マンガにおいて「ただ一つ」と断言する「ウケるストーリー展開」として、「主人公が『ちこくちこく』と叫びながらあわてて家をとび出す」「このとき 主人公はかならずトーストを口にくわえている」という例を声高に叫びました。しかし、これは誰もが「あ~確かに」と思う「お約束」としての紹介であり、この描写は少女マンガというかマンガ全般によくある描写として、以前から定着していたことになります。

「食パン少女」の調査を長年行っているデザイナー・ほうとうひろし氏のTwitterに寄せられたツイートによると、マンガのなかで見つかった最古は、なんと1962年の『サザエさん』の一コマ。ワカメが食パンをくわえ、焦りながら「いってきまーす」と出かけています。

 そして、このほうとうひろし氏の調査に反応して、今度は映画作品でさらに古い目撃情報も投稿されています。それが、アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、日本では1948年に公開された名作映画『我等の生涯の最良の年』(ウィリアム・ワイラー監督)。こちらは少女ではありませんが、見てみると確かにメインの登場人物、アル・スティーブンソン(演:フレドリック・マーチ)の息子・ロブ(演:マイケル・ホール)がトーストをくわえ、急いで学校に向かうシーン(映画が始まって56~57分頃)があります。

 この描写を漫画家の先生のどなたかが真似したのかは定かではありませんが、80年以上の歴史があると考えると、パロディの見え方も少し重みが変わってくるのではないでしょうか。もちろん現実的に不可能な描写ではないので、パン食が日本に普及し始めたころに誰かが実際にやっていた可能性もありますが。

■ネット上でもネタにされている「四天王最弱」の元ネタは?

月が落ちてくる場面で終わる衝撃のラストを迎える『幻魔大戦』2巻(講談社)

●「奴は○○のなかでも最弱…」

 バトル系マンガで、やっと敵の幹部を倒したと思ったら……という風に、さらなる強敵がいることを匂わせるために使われるのが、このセリフ。ネット上でネタとしてよく見られるのは、「○○がやられたようだな……」「ククク……奴は○○四天王のなかでも最弱……」「○○ごときに負けるとは○○の面汚しよ……」というフォーマット。コピペやアスキーアートでネタとして広まり、有名になっています。

 このフォーマットの元ネタは、『ギャグマンガ日和』に登場する打ち切られてばかりの漫画家・夢野カケラ先生による劇中マンガ「ソードマスターヤマト」の一幕です。しかし、これもパロディとして描かれたセリフであり、それ以前から「ありがちな展開」として認知されていたことになります。

 その歴史は古く、『北斗の拳』のジャギが北斗四兄弟で最弱扱い、『キン肉マン』でも「7人の悪魔超人」でステカセキングが実力最低認定され、『ジョジョの奇妙な冒険』第2部では最初に発見された「柱の男」サンタナの能力が、のちに登場するカーズたち3人に比べて数段劣っていることが明らかに……という風に似たような展開が描かれてきました。

 ただ、読者に強くイメージを植え付けた作品は、『魁!!男塾』のようです。例えば、「天挑五輪大武會編」の男塾vs狼髏館(ろうろうかん)戦において、狼髏館の先鋒・首天童子(しゅてんどうじ)のことを、次鋒・鎮獰太子(ちんどうたいし)が未熟者扱いしていました。その他、、宝竜黒蓮珠(ぽーろんこくれんじゅ)戦の回でも、一番手・張鳳(チャンホー)が倒されたのち、「我等 宝竜黒蓮珠にあって一番の小物…」と言われる場面が登場。このような流れが定番化しており、流行を生み出したと思われます。

●「俺たちの戦いはこれからだ!」

「俺たた」とも呼ばれる、マンガの最終回で定番のオチ。打ち切り作品に多く見られる例で、無理やり話をたたもうとするよりは、まだ続くことを思わせるこのラストは、潔いと言えるかもしれません。

 有名どころだと、84年から1985年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載された『男坂』より、「オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな このはてしなく遠い男坂をよ…」というラスト。セリフは異なるものの、作者の終わらせたくないという思いが伝わってきます。その思いが通じてか、2014年6月に「週プレNEWS」にて、連載が再開されました。

 最近でいうと、同じく「週刊少年ジャンプ」で2021年に連載されていた『レッドフード』の最終回も、このエンドです。本作は、「あえて」というニュアンスもありますが、「俺たちの戦いはこれからだ」というそのままのセリフで終わったため、話題となりました。

 そして、「元ネタ」と呼べるほど古いものを挙げると、1982年終了の『コマンダー0』があります。ラストのセリフは「いくぜ!闘いはこれからだ!!」であり、かなり「俺たた」に近いです。より古いものだと、1970年終了の永井豪先生のマンガ『ガクエン退屈男』があります。こちらのラストは「たたかいだ いくぜ!」で、セリフとしては若干離れますが、ニュアンスとしては同じです。

 似たニュアンスのオチで、さらに古いものをさかのぼると……1967年終了の『幻魔大戦』があります。物語のラストは、味方たちが集結したところで、ドクロ模様の月が落ちてくる、というもの。最後のコマのセリフはありませんが、戦いを予感させたまま終わらせるという点では共通しています。

 今回紹介したいずれの「お約束」も、「元ネタはこれ!」と明確なものにはたどり着けませんでしたが、脈々と受け継がれている「お約束」の流れはあるようです。今回挙げたもの以外でも皆さんが気になる「よく見るシーン」の元ネタを探ってみると、マンガを読むのがもっと面白くなるかもしれませんね。

(古永家啓輔)

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