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「PS5」の転売問題、「売れれば同じ」は通じない ゲーム業界ならではの悪影響とは?

マグミクス / 2022年5月4日 15時10分

「PS5」の転売問題、「売れれば同じ」は通じない ゲーム業界ならではの悪影響とは?

■発売開始から1年半、今も転売されるPS5

 ここ数年、SNSやニュースサイトなどで「転売」という言葉をよく目にするようになりました。転売行為自体は昔から行われていましたが、限定商品や日用品(一時期のマスクなど)といった、世情に合わせた転売が昨今増えています。スマートフォンなどの普及で個人が売買しやすい環境になったのも、転売増加の一因でしょう。

 たびたび問題視される「転売」ですが、実はそれ自体は違法な行為ではありません。一定以上の利益を得た場合の確定申告など必要な手続きこそありますが、扱う品物や状況によっては古物商許可証すら必要ありません。

 そのため、転売屋(転売を行う者の通称)側が「転売目的で購入しても、企業に入るお金は同じだから問題ない」と主張するケースを見かけます。ですが、本当に「問題はない」のでしょうか。

 業界や商品によって事情は異なりますが、転売がもたらす影響は少なからずあります。また、一般的な日用品などの転売問題とは全く異なる悪影響が、ゲームハードの転売には潜んでいるのです。

●転売で抽選倍率は上がり、エンドユーザーは入手難に

 転売の絶対条件は、購入した価格よりも高い金額で売れる商品をチョイスすること。その点で現在最も適しているゲームハードは、PlayStation 5(以下、PS5)でしょう。

 2020年11月12日に発売されたPS5は、今も需要が供給を上回っており、販売店の多くで抽選販売を実施するほど。この抽選に当たらなければ、PS5を買うことはできません。一部の店舗では先着販売を行っていますが、これも早々に売り切れています。

 高い需要があり、これでしか遊べないゲームがあるので替えが利かず、単価が高いため利益も上積みさせやすいと、軽く考えただけでも転売に向いた条件がいくつもあるPS5。実際の比率は不明ですが、こうした転売目的の購入者の影響でエンドユーザーが抽選に漏れているのでは、といった話も出るほどです。

 実際、Twitterなどで「また落選した」「何回応募しても全然当たらない」と落胆の声が飛び交う一方、フリマ系アプリでは「新品、未使用」と書かれたPS5本体が高値で何台も並んでいます。

■ゲームハードがもたらす利益の主体は、ハード本体じゃない

歴代のPlayStationコントローラから、形や名前が大きく変わったPS5コントローラ「DualSense」 (C)Sony Interactive Entertainment Inc. All rights reserved. Design and specifications are subject to change without notice.

●ゲームハードの転売が、業界に悪影響をおよぼす

 転売による悪影響はいくつもありますが、ゲームハードの場合だと、「企業に入るお金は同じだから問題ない」が全く通じない点にあります。

 ゲームハードの多くは、それ自体の売上を利益の柱とはしていません。むしろ歴代ゲームハードのなかには、「売れた分だけ損をする」といった逆ざや状態で販売したものもありました。

 利益が少なく、時には赤字でも売るゲームハードの戦略は、「ゲームソフト」が鍵であり収益の主体です。例えば、PS5の前世代機にあたるPS4で遊べるゲームを販売する場合、ソフトを出す会社は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)に一定のロイヤリティを払う必要があります。

 内訳や比率はメーカーやハードによって異なりますが、こうしたソフト会社が次々にゲームを出すと、その分だけロイヤリティが発生し、ハード会社が潤います。このロイヤリティ(+自社販売のゲームソフトの売上)が、ゲームハードビジネスを支えているのです。

 この話を踏まえると、PS5の転売がゲーム業界に与える影響が浮かび上がってきます。転売目的で購入した場合、そのPS5はただの在庫です。仮に、転売目的でPS5が10万台売れたとしても、その10万台は全て休眠状態に過ぎません。

 しかし10万台がゲームを遊ぶユーザーの手元に渡っていた場合、遊びたくて買ったため、当然ソフトを購入します。そこから、2本、3本と増えていくのも珍しい話ではありません。つまり10万台のPS5が、20万本、30万本のゲームソフト販売に繋がっていくのです。

 ユーザー数が増えればゲームソフト全体の売上は割合的に増加し、ハード会社に入るロイヤリティも自然と膨らみます。これは、逆もまた真なり。転売の在庫品としてどれだけPS5が売れても、ユーザーの手元に届かない限り、ゲームソフトの売上には一切貢献しません。

 ユーザーが増えなければソフトの売れ行きは伸びず、ソフト会社・ハード会社ともに十分な収益を得られません。最悪、次のゲームが作れなくなったり、ハード事業から撤退する可能性もあるのです。

 PS5の品薄の背景には、半導体の不足などさまざまな理由があり、転売だけが原因の全てではありません。ですが、表面化するほどの規模になっているのも事実。また、「企業が得る利益は同じ」という転売側の言い分は、ゲームソフトの売上が肝心なゲーム業界において全く当てはまらず、明確な悪影響すらあります。

 転売が続く理由のひとつは、購入者の存在です。誰も買わない商品を、転売屋は扱いません。転売は違法ではないため、法律で止めることはできませんが、消費者の行動で止めることはできます。消費者の適切な行動は、法律よりも強いのです。

(臥待)

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