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「週刊少年ジャンプ」が少年マンガ誌のトップになれたワケ 後発だからアイデアで勝負?

マグミクス / 2022年5月7日 11時50分

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■新人漫画家を積極募集、鳥山明先生も発掘

 2023年に創刊55周年を迎える「週刊少年ジャンプ」(以下、ジャンプ)。『ドラゴンボール』『ONE PIECE』『鬼滅の刃』『呪術廻戦』などなど、世界中で愛される作品を次々と世に送り出してきた、日本を代表する少年マンガ誌です。現在、社会で活躍する大人たちで、ジャンプに育てられた……という人は少なくないはず。

 雑誌の発行部数も、単行本の発行部数も他のマンガ雑誌に大差をつけて1位を走り続けている「ジャンプ」ですが、もちろん最初からマンガ雑誌の巨人だったわけではなく、むしろ弱小誌としてスタートしたのです。

 ではなぜ「ジャンプ」は、並みいるマンガ誌と一線を画す存在になったのでしょうか? そこには意外なワケがありました。

●「新人発掘」を重視して成功

「ジャンプ」が誕生したのは1968年ですが、創刊にはひとつ、大きな問題があったようです。立ち上げにも携わった4代目編集長の後藤広喜さんによると、「描いてくれる漫画家さんがいなかった」のだとか。

 実は「ジャンプ」創刊当時、少年マンガ誌界にはすでに10年近くも先をゆくふたつの先輩誌、小学館の「週刊少年サンデー」(以下、サンデー)と講談社の「週刊少年マガジン」(以下、マガジン)が存在し、有名な漫画家はすでに2誌が抱え込んでいたのだそうです。

 そこで「ジャンプ」が考えたのが、新人漫画家の発掘。著名な漫画家が無理なら、新しい才能を見いだして育てればいい……というワケです。

 創刊号はご祝儀的意味もあったのでしょうか、赤塚不二夫先生や貝塚ヒロシ先生、永井豪先生などの顔ぶれが揃いましたが、同時に「第1回新人漫画大募集」の告知も載せられ、新人に門戸を開いているというスタンスが明確にされました。

 次々と登場する新人漫画家は、常に新しい面白さを求める読者の少年たちをワクワクさせてくれたことでしょう。

 積極的に新人漫画家を募集する姿勢は、後に『ドラゴンボール』などの大ヒット作を描いた鳥山明先生の発掘にもつながりました。鳥山先生は当初、賞金50万円のマガジンの新人募集に応募しようとしていたそうですが、締切りに間に合わなかったため、賞金は10万円ながらも毎週募集していた「ジャンプ」に応募したのです。毎週募集という大網を張っていたからこそ、才能をもれなく引き上げることができたのですね。

 ちなみに「ジャンプ」を出版する集英社は、もともと小学館の娯楽部門だったそうで、「ジャンプ」の初代編集長である長野規さんは、「サンデー」初代編集長・豊田亀市さんの直属の部下だったのだとか。豊田さんは後々長野さんを手放すのではなかったと悔やんだそうですが、ライバルとして「ジャンプ」ほどのモンスターマンガ誌を作られたのでは、その気持ちもよくわかります。

■ターゲットの「少年」とともに成長

●人気を保つ「カセット方式」

 有名漫画家に描いてもらえないため新人発掘に力を入れた「ジャンプ」ですが、とはいえ新人漫画家ばかりで果たして続けていけるのか……という不安も編集部にはあったようです。なにしろフレッシュさ以外はすべて未知数の新人たちなのですから。

 そこで「ジャンプ」が考え出した一手が「カセット方式」なるもの。4代目編集長・後藤さんによれば「カセット方式」とは、新人漫画家たちにストーリーマンガなら31ページ、ギャグマンガなら15ページの読み切り作品を描きためてもらい、ストックしておくことなのだそうです。

 作品のページ数を揃えてあるので、人気が出なかったり締切に間に合わなかったりする作品があれば、その穴埋めをすぐに用意できるというシステム。カセットのように簡単に入れ替えられるので「カセット方式」というわけです。面白くなければすぐに切られるという、漫画家にとってはシビアな状況ですが、それだけに面白い作品を描いて生き残ろうという原動力にもなったのではないでしょうか。

 後藤さんによると、本宮ひろ志先生の大ヒット作『男一匹ガキ大将』も、実はその穴埋めから生まれた作品なのだそうです。

●少年の心をがっちりキャッチ

「ジャンプ」の読者ターゲットは創刊当初は小学校高学年、現在は少し年齢が上がって15歳前後だそうですが、一貫して変わらないのは「少年」だということです。もちろん大人の読者も多いのですが、大人だってかつてはみんな少年でした。実際に大人になってみると、身体はいくら成長しようとも(または老いようとも)、実のところ中身はそんなに変わっていないことに愕然としませんか?

 そんな全少年の心をつかむために「ジャンプ」が重要視しているのが、読者アンケートです。今では当たり前の読者アンケートを最初に始めたのも、ジャンプなのだとか。

 漫画家にとっては読者の素直な反応がわかり、読者には自分たちの感想が作品に反映される喜びがあります。「ジャンプ」は少年たちと一緒に成長してきたからこそ、モンスターマンガ誌になりえたのではないでしょうか。

 もちろん「ジャンプ」は読者の声を聞くだけではありません。現編集長の中野博之さんは「これは少年に読ませたい、と思えば少年マンガだ」と語っており、あえて大人っぽい内容や描写の作品を載せることもあるといいます。少年を子ども扱いしない「少年目線」だからこそ、できることなのでしょう。

●「アニメ化」を厳しくチェック

 今やマンガのメディアミックスは当たり前。たとえば『鬼滅の刃』は、もともとの作品の人気に加え、アニメ化でファンの裾野が爆発的に広がり、国民的作品になりました。

 アニメ化は知名度が桁違いに上がるため、マンガ界としては一も二もなく大歓迎……かと思いきや、実は「ジャンプ」ではそうとも限らないようです。アニメ化には認知度が上がるメリットはあるものの、ヘタな映像化ではマンガ自体のイメージを落としてしまうということで、アニメ制作陣が辟易(へきえき)するほど、内容について厳しくチェックするのだそうです。

 アニメ『鬼滅の刃』も、ジャンプ編集部の細やかなチェックがあったからこそ、原作ファンの期待以上の作品となり、マンガの魅力をより引き上げることができたのでしょう。

 ジャンプがモンスターマンガ誌となった理由をさぐってみると、どれも、マンガが大好きな読者のために面白いマンガを届けたいという、編集部の真摯(しんし)な思いが伝わってきます。他にも理由はまだまだあるでしょうが、少しでも面白いものを届けたいという思いに違いはないでしょう。これから「ジャンプ」誌上でどんな面白いマンガとで出会えるのか、楽しみで仕方ありませんね。

(古屋啓子)

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