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子供時代に惹かれた『伝説巨神イデオン』の「ミサイル斉射」 登場少なく「打ち切り」も…

マグミクス / 2022年5月8日 6時10分

子供時代に惹かれた『伝説巨神イデオン』の「ミサイル斉射」 登場少なく「打ち切り」も…

■「その瞬間であった、イデの発動が起こったのは」

 42年前の今日、1980年5月8日は、TVアニメ『伝説巨神イデオン』の放送が開始された日です。白旗が持つ文化的な意味の相違から不幸にも交戦状態となった地球人とバッフ・クラン人が無限力「イデ」の意志に振り回され、最終的にはイデの発動により両種族が滅亡へと追い込まれた超絶的な物語は、多くの人の心に強い衝撃を与えました。

 もし地球人とバッフ・クラン人の両者にとって白旗の意味が同じ「戦う気はない」であったなら、『イデオン』の物語は始まることなく終わっていたでしょう。些細な行き違いから始まった戦いが双方に憎しみの連鎖をもたらし、局地的な紛争から星間戦争へ、そして人類とバッフ・クランの全面戦争へとエスカレートし、最終的にはイデの発動により両者全滅の憂き目を見た壮大なストーリーは、おそらく二度と作ることはできないとも思えます。

 全39話が放送された『イデオン』ですが、あまりにもヘビーな展開に加え、登場するメカのデザインが子供受けせずおもちゃのセールスが伸び悩んだため、全43話の予定だったのが急きょ打ち切られています。

 39話の脚本を担当した松崎健一氏によると、最後の部分を富野喜幸(現:由悠季)監督が変更して最終回に仕立てたそうで、「だから、最後の2分以外はただの39話なんですよ」と語っています。あまりにも突然だったイデの発動も、事情を聞けば理解できるものでした。なお、結果的に放送されなかった4話分のストーリーは劇場版『THE IDEON 発動篇』の原型として使用され、伝説的な作品の礎(いしずえ)となっています。

 ところで、皆さんは子供の頃に見た『イデオン』をどのくらい理解されていたでしょうか。筆者が最初に『イデオン』を見たのは小学校低学年のころでしたが、ストーリーについてはまったく理解できず、イデオンの戦いぶりだけを見ていたように思えます。

 今でこそ、イデオンはイデオンガン(波動ガン)やイデオンソードなどの圧倒的な破壊力を持つロボットとして知られていますが、イデオンガンは28話、イデオンソードは29話が初登場であり、それまでは合体前の各メカの連携によるミサイル攻撃やグレンキャノンと呼ばれるビーム砲、合体後は射撃武器を補助的に使いながらの格闘戦がメインとなっていました。

■脳裏に焼きついていた、ミサイルの閃光

『伝説巨神イデオン』劇場版 Blu-ray(接触篇、発動篇)(ビクターエンタテインメント)

 同時期によく再放送されていた『超電磁ロボ コン・バトラーV』の超電磁スピンや『超電磁マシーン ボルテスV』の天空剣・Vの字斬りなどの派手な必殺技を見慣れていた子供にとって、イデオン序盤の戦いぶりはあまりにも地味すぎたとも思えます。

 しかしながら、そのような状況下でも幼いころの筆者の脳裏に焼きついて離れなかった光景がありました。それは、全身からの「ミサイル一斉発射」です。

 もともとイデオンにはミサイルは装備されていなかったのですが、2話以降に全身に多数のミサイルランチャーが取りつけられ、貴重な戦力として運用されていました。序盤では合体後には射撃できない位置に取りつけてしまったり、手動でミサイルランチャーを発射しなければいけなかったり……といったこともありましたが、最終的にはイデオンのコクピットからの射撃が可能となっています。

 ミサイル一斉発射が最初に行われたのは14話「撃破・ドク戦法」となります。アンドロメダ方面ブラジラー基地司令であるカミューラ・ランバンの死に激高したユウキ・コスモは多数のジグ・マックとズオロ・ジック戦闘機に対し、全身からミサイルを発射し、敵戦力の3分の1を瞬時に撃墜しました。

 このミサイル発射はイデオンの全身から放たれた閃光が敵機を貫くような描写が行われており、非常に印象的なシーンとなっています。小さいころの筆者はこの光景が忘れられず、『イデオン』を見るたびにあのシーンが見たいと願っていましたが、その後一斉発射が行われたのは27話、29話、39話のみでした。イデオンの戦闘力が急拡大したのは第3クールに入ってからであり、もう少し早く強力な武器や戦術が登場していたら、『イデオン』はもっと人気が出て、もしかしたら打ち切りの憂き目を見る必要は無かったのかもしれません。

 しかしそうなると、劇場版の『発動篇』は制作されないことになってしまいます。ミサイル一斉発射回数の少なさや、イデオンガン・イデオンソードの登場の遅さがあの大傑作を生んだのかもしれないと考えると、なかなかに複雑ではあります。

(早川清一朗)

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