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【追悼】美形キャラを演じた塩沢兼人 唯一無二の声に「代役を立てない」例も

マグミクス / 2022年5月10日 6時10分

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■得意分野の美形キャラ以外でも数々の名キャラを生み出す

 5月10日は2000年に亡くなった声優の塩沢兼人(しおざわ・かねと)さんの御命日です。そこで生前の塩沢さんの演じたキャラの数々を振り返り、その功績を振り返ってみましょう。

 塩沢さんのデビューは洋画の端役だったそうで、まだ20歳の時のことでした。その後、いくつかのアニメ作品でモブキャラやゲストキャラを演じ、『一発貫太くん』(1977年)の戸馳二郎で、初めてのレギュラーを手にすることになります。

 塩沢さんがファンから注目されるようになったのは、やはり『機動戦士ガンダム』(1979年)からでしょう。この作品で塩沢さんはさまざまなキャラを演じました。オムル・ハング、サンマロ、ジョブ・ジョン、クランプ、カムラン・ブルームなどです。なかでもマ・クベを演じたことで塩沢さんの知名度は大幅に上がりました。

 神経質で独特の口調の悪役として印象が強かったマ・クベでしたが、その後の塩沢さんは初主演作になる『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』(1980年)のゴドー、『宇宙戦士バルディオス』(1980年)のマリン・レイガンといった正統派主人公を演じています。

 そして、塩沢さんの人気を決定づけて代表作となったのが、『戦国魔神ゴーショーグン』(1981年)のレオナルド・メディチ・ブンドルでした。このブンドルは当時のキャラ人気も高く、アニメ雑誌でも大きく取り上げられることが多かったキャラです。その人気に押し上げられる形で、塩沢さんの名前はアニメファンなら誰でも知っているほどのものとなりました。

 ブンドルによって塩沢さんは艶のある耽美な二枚目キャラの印象が強くなりましたが、その他のタイプの人気キャラも多く演じています。

 たとえば前述の主人公キャラたちのような正統派ヒーローとして、『銀河旋風ブライガー』(1981年)のブラスター・キッドこと木戸丈太郎をはじめとするJ9シリーズの歴代主人公を演じていました。

 コミカルな演技も得意分野のひとつで、オンとオフで声のトーンを切り替える技も秀逸だったと思います。『みゆき』(1983年)の村木好夫、『陽あたり良好!』(1987年)の美樹本伸、『新ビックリマン』(1989~1990年)のベリー・オズなどが印象的でした。

 もちろん、コミカルというかギャグキャラを演じても抜群で、得意だったオカマ調の演技を生かした『ハイスクール!奇面組』(1985~1987年)の物星大や、真面目にふるまっている部分も笑いを誘う『クレヨンしんちゃん』(1994年~)のぶりぶりざえもんなど、どんなキャラにでも命を吹き込むような演技力が魅力的だったと思います。

■死したのちも声を残した作品もあった

オーベルシュタインがジャケットに描かれた『銀河英雄伝説』DVD Vol.2(徳間書店)

 こういった幅の広い演技力を見せた塩沢さんですが、やはり代表的なキャラは二枚目、クール、美形キャラといった方向性だったと思います。その艶のある美声は、塩沢さんの真骨頂ともいえる完成度の高さでした。そのなかでも、さまざまなパターンのキャラを演じています。

 何でもお見通しという雰囲気のあるクールビューティーなキャラといえば、『聖闘士星矢』(1986~1989年)の牡羊座のムウ、『銀河英雄伝説』(1988~2000年)のパウル・フォン・オーベルシュタイン、『アルスラーン戦記』(1991年)のナルサス、『アンジェリーク』(1994年)の闇の守護聖クラヴィス、『LEGEND OF BASARA』(1998年)の揚羽などが思い浮かぶでしょう。

 儚い雰囲気を持った美形キャラは『戦闘メカ ザブングル』(1982年)のアーサー・ランク、『ふしぎの海のナディア』(1990年)のネオ皇帝の声が脳内に聞こえてきます。

 クールに見えて熱い心を秘めているキャラというのも得意分野で、『ふたり鷹』(1984年)の東条鷹、『北斗の拳』(1984~1987年)のレイ、『超獣機神ダンクーガ』(1985年)の司馬亮、『エリア88』(1985年)の風間真などが思い浮かびませんか?

 そして、はまり役が多かったのは悪役で、『未来警察ウラシマン』(1983年)のアドルフ・フォン・ルードヴィッヒ、『夢戦士ウイングマン』(1984年)のシャフト(黒津)、『蒼き流星SPTレイズナー』(1985年)のル・カイン、『美少女戦士セーラームーンR』(1993年)のプリンス・デマンド、『デジモンアドベンチャー』(1999年)のデビモンといった面々が思い出深いところです。

 46歳でのあまりにも早い突然死は関係者やファンに大きな衝撃を与え、その死を惜しむ声は多く寄せられました。唯一無二とも思えるその声質により、塩沢さんの演じていたキャラに代役を立てることをしなかった作品もいくつかあります。

 前述した『クレヨンしんちゃん』のぶりぶりざえもんは主要キャラだったにも関わらず、塩沢さんの没後、16年にわたって声のある形で登場しなかった時期がありました。

 ゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズでは、現在も塩沢さんが生前に録音した声を使用しています。特に『超獣機神ダンクーガ』の司馬亮は、塩沢さんの声に他の声優が合わせる形でパターンを変えるという手法で徹底していました。

 この他にもゲーム『テイルズ オブ エターニア』(2000年)では、塩沢さんへの追悼のため、『テイルズ オブ ファンタジア』(1995年)のダオスに酷似したゼクンドゥスを登場させ、ボイスは以前にダオスで録音したものを流用したそうです。

 亡くなって22年の時が経ちますが、その偉業は語り継がれ、今なお現役のような扱いで聴くこともある塩沢さんの声。その声をリアルタイムで聴いてきた筆者たち世代は、この偉業を終生語り継いでいきたいと思います。

(加々美利治)

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