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少女マンガの神様・萩尾望都の伝説3つ 痴漢を撃退した武勇伝も!

マグミクス / 2022年5月14日 13時10分

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■マンガの神様に導かれたマンガ道

「少女マンガ」の神様と呼ばれる萩尾望都先生は、70年代から今にいたるまで、マンガを愛する少女たちの憧れの的です。その作風は驚くほど広く、『ポーの一族』や『トーマの心臓』で文学的な美しい世界観を構築し、『11人いる!』や『スター・レッド』などの作品群で少女たちにSFの世界の扉を開き、さらに『イグアナの娘』では等身大の少女の心の悩みまで探ってくれました。

 さまざまなマンガファンの琴線に触れるという、まさに神様のような存在なのです。今回はそんな萩尾望都先生の、「マンガひと筋伝説」をご紹介します。

●マンガの神様・手塚治虫先生に導かれる

 今では「少女マンガの神様」と呼ばれる存在の萩尾先生ですが、先生自身もかつては漫画家に憧れる少女でした。中学の頃は『鉄腕アトム』や『サイボーグ009』など大好きなマンガをマネして、ひたすらノートに描いていたそうです。ただし、どうすれば漫画家になれるかも分からず叶わぬ夢と思っていたのだとか。

 そんな萩尾先生に「絶対に漫画家になろう」と決意させたのは、「マンガの神様」と称される手塚治虫先生の『新選組』でした。敵方のスパイだった親友を斬りに行く男の心情を、わずかなコマとセリフで表したこの作品に引き込まれ、「ちゃんとプロになってこの『新選組』で受けた衝撃を誰かに返したい」と思ったのだそうです。

 強い思いで1969年に『ルルとミミ』でデビューした萩尾先生は、翌年、手塚先生からさらなるアシストを受けることになります。

 出版社に原作付きの原稿(『ケーキケーキケーキ』)を依頼されたのですが、それは主人公がパリのお菓子屋さんで修行する話。今と違って簡単にネットで調べることもできない時代です。パリのお菓子屋さんなど見たこともなく、萩尾先生は描写に困り果てたそうですが、そこに燦然(さんぜん)と降臨したのが「マンガの神様」でした。

 手塚先生のアシスタントをしていた方の計らいで、ちょうどパリから帰ってきたばかりの手塚先生に話を聞くことができたのです。自分をマンガ界に導いてくれた手塚先生から、パリのお菓子屋さんの様子を直接教えてもらえた喜びは、いかばかりだったでしょう。八百万の神のなかの「マンガの神様」が、ステキな采配をふるってくれたとしか思えません。

 ケーキが今よりずっと贅沢品で憧れの食べ物だった時代。本場、パリのお菓子屋さんを舞台にした『ケーキケーキケーキ』は、作品中のおいしそうなケーキのビジュアルとともに70年代少女の心をがっちりとつかみました。いまだにどんな高級なケーキを食べても、当時憧れたケーキとは出会えていない、と感じる70年代少女もいるのではないでしょうか?

■マンガの前には痴漢だってこわくない

データを駆使して描いたという『トーマの心臓』(小学館)

●マンガひと筋で痴漢も撃退

 マンガを描くのが大好きで、四六時中マンガのことばかり考えているという萩尾先生。マンガに没頭するあまりの、驚きの武勇伝も残しています。

 それはデビューしてしばらく経った頃のこと。当時の萩尾先生は、編集部にネームを持ち込んでもことごとくボツになる、という失意の日々を送っていたそうです(少女マンガの神様にも、そんな時代があったのですね)。

 そしてある日、またしても編集部からボツをくらっての帰り道。当時住んでいたアパートへの道は、広~いキャベツ畑のなかを突っ切らなければならなかったそうですが、そこで突然、後ろから痴漢に羽交い締めにされてしまったのだそうです。人気のない畑のなかで襲われたのですから、普通だったら恐怖のあまり叫び声をあげるか、または怖すぎて声が出ないか……でも、マンガひと筋の萩尾先生は違いました。

 なんと痴漢に向かって「今、それどころじゃないから!」と言い放ったのです。思わずひるんだ痴漢を後に、萩尾先生はそのまま無事帰宅したそうですが……ネームがボツにされたことに落ち込みつつも、おそらくは次のアイデアを練りながら歩いていた帰り道。そんな大事な時間を痴漢ごときにジャマされてなるものかという、気迫に満ちた声だったに違いありません。

●紙上にヨーロッパを生み出す方法とは?

 萩尾先生の作品は海外、とくにヨーロッパを舞台にしたものが多いのですが、実際に現地で取材して描くことはほぼなかったそうです。ではどのようにして、ヨーロッパで暮らしているかのようなリアリティのある描写ができたのでしょう。実は萩尾先生は、資料の読み込み方も意外で繊細なのです。

 先生の著書には、代表作のひとつ、ドイツを舞台とした『トーマの心臓』を描いたときのことが載っていました。それによると最も役立ったのは写真集などではなく、年間降雨量や毎月の平均気温などのデータだったそうです。

 データを読み込むことで、キャラに着せる洋服にはがぜんリアリティが出ます。コートを着せるべきか否か、帽子は必要か、手袋もさせた方がいいのかなどが決まるのだそう。窓から見える木の種類は、樹木分布図を調べて決めたそうです。日の出や日没時間からは、朝起きた時にもう日が差しているのか、それとも室内に灯りが必要なのかが分かります。さらに萩尾先生は、ドイツの詩人が書いた詩を読むことで、土地のイメージを感じ取ったのだとか。私たちが何気なくめくっていたページには、萩尾先生が紙上に再現したドイツの香りが満ちていたのですね。

 今回は萩尾望都先生に関する伝説のほんの一端をご紹介しましたが、まだまだ萩尾ワールドには語り尽くせないほどの魅力があります。ぜひみなさんも、改めて手に取って少女マンガの神様の世界を感じてみてください。

(古屋啓子)

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