昭和に比べ人気マンガの「巻数」が増えた理由を考察 「変化」があった時期は?
マグミクス / 2022年5月11日 18時10分
■昭和時代の人気マンガの平均的な巻数は?
最近の人気マンガを見ると、昔に比べて巻数が増えたと感じることがあります。本当にそうなのでしょうか? 比較して調査してみました。
昭和生まれの筆者の、子供の頃の感覚では、「10巻以上は人気マンガ」というイメージが漠然とありました。そこで今でも作品タイトルを聞くことの多い、アニメにもなっている1960〜1970年代の主な作品の巻数を挙げると……。
・『巨人の星』全19巻
・『あしたのジョー』全20巻
・『タイガーマスク』全14巻
・『野球狂の詩』全17巻
……というように、現在のように何十巻もある人気マンガに比べて半分以下の巻数になっています。当時、社会現象にまでなったほどの作品でこのくらいで、当時のマンガは基本的に数年で完結するものがほとんどでした。
もちろん、当時でも作者のライフワークとも言うべき、長きにわたって描き続けられた作品は多く存在しています。『サイボーグ009』、『天才バカボン』、『ゲゲゲの鬼太郎』のような人気作品です。しかし、これらは一度物語を完結させるという形を取っており、連続的なストーリー性を持った作品ではありません。そういった連続ストーリー物は、前述したように一定の連載期間で物語を完結させています。
近年、100巻を超えた発行巻数の多い作品を見ると、このパターンに当てはまるものが多くありました。『ゴルゴ13』、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、『浮浪雲』、『あぶさん』、『クッキングパパ』などです。どの作品も共通しているのは1話ないし数話でひとつのエピソードが終わるタイプ。どこから読んでも基本設定さえ知っていれば問題ない読み切り方式の作品です。
そういう点では、昔からギャグマンガは比較的、巻数が多い印象がありました。もっともギャグマンガの場合、同じパターンだと定期的なネタ出しに困るので、登場人物や作風を変えたいくつかの作品を回していくという方法を聞いたことがあります。
それでは、近年の『ONE PIECE』、『名探偵コナン』のような長期連載形式の連続ストーリー物の100巻超え作品は、どのような流れで生まれてきたのでしょうか?
■メディアミックスで寿命が延びた人気マンガ
あくまでも筆者の私見ですが、いわゆる「ジャンプ黄金期」と言われる時代が、マンガの長期連載の要因になったと思います。
この前後のアニメにもなった、主だった「ジャンプ」の人気マンガ作品を年代順に並べてみると……。
・『Dr.スランプ』(1981〜1986年)全18巻
・『キン肉マン』(1983〜1986年)全36巻(当時に発売されたもの)
・『キャプテン翼』(1983〜1986年)全37巻
・『キャッツ・アイ』(1983〜1984年)全18巻
・『北斗の拳』(1984〜1988年)全27巻
・『ハイスクール!奇面組』(1985年-1987年)全20巻(『3年奇面組』全6巻含まず)
・『ドラゴンボール』(1986〜1997年)全42巻
・『聖闘士星矢』(1986〜1989年)全28巻
・『シティーハンター』(1987〜1991年)全35巻
・『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(1991〜1992年)全37巻
・『幽☆遊☆白書』(1992〜1995年)全19巻
・『SLAM DUNK』(1993年-1996年)全31巻
……といったように、アニメの放送話数に比例して徐々に発行巻数が伸びてきている感じに見えます。そう考えると、連載の長期化はアニメ化によるコンテンツの拡大などが要因かもしれません。
この時期の「ジャンプ」マンガでよく漏れ聞こえるのが、「作者がやめたくても編集部が連載を続けさせる」という話です。上述したようにマンガのヒットでアニメ化され、アニメでもヒットすることで生まれた二次収益などで、作者であっても容易に連載を終わらせることができなかった。……そういったエピソードがあったのも、この時期くらいからでした。
それがすべてというわけではないでしょうが、コンテンツとして複合的にさまざまな分野とからみ合うようになったことで、連載マンガの「寿命」は大きく伸びたのかもしれません。もっとも、連載期間が延びたことでデメリットもいくつか起こりました。
そのひとつがコミックスの巻数の多さによる消費者の買い控えです。よく言われるのが長期連載作品のファンになった場合、以前に販売されていた巻数まで網羅できるのか? という不安をおぼえる。……という話を耳にします。この点は「○○編」といった形で区切るという方法がよく使われ、なかには「○○編」ごとにコミックスの巻数をリセットする方法が使われることもありました。
また、作者が長期連載することで起きるデメリットで、筆者がもっとも懸念するのが作品数の数です。昔の有名漫画家の方々は多くの名作を生み出してきました。しかし、近年の漫画家の方々は数作、人によってはひとつの作品しか生み出していません。
あくまでも個人的にですが、実力のある漫画家の方々にはバラエティ豊かな数多くの名作を生み出してもらい、我々読者を楽しませてもらえればと思います。皆さんはどう思われますか?
(加々美利治)
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