現代女性の「リアルな心情」に迫るマンガ3冊 ホストにハマったふたりの末路は…
マグミクス / 2022年5月17日 17時30分
■ホスト狂いや、配信者の“ガチ恋”ファンの末路は…
2022年4月12日(火)より放送開始したドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』(通称「明日カノ」)は、原作キャラクターのビジュアルの再現度の高さなど、SNSを中心に話題沸騰中です。原作は単行本が累計300万部突破の同名マンガです。
作品の魅力は、さまざまなコンプレックスや心の闇を抱えながら、痛々しくも自分の人生を生き抜こうとする女性キャラクターたち。今回は、総合電子書籍ストア「ブックライブ」で女性マンガのエキスパートである書店員えい子が、『明日、私は誰かのカノジョ』を中心に、現代社会で生きる女性のリアルな心情を描いたおすすめマンガ3作品を紹介します。
●ホストクラブにはまる女性たちのリアル…
『明日、私は誰かのカノジョ』は、レンタル彼女にパパ活、整形依存症……さまざまな女性たちが登場するオムニバス形式のマンガですが、なかでもリアルな描写で女性読者からの支持が厚いエピソード「ホスト編」が読めるのは5巻から。
「恋愛したいとか彼氏欲しいとか思ってない」と公言し、「女らしさ」に縛られずに生きているしっかり者の女子大生・萌。行きつけのミックスバーで、いわゆる「地雷系ファッション」に身を包んだゆあ(5巻の表紙の女性、通称ゆあてゃ)という女の子に出会い、誘われるがまま人生初めてのホストクラブに体験入店したことで萌の生活は一変します。
「絶対に楽しめない」と思っていたはずのホストに自身のコンプレックスを癒され徐々にハマっていく萌と、担当(お客さんの専属ホスト)であるハルヒとの、「ホストと客」という関係の頼りなさに情緒不安定なゆあてゃ。やがてふたりの欲望は理性のタガが外れて思わぬ事態に発展していきます。
萌もゆあてゃも日々の生活のなかで抱える鬱屈とした感情を、夜の街で解放することに高揚感を覚えますが、そこは実際にはお金でしか人とつながることができない場所。しかしそんな世界にしか自分の居場所を見いだせない女性たちの孤独な心情が胸に響くエピソードです。
●ネット配信者に「ガチ恋」する女性ファンたちの泥沼劇場
マンガ『ガチ恋粘着獣 ~ネット配信者の彼女になりたくて~』第1巻(コアミックス)(画像:ブックライブより引用)
ルックスの良さに定評のある女子大生のヒナ。誰にも言えない彼女の秘密は、3人組の配信者グループ「コズミック」のメンバーであるスバルに「ガチ恋」していること。破産寸前になりながらも高額の投げ銭をし、どうやったらスバルの彼女になれるのかと焦る日々。そんな時、当のスバルからDMが届きます。実は配信者のスバルには、配信で見せる「表」の顔とは別の「裏」の顔があり――。
応援したい、見守りたい、つき合いたい、自分だけのものにしたい……ひとつを手に入れたらさらに欲しくなるのが人間の性(さが)というもの。「ガチ恋」相手との距離が縮んだことをきっかけに、ヒナの欲望は暴走を始め、やがてとんでもない方向へと発展していきます。
ステイホーム期間中に一般人の動画配信にハマった人も少なくないはず。まだまだ黎明期の文化だからこそルールや距離感があいまいで、配信している側も、それを見ている側も、人間の欲のリアルな部分がむきだしになってしまうのかもしれません。自分自身の生み出した「表」と「裏」に揉まれ、飲み込まれていく配信者の行く末も必見です。
●キャバクラで働く女性たちのお仕事マンガ
マンガ『ヒマチの嬢王』第1巻(小学館)(画像:ブックライブより引用)
かつて歌舞伎町のNo.1キャバ嬢として伝説を築いたアヤネ。都会の喧騒に疲れた彼女は地元の鳥取にUターンし、成り行きでシャッター街の小さなキャバクラの店長をやることになります。元歌舞伎町No.1としての経験を活かしながら、店の流れを完璧に掌握し、キャバ嬢の個性を伸ばしていくアヤネの手腕によって、店はどんどん人気店になっていきます。
「お仕事」としての夜の街を描いたマンガ作品。前に紹介した2作品とはやや毛色が異なり、ポジティブなパワーをもらうマンガです。
お客さんに「夢」を見させるのが夜の世界、という印象がありますが、本作で描かれるのは経営やビジネスといったキャバクラのシビアな側面です。そこで働く従業員も、ただお客さんとお酒を飲みおしゃべりをするだけで、高額なお給料がもらえるわけではありません。
アヤネもキャストに立候補した同級生に「この仕事は、たくさんの好意と悪意を直接ぶつけられる」、「精神的に負担の大きな仕事」だと説明します。しかしだからこそ、主人公のアヤネをはじめ、そこで生き抜く女性たちの心の強さや仕事への姿勢が、リアルな説得力を持って読者の心に響いてくるのです。
以上、リアルな心情が胸に迫る、現代女性の裏側を描くマンガ3選を紹介させていただきました。いずれも女性たちの抱える孤独や寂しさ以上に、自分自身の生き方を貫こうとするたくましさを感じられる作品です。ドラマで『明日カノ』にはまった方は、ぜひほかの作品も読んでみてくださいね。
(総合電子書籍ストア「ブックライブ」書店員えい子)
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