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すでに死語になった「マルチメディア」の意味 人の可能性を拡大させる存在

マグミクス / 2022年5月26日 6時10分

すでに死語になった「マルチメディア」の意味 人の可能性を拡大させる存在

■1990年代に流行した言葉「マルチメディア」

 1990年代に流行した「マルチメディア」という言葉があります。1993年には松下電器産業(現:パナソニック株式会社)がマルチメディア規格の端末として「3DO REAL」を発売。SONYも自社のPCブランド「VAIO」を「マルチメディアパソコン」と呼称するなど、当時の電器店は「マルチメディア」という文字で埋め尽くされていたものです。

 今ではほぼ「死語」と考えて差し支えない言葉ですが、家電量販店のヨドバシカメラには今でも「マルチメディア館」が存在するなど、目にする機会は存在しています。

 ところで、「マルチメディア」とは何なのか、聞かれて答えられる方はどのくらいいるでしょうか。言葉としては知っていても、具体的には何なのか理解している方となると少ないでしょう。

 マルチメディアには時代や業界によってさまざまな意味が存在しますが、現代では「映像・音声・文字・静止画などの多様な表現を統合的に用いる情報媒体」のことを主に指しています。要はスマホやパソコンのように、文字も書けるし音楽も聴ける、動画も見られる機材が該当しています。さらに正確に言えば、これらの情報をデジタル化して記録するメモリやハードディスクといった記録媒体のことを指しているのです。

 マルチメディアが一般化する以前は、文字であれば紙、音楽であればカセットテープやレコード、映像であればビデオテープに記録するのが当たり前でした。再生手段も音楽の場合はカセットデッキやレコードプレイヤー、映像ならばビデオデッキと、それぞれ専用の機材が必要とされました。

 情報の種類ごとに記録及び再生手段が異なる場合、今の私たちのような生活は不可能です。電車に乗れば、ほぼすべての人がスマホを眺めながら、それぞれ別のことをしています。テキストのやりとりやゲーム・動画を楽しむだけでなく、買い物や情報収集に使う人も多いでしょう。なぜこれほど便利な世の中になったのかと言えば、元々は全く異なる種類の情報が、それぞれデジタル化されたおかげで同じ媒体での記録と再生が可能になったからなのです。マルチメディアは消え去ったのではなく、意識する必要がなくなるほど私たちの生活に完全に溶け込んだと言えるでしょう。

■マルチメディアは人の可能性を拡大させる

『ファイナルファンタジーVII』とともに大ヒットしたPlayStation(ソニーインタラクティブエンタテインメント)

 なぜ、マルチメディアは1990年代に普及したのでしょうか。この大きな理由としては、1995年にビデオやオーディオの標準規格であるMPEG-2(エムペグツー)が策定されたことが挙げられます。MPEG-2は高精細度テレビジョン放送であるHDTVなどを想定した企画であり、デジタル放送や情報の記録などさまざまな用途に利用されている汎用性の高い規格となっています。

 さらに、1999年には低ビットレートでの使用を想定したMPEG-4も規格化され、iPodやPSPといった携帯端末が対応したことにより爆発的な普及を見せ、現在ではスマホでもしばしば使用されています。

 そして1990年代には、コンピュータの性能が大きな向上を見せたのもマルチメディアが普及した大きな要因です。特に業務用コンピュータを手掛けるシリコングラフィックス社のワークステーションは性能が高く、映画やゲームの制作に使用され映像のクオリティは飛躍的な進歩を遂げました。ゲーム機やパソコンにCD-ROMが搭載されるのは当たり前の光景となり、『ファイナルファンタジーVII』など動画と音声を組み合わせた映像表現が大きな人気を獲得したのです。

 何より、アナログ形式で記録されていた情報をデジタル化することで統一した機材で記録・再生することができるようになったのは、情報の加工と伝達が容易になったことを意味します。かつて、クリエイターとして活動できる人間は特別な機材を持つごく一部の人だけでした。しかし今は、パソコンやスマホ、アプリと熱意さえあれば、誰でもクリエイターになり、多くの人に見てもらうことができるようになりました。

 もしかしたらマルチメディアとは、人の可能性を大きく押し広げる、礎(いしずえ)のような存在なのかもしれません。

(早川清一朗)

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