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庵野監督だけじゃない、アニメ・実写の両方で活躍する名匠たち アクション演出の職人も

マグミクス / 2022年6月21日 20時50分

庵野監督だけじゃない、アニメ・実写の両方で活躍する名匠たち アクション演出の職人も

■実写に軸足を置く監督、アニメに軸足を置く監督

 アニメも実写も映像作品であることに変わりはなく、基本的な方法論は同じです。そのため、時折両方の分野で活躍する監督が出てきます。

 故・市川崑監督、ティム・バートン監督はアニメーター出身で、バートン監督はその後アニメ作品『ティム・バートンのコープスブライド』を監督しています。絶賛公開中の『シン・ウルトラマン』で監督を務めている樋口真嗣監督はどちらかと言うと実写に軸足を置いていますが、『ひそねとまそたん』などアニメも手掛けていますし、『シン・ゴジラ』の総監督、『シン・ウルトラマン』の企画・脚本を手掛けた庵野秀明監督は『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの生みの親です。

 また、カルト的人気を誇る『AKIRA』の大友克洋監督は、映像作品では主にアニメの監督を務めていますが、実写映画版『蟲師』も監督しています。『踊る大捜査線』シリーズで知られる本広克行監督はアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』の総監督を務めていました。『セブン』、『ソーシャル・ネットワーク』、『Mank/マンク』などで知られる巨匠デヴィッド・フィンチャー監督は、アニメ作品『ラブ、デス&ロボット』の1エピソードを監督しています。

 ……という風に例を挙げ出すとキリがありませんが、今回は他にもいる実写とアニメの両方で優れた結果を残した監督をまとめてみました。

●ウェス・アンダーソン監督

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』、『ムーンライズ・キングダム』でアカデミー賞の脚本賞候補、『グランド・ブダペスト・ホテル』で同賞の監督、脚本賞候補になるなど実写で多大な実績を残しているウェス・アンダーソン監督。

 アンダーソン監督の作風は極めて特徴的です。脚本は癖のある登場人物が登場する群像劇で、演出はシンメトリー(左右対称)の構図を多用し、独特のテンポで物語が進みます。実写をメインにしている監督がアニメをやる、またはアニメをメインにしている監督が実写をやるとかなり印象に差が出る場合が多いですが、アンダーソン監督の場合、アニメをやっても実写をやっても驚くほど印象が変わりません。これまで『ファンタスティック Mr.FOX』と『犬ヶ島』の二本のストップモーションアニメ作品を手掛けていますが、独特の画面構成やテンポは実写の印象とほとんどそのまま一致します。

 押井守監督は『機動警察パトレイバー』シリーズのアニメと実写両方で監督を務めていますが、こちらもアニメと実写の双方が驚くほど印象が変わりませんでした。ですが、自身がシリーズの生みの親である押井監督と原作あり(ロアルド・ダールの小説)の『ファンタスティック Mr.FOX』では、その意味合いが大きく違います。それだけ、アンダーソン監督の作家性が強いということなのでしょう。

『ファンタスティック Mr.FOX』と『犬ヶ島』は共にアカデミー賞の長編アニメ映画賞候補になっています。

■実写でも手腕を発揮するピクサー・アニメーション・スタジオの凄さ

『Mr.インクレディブル』のブラッド・バード監督が手掛けた実写作品『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』ビジュアル。どちらも正統派のエンタメに仕上がっている。 (C)PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

●原恵一監督

 基本は実写の人のアンダーソン監督と対照的に、原恵一監督はアニメに軸足を置いた監督です。シンエイ動画の社員として長きに渡って『クレヨンしんちゃん』に関わり、特に監督・脚本を務めた『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』と『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』は大変な評判になりました。フリーになった後も、『カラフル』『百日紅』などで高い評価を獲得しています。

 原監督の作風はオーソドックスかつ、繊細・丁寧です。時代劇の『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』ではファミリー向けアニメ映画ながら、細部の描写に手を抜かず、火縄銃の操作や、火縄銃の弾込めにかかる隙を防ぐ「防ぎ矢」の戦法が明確に描写されていました。こういったディティールを描く丁寧さ、リアリティーに拘る作風が実写と相性の悪いがはずがありません。

 そんな原監督が手掛けた実写作品が『はじまりのみち』です。『二十四の瞳』などで知られる昭和の名匠・木下惠介監督の戦時中の若き日を描いた『はじまりのみち』は、フィックス(固定ショット)を主体にした動きの少ない映画で、「クレヨンしんちゃん」と同一の監督とは思えない静かな作品でした。予算が潤沢でない(恐らく戦中日本の光景を再現する十分な予算が無かった)ことを前提に脚本(原監督が兼任)を書いたのか、街中の場面では画面を狭くして見せる範囲を絞っているのがいかにもサラリーマン出身の原監督らしいです。

 逆に疎開先への山道を行く場面は画面を広くし、セリフを控えめにして景観の美しさをたっぷりと見せ、会話の場面では落語を思わせるやり取りで楽しませてくれます。説明セリフやナレーションは最小限にした静かな大人の映画で、「クレヨンしんちゃん」と同一の監督とはにわかに信じがたいです。 『はじまりのみち』はキネマ旬報ベストテンに選出されるなど高く評価されました。

●ピクサーのブラッド・バード監督、アンドリュー・スタントン監督

 ピクサー・アニメーション・スタジオ(以下ピクサー)のアニメは老若男女にわかりやすく、かつ深いドラマ性を持った物語、ダイナミックに動く画面が味わえる万人受けする超王道のエンタメです。

 数々の優秀なクリエイターがいる同スタジオのなかで、初監督アニメ映画『アイアン・ジャイアント』が高い評価を受けたのち、移籍したピクサーで『Mr.インクレディブル』や『レミーのおいしいレストラン』を手掛けたブラッド・バード監督は、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のオファーを受けて初の実写作品を監督しました。ここでもピクサーの王道的なエンタメ性が、存分に発揮されています。

 ピクサーの作品は動きがダイナミックで、ジェットコースターに乗るような楽しいアクションが特徴です。日本でアニメの技法を実写に持ち込むのは予算的に限度がありますが、ビッグタイトルになると製作費が1億ドル(ざっくり100億円以上)を超えるハリウッドでは、実写でもグリングリン動かすことができます。

『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』はとにかく派手に画面もモノも人も動きまくる典型的なハリウッド大作映画で、画面をダイナミックに動かす演出方法をよく熟知したバード監督のダイナミックな職人芸がたっぷりと活かされています。同作は興行的に大成功し、評論家筋から「シリーズ最高作」と評されるなど批評的にも大成功しました。

 同じく、ピクサーで『ファインディング・ニモ』『ウォーリー』を手掛けたアンドリュー・スタントン監督も、『ストレンジャー・シングス』『ベター・コール・ソウル』など実写ドラマの演出で高く評価されています。全年齢向けのピクサー作品と違い、実写ドラマの方はダークな内容ですが、スタントン監督の演出は相変わらず冴えており、エンタメ性も十分です。デキる職人は何をやらせても器用にこなすということですね。

 なお、バード監督、スタントン監督はジョン・ラセター監督、ピート・ドクター監督(全員ピクサー関係者)と共にアニメ映画への多大な貢献を評価され、2009年の第66回ヴェネツィア国際映画祭で栄誉金獅子賞を受賞しています。

(ニコ・トスカーニ)

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