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2004年版『ULTRAMAN』が今になって再評価される理由 『シン』との共通点も

マグミクス / 2022年6月13日 6時10分

2004年版『ULTRAMAN』が今になって再評価される理由 『シン』との共通点も

■大人も引きこまれるリアル路線の『ウルトラマン』

 山本耕史さん演じるメフィラスが一躍スターダムを駆け上がったり、掴みどころがないのに何故か愛おしくなるウルトラマンだったりなど、映画館を出てからも余韻が心地よかった映画『シン・ウルトラマン』。

 現代的な解釈やリアルな作風から、2004年の映画『ULTRAMAN』を思い浮かべたウルトラマンファンも多いはず。映画『ULTRAMAN』(※)とは、『シン・ウルトラマン』と同様のリブート作品であり、大人も引き込まれるリアル路線として企画されたものでした。

※マンガとNetflixで展開中の『ULTRAMAN』と、実写映画版『ULTRAMAN』は別の作品です。

 主人公の「真木舜一」は、別所哲也さん演じる航空自衛隊のパイロット。飛行中に赤い光と衝突した彼は、知らない間に宇宙生命体(ウルトラマン)と同化したおかげで無事生還を果たします。

 そんな彼を未知の危険因子と決めつけ、捕えようとするのは、陸上自衛隊の管轄である対バイオテロ研究機関「BCST」です。実は海自の操縦士「有働貴文」が謎の生命体に寄生され、凶暴化した事件があったため、真木も同じ存在だと決めつけて身柄を拘束しようとしていたのでした。

 ウルトラマンをその身に宿した真木と、ネズミやカラスといった他の生物を取り込みながら怪獣化していく有働。急速に「進化」した両者は、ついに決戦の刻を迎える――。

『ULTRAMAN』も『シン・ウルトラマン』も、従来の『ウルトラマン』シリーズから世界観を切り離し、まっさらな状態から初代『ウルトラマン』のアレンジを描いた点では同じでした。また極力リアルな描写を心がけつつ、大人でも引き込まれる要素を前面に押し出している点でも同じであり、『ULTRAMAN』は『シン・ウルトラマン』が目指した路線の原点とも言うべき作品です。

『ULTRAMAN』が指針にしたのは、ティム・バートン版『バットマン』やサム・ライミ版『スパイダーマン』のような、大人にも人気の作品づくりでした。もともと『バットマン』は大人を取り込むアメコミ映画として企画されたものであり、『スパイダーマン』はその方法論を進化させてヒットさせた作品です。そのメソッドは今や、『ウルトラマン』シリーズに限らず、さまざまなヒーロー映画や実写化作品でも取り入れられています。

 それでは具体的にどの要素が「大人を取り込む作品」だったのか? 『シン・ウルトラマン』とも共通するその部分について紐解きたいと思います。

●特徴は「人間ドラマ」「SF要素」「ファンサービス」

『ULTRAMAN』がほかの『ウルトラマン』シリーズともっとも異なる点が、人間ドラマに重点を置いたところです。

 主人公の真木舜一は家族想いの34歳。難病を患う息子のために空自を退官して民間航空会社に転職します。さらにバトルにおいても家族を守りたいと思う気持ちが彼の心の支えとなっていたりします。

 また幼少期から空を飛ぶことに憧れており、ウルトラマンになったことで奇跡的にその夢を叶えました。蒼空を飛翔しながら歓喜の声を上げる真木に、胸が熱くなった方もいたのではないでしょうか。

『ウルトラマン』シリーズといえば、オモチャを売るために変身アイテムをハデにしたり防衛組織を登場させたりします。しかし本作にはその縛りがなく、「実際にウルトラマンや怪獣が出現したら……」という視点からリアルな世界観にアプローチしています。それが一層の「リアル」を引き立てているのです。

 主人公の掘り下げで言えば、『シン・ウルトラマン』でも斎藤工さん演じる神永新二が辞書で地球の文化を学んだり、山本耕史さん演じる外星人メフィラスが地球の文化を愛しているような描写があったりしました。特にメフィラスについては、山本耕史さんの演技が好評で、メフィラスのスピンオフ映画が見たいと思ったファンも多いはず。

 もともと『ウルトラマン』シリーズは予算の関係で人間パートを多く入れる傾向がありました。たとえば、初代『ウルトラマン』で科特隊の隊員がそろってハヤシライスを食べるシーンや、ハヤタ隊員がベータカプセルと間違えてスプーンで変身しようとしたシーンが印象深いファンも多いでしょう。生活感が感じられるシーンや、人間性を掘り下げる些細な描写を意図的に入れることでリアルな世界観が構築され、その結果として感情移入度が上がり、大人でも引き込まれる作品になったのではと考えられます。

■『ウルトラQ』とのつながりも?

コミプレ「ヒーローズ」で連載中のマンガ『ULTRAMAN』。映画『ULTRAMAN』と同じタイトルだが、こちらは強化スーツで等身大バトルを展開する別作品。なおNetflixでアニメのシーズン1・2が配信中

 第2のポイントはSF要素です。

両作品とも可能な限りご都合主義を排し、科学的根拠や整合性を示した結果、全体的にSF色が強くなりました。

『ULTRAMAN』では巨大化する根拠を「進化」として表現。ウルトラマンは2段階で進化し、怪獣もネズミやカラスを取り込んで段階的に進化します。そうやって少しずつ完全体に近づく過程にはワクワク感があり、従来のウルトラヒーローとは異なる楽しさがありました。

 一方の『シン・ウルトラマン』も、禍特対が怪獣を駆除する際の方法や、ウルトラマンの巨大化の理屈など、随所にSF要素が散りばめられていました。もともと『シン・ウルトラマン』は初代『ウルトラマン』に回帰する企画なので、初代『ウルトラマン』の土台となっていたSF要素を盛り込むのは当然の流れではあります。それでも科学的根拠を示されると納得感も違いますし、作品におけるひとつのギミックとして惹きつけるものがありました。

 そして最後のポイントはファンサービスです。

『シン・ウルトラマン』は初代『ウルトラマン』の内容をギュギュッと詰め込んだ内容だったため、サプライズの部分を含めてファンサービスだらけでした。例えば劇中で発生した事件が初代『ウルトラマン』のエピソードをリメイクしたものだったり、サプライズで関連作品に触れたり……前知識があればあるほど楽しめたと思います。

『ULTRAMAN』も、主人公が転職した民間航空会社「星川航空」と社長の「万城目」が『ウルトラQ』(※)の主人公の設定そのままでしたし、主人公がウルトラマンと同化する発端の部分が初代『ウルトラマン』と同じシチュエーションでした。

※『ウルトラQ』は『ウルトラマン』の前年に放送された特撮ドラマで「空想特撮シリーズ」の1作目。主人公は星川航空のパイロットの万城目でした。

「大人も取り込む作品」として制作された『ULTRAMAN』と違い、『シン・ウルトラマン』は初代『ウルトラマン』世代と今の世代の溝を埋める架け橋として企画された『ウルトラマン』のリブート作品です。そのため制作の経緯は異なるものの、結果的に大人も楽しめる作品になったと言えます。

 どちらの作品も俯瞰で見ると共通点が多いですし、その部分で皆さん、『シン・ウルトラマン』から『ULTRAMAN』をイメージしたようでした。

●『シン・ウルトラマン』好きなら一見の価値アリ!

『ULTRAMAN』最大の見どころと言えばやはり空中戦です。

 当時もファンの間で話題になりましたが、ビル群の間を縫うように飛行するウルトラマンは、それまでのシリーズでは見られなかったダイナミックなアクションで感動的でした。スーツアクターを宙吊りにするだけでは表現できないCGならではの描写です。また初代『ウルトラマン』と同じ飛行シーンにこだわる『シン・ウルトラマン』では見られないシーンでもありました。

 しかも飛行シーンのディレクションを担当したのは、人気アニメーターの板野一郎さんです。板野さんといえば、ミサイル群が渦を巻くように戦闘機に肉薄する「板野サーカス」演出で有名な大ベテラン。『ULTRAMAN』でも「サーカス」が効果的に演出されており、一番の見どころと言えるでしょう。

 映画の規模としては『シン・ウルトラマン』に遠く及ばず、当時もウルトラマンのファン以外には見られていなかった本作。それでも『シン・ウルトラマン』と共通点が多く、『シン・ウルトラマン』が気に入ったのなら一見の価値はあると思います。どちらも「カラータイマーがないウルトラマン」ですからね。

 なお主人公の真木を演じた別所哲也さんが、5月24日に「別所哲也 も、ウルトラマン ULTRAMAN でした!かつて!」とTwitterに投稿しトレンドを賑わせていました。

(気賀沢昌志)

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