「スーパー戦隊」にはカウントされず…不遇の「マイナー戦隊」を知っているか
マグミクス / 2022年5月29日 6時10分
■「スーパー戦隊」にカテゴライズされない集団ヒーロー
1975年に『秘密戦隊ゴレンジャー』の放送が開始されて以来、最新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』まで続いているスーパー戦隊シリーズ。46シリーズ47年にわたり多くの人に愛されてきたシリーズの歴史を見ると、まさに壮観のひと言です。
ところが、幼少期に『ゴレンジャー』をリアルタイムで知っている世代とっては、「戦隊モノって、これだけじゃないよな……」という違和感もありました。『ゴレンジャー』が大ヒットしていた時代、「スーパー戦隊」にはカウントされないけど「ゴレンジャーっぽい集団ヒーロー番組」がいくつもあったのです。それも、『ゴレンジャー』の放送中に、週に3本「戦隊番組」が放送されているという期間がありました。
1976年の秋、稀有な戦隊豊作期間を振り返ってみましょう。
●バラエティ豊かな忍者戦隊『忍者キャプター』
『忍者キャプター』は、『ゴレンジャー』開始の翌年、1976年に放送された忍者モチーフのヒーロー番組。実は『ゴレンジャー』と同じ東映の作品です。
『忍者キャプター』は、日本征服を企む「風魔烈風」率いる悪の忍者軍団「風魔党」と戦うために現代に生きる忍者で結成された7人組の集団ヒーロー。それぞれ「雷」「水」「花」「土」「金」「風」「火」の属性を持ち、主人公はリーダーの「火忍キャプター7」(赤色)。彼は悪の忍者組織・風魔党のやり方に疑問を覚えて抜け出した「抜け忍」で、正義の忍者軍団「キャプター」に加わったのです。
忍者キャプターは7人組という頭数の多さから、普通の戦隊には入らないような「規格外」の個性を持つメンバーもふたりいます。ひとりは、メンバーがそろった写真でひと際目立つ、決してヒーロー体型とはいえない肥満なメンバー「土忍キャプター4」(茶色)。「ゴレンジャー」にも太ったキレンジャーがいましたが、戦闘スーツ姿になった時は不思議とシュッとしていた印象があります。ところが、土忍のお腹はお相撲さんのようにドーンと出っ張っていて、なかなかのインパクトでした。
もうひとりは、最高齢45歳の「雷忍キャプター1」(橙色)。45歳というと、今日の感覚で言えば中年でまだまだ現役世代という感じですが、本作では中年というよりも「初老」。子どもから見るとおじいちゃんのようなキャラクターです。
7人だとキャラがかぶってしまうんじゃないかという心配があるかもしれませんが、それぞれの属性に応じて、様々な武器と技を持ち、熱血、クール、メカ、子ども、巨漢、美少女、好々爺、7人のキャラクターがしっかり描きわけられています。必殺技のなかでも強烈な「キャプター櫓(やぐら)」は、組体操の「タワー」そのもので、7人ならではと言えるでしょう。
原作は「八手三郎」(東映作品の共同ペンネーム)がクレジットされ、『バトルフィーバーJ』以降の「スーパー戦隊」と同じ。脚本も伊上勝や長坂秀佳ら、「仮面ライダー」シリーズや「キカイダー」シリーズ、「ウルトラマン」シリーズなどの脚本家が執筆しており、俳優も伴直弥(現・伴大介、『キカイダー』『イナズマン』主演)、藤江喜幸(現・伍代参平、のちに『ゴーグルファイブ』のイエロー)らが参加。クオリティ的には、同時期に放送されていた『ゴレンジャー』にも特段劣るというわけではなかったように思えます。
しかし、放送局がテレビ朝日系ではなく東京12チャンネル(現・テレビ東京)系列であったことで、「スーパー戦隊」と同じ東映特撮でありながら、その枠に入らず、結果として顧みられることが少ないマイナーな作品になってしまったことは否めません(非公式の記事などでは「スーパー戦隊」と同列に紹介されることもありましたが)。
とはいえ、忍者戦隊というと、スーパー戦隊のなかでも定番のコンセプトですし、劇場版などで過去の特撮キャラクターがオマージュとして登場することも増えている昨今、そろそろ大先輩『忍者キャプター』にも再登場を願いたいものです。
■同色の戦士がふたりもいる!?
今や名優として知られる奥田瑛二の初々しいヒーロー時代に注目したい『円盤戦争バンキッド』。画像はDVDジャケット(東宝)
『円盤戦争バンキッド』は先述の『忍者キャプター』と同じく、『ゴレンジャー』放送開始の翌年1976年に放送が開始された、フォロワー作品のひとつ。制作は東映ではなく『ゴジラ』でおなじみの東宝でしたが、日本テレビでの放送でした。東京12チャンネルが1976年4月に放送開始した『キャプター』に続き、日本テレビは10月には『バンキッド』を放送開始させ、バンキッドが終了するまでの半年間、テレ朝の『ゴレンジャー』を含めて「戦隊番組」が3本並走するという、特撮史上でも稀有な事態となりました。
『円盤戦争バンキッド』の敵は地球侵略を狙う異星人「ブキミ星人」。彼らのターゲットは大人ではなく子どもでした。自らの星が死滅する20年後、彼らは地球に移住する計画で、そのための前準備として、その頃大人になっている子どもたちを狙い、従順な「家畜」にするという遠大な計画を実行しようとしているのです。
その計画をかぎつけた宇崎博士は、ふたりの孫とその学友ふたり、そして孫の家庭教師の青年の5人に「バンキッド」の力を与え、「少年円盤遊撃隊」に任命します。このチームは、リーダーの天馬昇(赤)が青年ですが、それ以外のメンバーは少年少女です。博士の孫の兄弟がドラゴン(黄)とラビット(黄)、クラスメイトがオックス(青)とスワン(ピンク)。それぞれ、「星座」がモチーフになっています。同色(黄)の戦士が常時存在するというのも、スーパー戦隊ではあまり見られないパターンです。
主人公の天馬昇を演じるのは、若き日の奥田瑛二。毎回、ラストには視聴者に向かって「君は〇〇はないか? もし〇〇なら、気をつけろよ、もしかしたらそれはブキミ星人のせいかもしれない」と、教訓めいたことを語りかけるのがお約束でした。
全26話で、毎回アルファベットをモチーフにしたブキミ星人が登場。毎回異なるブキミ星人のデザインは、『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に登場する異星人や怪獣、メカなどをデザインした芸術家・成田亨の手によるもの。アバンギャルドで、どこか神々しくもあるデザインは、当時の子どもたちに大きなインパクトを与えました。
また、「UFO戦争」の副題の通り、ブキミ星人の円盤と、バンキッドの操る戦闘機との空中戦も特撮で描かれます。1970年当時、海外ドラマ『謎の円盤UFO』などの影響で「UFOブーム」が巻き起こっていました。その影響を受けた作品が多数登場。アニメでは『UFOロボ グレンダイザー』(1975)、『UFO戦士ダイアポロン』(1976)といった作品や、ピンクレディーのヒット曲「UFO」(1977)などが発表され、「焼きそばUFO」が発売されたのもこの頃。
「戦隊」といえば「東映」というイメージが強いなか、「ゴジラ』シリーズでお馴染みの「東宝」も実は、『バンキッド』の後も『電脳警察サイバーコップ』(1988)や、『超星神グランセイザー』(2003)などの集団ヒーロー特撮を発表しています。『バンキッド』ともども、なんらかの形で現代に蘇ることを期待したいものです。
本文を一部修正しました(5月29日8時56分)
(やましなミミッチ)
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