東映特撮の原点!67年放送の三大ヒーロー、歴史の闇に埋もれた悲しき理由
マグミクス / 2022年6月3日 20時10分
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■あまりの金看板がマイナー化の原因に
「仮面ライダー」シリーズ、「スーパー戦隊」シリーズという二大特撮番組を製作し続けてる日本でも有数のヒーロー製作会社である東映。そのルーツはどこにあるのでしょうか?
東映がはじめて製作したTV作品は時代劇の『風小僧』(1958年)。初の変身ヒーロー番組は『七色仮面』(1959年)です。ここから東映TV作品は始まったと言えるでしょう。
その後、いくつかの特撮ヒーロー作品を生み出しますが、大きな分岐点となったのが『悪魔くん』(1966年)です。この作品によって漫画家の水木しげる先生を表舞台に上げ、後にアニメ作品として『ゲゲゲの鬼太郎』を誕生させるきっかけともなりました。この作品を生み出したのが、後に多くの特撮ヒーロー作品を生み出した平山亨さん。その平山さんの初プロデュース作品でした。
この翌年の1967年、平山さんが生み出した3つの特撮ヒーロー作品。それが現在に続く東映ヒーロー作品の原点だと筆者は思います。それはちょうど今から55年前のことでした。
当時、子供たちに大人気だった『ウルトラマン』(1966年)。しかし、その丹念な製作方法がアダとなり、高視聴率を維持しながらも製作が放送に間に合わないという時間的な問題から放送終了となってしまいます。次回作『ウルトラセブン』(1967年)の製作は決まっていましたが、どうしても半年の間、番組枠は空いてしまう。そこで半年間、番組枠を維持するため、スポンサーの武田薬品工業とTBSは円谷プロ以外の製作会社に作品を作らせることを決めます。
この半年だけの番組製作という不利な状況に手を挙げたのが東映でした。東映としては資本提携しているNET(現在のテレビ朝日)以外の局での番組枠獲得が悲願だったからです。こうして『ウルトラマン』に続く『ウルトラシリーズ第3弾』である『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ』(1967年)は東映で製作されることになりました。
この『キャプテンウルトラ』は当時の子供たちにも大人気で、東映はタケダとTBSから高評価を受けます。その功績で後に東映は円谷プロに代わって、この放送枠「タケダアワー」で『妖術武芸帳』(1969年)を製作、続いて『柔道一直線』(1969年)のヒットでスポコンブームをけん引しました。
しかし、『キャプテンウルトラ』という作品自体は金看板である『ウルトラシリーズ』が逆にアダとなります。後年、『ウルトラシリーズ』が円谷プロ製作だけになったことで、『キャプテンウルトラ』は作品として扱いづらいものになってしまいました。その結果、再放送もあまり行なわれず、歴史の闇に埋もれる形になります。
こういった事情から、当時の熱を知らない世代からいわれのない誹謗中傷のような評価を受けますが、『キャプテンウルトラ』はまぎれもなく一時代を築いた特撮ヒーロー作品のひとつでした。ちなみに筆者のマイベストヒーローでもあります。
■横山先生が十八番とした「忍者作品」と「ロボもの」
横山光輝原作による1967年放送の東映初カラー特撮ドラマ 「『仮面の忍者』 赤影 第一部 金目教篇Blu-ray」(東映)
『キャプテンウルトラ』と同時期に東映で製作されていたのが『仮面の忍者 赤影』(1967年)です。実は『赤影』は別の作品として企画がスタートしていました。
本来は劇場作品として人気を得た『大忍術映画ワタリ』のTV化の予定だったのですが、原作マンガ『ワタリ』の作者である白土三平先生は、あまりにも原作と違うテイストになった劇場版に激怒して、TV化を断ってしまったのです。
そこで白土先生と同じく忍者漫画の大家である横山光輝先生に原作を依頼しました。横山先生は人気作だった『伊賀の影丸』の連載を終了させ、新たに『週刊少年サンデー』で『赤影』の原作となる『飛騨の赤影』を連載します。この原作マンガのタイトルは、後にTV放送に合わせて変更されました。
こういった経緯から企画書の段階から『大忍術映画ワタリ』に出演していた白影役の牧冬吉さんと青影役の金子吉延さんの名前は記されており、赤影役の坂口祐三郎さんは最後に決定したそうです。
放映日時の都合で本作が東映ヒーロー初のカラー作品となりました。名前に色を入れたのもスポンサーの三洋電機がカラーテレビを普及させるためで、本作は最初からカラー作品として製作が決まっていたからです。その完成度はとても高く、三洋電機も関西テレビ(フジテレビ系列)も大いに盛り上がりました。しかし、それゆえにとんでもない事態になります。
それは「この完成度ならウルトラにも勝てる」と、よりにもよって東映で同時に製作していた『キャプテンウルトラ』の裏番組に当てようとしました。これにはTBSも大激怒だったそうで、「もうウルトラはいらない」と放送中止も侍さない構えだったそうです。しかし、この事態に平山さんはじめ東映のスタッフが関西テレビに時間帯変更を談判して、この一件は事なきを得ました。
この『赤影』が縁となって東映で製作した作品が『ジャイアントロボ』(1967年)。平山さんによると、『赤影』で横山先生の所に出入りしていた時に次の連載作品として用意されていた『ジャイアントロボ』の絵を見て、即座に横山先生に許諾を得て翌日には企画書を書いたそうです。
それまでの特撮ヒーロー作品になかった巨大ロボによる目新しい作品は、当時の子供の心をとらえました。作品は高評価で放送も延長される予定でしたが、予算をはるかに上回る製作費のために断念したそうです。
この『赤影』と『ジャイアントロボ』は再放送に恵まれ、特に関東地区では多かったことから世代を超えたファンを多数生み出しました。後年にリメイク作品として製作されたことも、その人気の一端を証明していると思います。
55年前に製作された『キャプテンウルトラ』『赤影』『ジャイアントロボ』。この3つの作品が、後に東映で製作された数多くの特撮作品の原典でした。その影響力の大きさは特撮ファンなら誰でも実感していることでしょう。
(加々美利治)
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