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中身が気になる…ジャンプ人気作を扱った学術論文 『北斗の拳』の「顔」の研究とは

マグミクス / 2022年6月18日 12時10分

中身が気になる…ジャンプ人気作を扱った学術論文 『北斗の拳』の「顔」の研究とは

■学術論文だけど……マンガ愛がほとばしる!「ジャンプ」作品を扱った論文たち

 今やマンガやアニメは、文学や音楽、映画などと並んで立派な「研究対象」です。「週刊少年ジャンプ」で連載されていた誰もが知るマンガも、アカデミックな現場では論文の題材として大いに活躍しています。幸い、学術的な「論文」は誰でも検索可能なものです。果たして、あの「ジャンプ」作品はアカデミックな領域でどのように扱われているのでしょうか?

※なお論文ともなると専門性が高いので、この記事ではあくまでも「タイトル」と「専門用語」の解説程度にとどめたいと思います。

●子供たちの時制概念の理解を助けている?『ドラゴンボール』を扱った論文

 最も有名な「ジャンプ」作品のひとつ『ドラゴンボール』(著:鳥山明)で、論文の検索をしてみましょう。ありました。それも「機関リポジトリ」と呼ばれる研究機関が管理する学術論文の、公開アーカイブに複数確認できました。そのなかでも目を引くのが、以下の論文。

「高学年児童の時制理解と映像の手がかりに関する研究―― 「ドラゴンボール」における時制表現の変化――」

 こちらは、「茨城大学教育実践研究」という紀要にて発表された論文。著者は同大特任教授・村野井均氏と准教授の小林祐紀氏です。アニメ『ドラゴンボール』内の時制表現(過去や未来を表す方法)がいかに豊かであり、それでいて子供らの理解に貢献しているかを考察した論文です。「背景色変化」「セピア」「暗転」「2 重写し」など、アニメメ『ドラゴンボール』のさまざまな時制表現を分析しています。こちらはネットでも閲覧可能となっています。

●『鬼滅の刃』と『ジョジョの奇妙な冒険』がひとつの論文の題材に!

『鬼滅の刃』(著:吾峠呼世晴)といった近作もまた例外ではなく「研究対象」となっていますが、そのなかでも注目したいのは次の論文です。

「残酷な「異形化」 : 『ジョジョの奇妙な冒険』虹村兄弟と『鬼滅の刃』不死川兄弟の葛藤」

 こちらは、「神戸大学国際文化学研究推進センター研究報告書」にて発表された論文。著者は同センターの協力研究員である植朗子氏です。

 まさかの同じく「ジャンプ」の超人気シリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』(著:荒木飛呂彦)との、あわせ技。第4部に登場する虹村虹村形兆・億泰の兄弟、そして『鬼滅』に登場する不死川実弥・玄弥の兄弟を題材に、「『異形化したモノ』にかつての記憶が宿っている場合でも、その人物を過去に愛していた人物は変わらずに愛することができるのか」を考察した論文です。読んだ方はご存じの通り、どちらの兄弟も家族が「異形」になる悲劇に見舞われていますね。時にユングやデカルトなどを援用した(少なくとも素人眼には)、奥深い論が展開されています。こちらもネットで閲覧可能です。

■花道や流川を成長させた「言語ゲーム」とは?

●『SLAM DUNK』はまさかの角度で考察

 バスケマンガの金字塔『SLAM DUNK』(著:井上雄彦)に関する論文も著されていますが、スポーツマンガにも関わらず次のような論文が発表されています。

「『スラムダンク』における成長の言語ゲーム」

「言語ゲーム」とは哲学者ウィトゲンシュタインが提唱した概念で、「言語」をルールに則る「ゲーム」の比喩として取り扱ったもの(同じ言葉でも、関係性や状況によって意味が変化していくことのゲーム性を指している)。「久留米大学文学部紀要」に収録された論文で、著者は同大文学部教授の白石義郎氏です。

 なるほど、「成長の言語ゲーム」とは何か。花道や流川の成長ぶりが、どのように解剖されているのか。凄まじく内容が気になるところではありますが、こちらはネットでの閲覧はできないようで、国会図書館などに足を運ぶしかありません。

●『北斗の拳』の「顔」の描写に注目!思わず作品愛がこぼれてしまう?

 最後にご紹介するのは『北斗の拳』(原作:武論尊、作画:原哲夫)を題材にした論文です。

「北斗の拳における顔の描写について : レヴィナス倫理学からみた他者への描画的表現」

「レヴィナス倫理学」……高校で倫理を選んだ人でも、うっすら覚えているレベルではないでしょうか。大阪教育大学が発行する「発達人間学論叢」に収録された論文で、著者は加藤佳也氏。大阪大学の医学部卒業したのち、現在は大阪教育大学の教授に就いている方です。

「倫理学において、人間は『他者』の『顔』と対面するのが重要」と説くレヴィナスの考えをもとに、弱者が踏みにじられ殺人も当たり前の『北斗の拳』の世紀末世界で、「各キャラの『顔』がどれくらい傷つけられているか」などを事細かに分析するなど、内容は極めて専門性が高いです。しかし、原哲夫先生の紹介文に「横山光輝に匹敵する漫画家」とあり、学術論文ながらも作品愛が伝わってきます。こちらはネットでも閲覧可能です(詳細な『北斗の拳』のあらすじも併記されています)。

 以上、「ジャンプ」作品を扱った論文を紹介してきました。「『スラムダンク』における成長の言語ゲーム」以外の3つは、ネットで読めるのでぜひこの後チェックしてみてください。ちなみに、『キン肉マン』(著:ゆでたまご)で検索したところ、機関リポジトリとしては「取締役の監視義務 ―ダスキン肉まん事件を契機として―」という全く別のものがヒットするのみでした。今も連載中の名作が、今後、いかなる角度で研究対象となるのか楽しみです。

(片野)

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