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「PS5」普及を阻む4つの壁 コロナ、転売だけでない「悪循環の連鎖」

マグミクス / 2022年6月7日 6時10分

「PS5」普及を阻む4つの壁 コロナ、転売だけでない「悪循環の連鎖」

■発売から1年半経っても入手難

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、2020年11月に「PlayStation 5」(以下、PS5)を発売しました。性能を活かした処理能力の高さや、SSD採用によるロード時間の短縮、PlayStation 4ソフトとの互換性など、多彩な魅力にあふれた新たなゲーム機として多くのユーザーから注目を集めました。

 ですが、どれだけ人気の高いゲーム機であっても、即座に普及するわけではありません。特に発売直後は、供給を大きく上回る需要が集まる場合が多く、入荷即売り切れになりがちです。

 新型ゲーム機が登場するたび、発売からしばらく経つまで入手難が続くのは、ゲームファンにとってお馴染みの光景。ですがPS5の場合は、発売から1年半が過ぎてもなお入手難が続いており、これだけの長期間にわたるケースは珍しい事態です。

 ゲーム機が普及しなければ、ゲームソフトの売上も伸びません。そのため、SIEとしても出来るだけ早くPS5の需要を満たしたいはず。また欲しているユーザーも、少しでも早く手に入れたいに違いありません。

 しかし、こうした願いの実現を阻むいくつかの問題が、今のPS5を取り巻いています。果たしてどんな難敵が、PS5普及を阻んでいるのでしょうか。

●SIEは「2022年にPS5増産」を掲げるが…

 PS5の供給が不足した背景には、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の影響が大きくあります。2019年12月の第1例目報告からわずか数ヶ月で世界的に広がり、日常の行動やビジネス面に大きな制限が加わりました。

 その影響から部品を含めた生産工場が十分に稼働できない時期があり、需要に応えるだけのPS5を用意できない状態が現時点まで続いています。しかも、半導体不足は未だにニュースで報じられるほどで、抜本的な解消にはまだ時間がかかる見通しです。

 ソニーグループが5月26日に行った事業説明会にて、SIE社長兼CEOのジム・ライアン氏が「部品不足は改善しつつある」「2022年はPS5の生産を増やす」と発言していますが、事態の即解消とは告げていないため、ユーザーが改善を実感するのはもう少し先になりそうです。

●転売横行、エンドユーザーの手に渡らず

 PS5の生産量が伸び悩んでいるのは確かですが、出荷した台数の全てがエンドユーザーの手に渡っていない点も見逃せない問題点のひとつ。購入する理由はさまざまですが、近年特に問題になっているのは、転売目的の購入です。

 転売自体は違法ではありませんが、転売屋がPS5を在庫として抱えれば抱えるほど、その分だけユーザーが買えず、結果としてPS5の普及が遅れます。また、「転売ばかり横行し、正規の価格で買えない」と感じたユーザーがPS5への興味を失う可能性もあり、この状況自体が普及の足枷になりかねません。

 ゲーム機の転売は昔からありましたが、スマホの普及やフリマアプリの導入により、転売行為自体のハードルが以前と比べて下がりました。また、スマホで手軽に情報に触れられるため、そうした「やりやすさ」から転売が広がった面も否定できません。こうした形から、PS5に限らずさまざまな転売が横行し、広く問題となっています。

■ゲームメーカー、PS5以外にソフト発売を分散へ

ネイティブ4Kの出力にも対応している「PlayStation 5」

 部品不足で生産数が落ち込み、供給が少ない点を狙った転売によって入手難が加速。これだけでも憂うべき事態ですが、この状況はさらなる悪化に繋がります。それは、ゲームソフトを作るソフトメーカーの動きにあります。

 ソフトが売れる最大の理由は「面白さ」ですが、どれだけ素晴らしいソフトでも、例えば100台しか売れていないゲーム機で販売した場合、最大でも100本しか売れません。しかし、1000人中ひとりしか買わないソフトでも、ゲーム機が1億台売れていれば、10万本の売上になります。つまり、母数=ゲーム機の販売数もまた、重要なポイントなのです。転売屋が問題なのも、在庫のままだとこの母数が伸びない点にあります。

 PS5の母数が伸びないと十分な売上が見込めない恐れがあるので、ソフトメーカーはPS5でゲームを出すことをためらう可能性があります。またPS5で出しても、PS4やNintendo Switchを含めたマルチ展開を行い、リスクの軽減を狙うことも。こうした状況が続くと、「PS5がなくても、気になるソフトは別のゲーム機で遊べるしいいや」となり、これもまたPS5の普及にストップをかけます。

●活気づくPC市場、SIEも見逃せないほどに

 また近年は、ソフトメーカーのマルチ展開に、SteamなどのPC向けプラットフォームが加わる傾向が強まっています。以前は、国内のソフトメーカーによるPC展開は控えめでしたが、ここ数年は発売日に同時リリースするケースもよく見られ、注力するメーカーが増えました。

 例えば、スクウェア・エニックスが放つオープンワールドアクションRPG『FORSPOKEN』も、PS5版とPC版の展開を予定。母数を確保する道のひとつとして、PCという選択肢が重要なものになりつつあります。

 国内におけるPCユーザーの数は、家庭用ゲーム機のユーザーと比べると決して多くはありません。ですが、近年はPCユーザーによるゲーム実況の影響を受けた方や、供給不足が続くPS5の入手を諦めた人などが、PCへと移行する流れが増加しつつあります。また、最近活気づいているゲーミングPCの普及も、こうした動きを後押しします。

 そもそも海外ではPCユーザーが相当数いるため、Steamなどに展開することで、海外PCユーザーを母数に加えるチャンスが生まれる点も見逃せません。こうした狙いからソフトメーカーがSteamをマルチ展開のひとつに加えると、その分だけPS5が得られたかもしれない販売数が相対的に減り、これもまた普及を阻む壁になり得ます。

 しかし、PC向けゲーム市場をSIEは敵視してはおらず、むしろ積極的に活用する姿勢も見せています。5月26日に行った事業説明会のなかで、2025年には自社タイトルの約半数をPCとモバイル向けに展開するとSIEが発表。残りの半数はPS5向けにリリースする模様です。

 SIEのこうした動きは、PC市場への前向きな参入なのか、無視できなくなり重い腰を上げた結果なのか。PS5の普及という点に絞って見た場合、プラスの要素になるかは難しいでしょう。

 現時点のPS5は部品不足から供給が追いつかず、その入手難を突く形で転売が横行し、状況の停滞からユーザー離れなどを一部で招きました。また、母数の伸び悩みからソフトメーカーがPC版を含めたマルチ展開に力を入れるほど、「PS5ならでは」の魅力が相対的に減少し、巡り巡ってPS5の普及に足止めがかかります。

 悪循環が連鎖的に起こっている一面もある、現在のPS5。人気ゲーム機だからこその事態ですが、その人気があるうちに状況を改善できるのか。多くのユーザーが今後の動きを真剣に見極めようとしています。

(臥待)

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