『帰ってきたウルトラマン』郷秀樹の功績 「カッコいい」だけじゃなかった?
マグミクス / 2022年6月9日 6時10分
■ハンサムで女子にも高い人気だった郷秀樹
ウルトラマンに変身する人間として、第2期ウルトラシリーズでもっとも多く登場した人物が、郷秀樹です。演じた団次郎(現在は団時朗)さんのハンサムな顔立ちもあって、女性人気も高いキャラクターでした。
もともと郷は第2期最初の作品となる『帰ってきたウルトラマン』の主人公。物語冒頭、郷は少年と仔犬を救おうとして命を落とします。それを見た新ウルトラマン(現在は「ウルトラマンジャック」という正式名称がありますが、第2期を扱う記事にあわせて、本文中では当時もっともポピュラーだった「新マン」の名称に統一します)は、その行為に感動して一体化することで郷は蘇生しました。
この郷の行動に注目したのは新マンだけではありません。怪獣攻撃隊であるMATの加藤隊長の目にも留まります。死の淵からよみがえった生命力を見込んだ加藤の勧めで、郷はMATに入隊、以降はウルトラマンとしてだけでなくMAT隊員としても怪獣や侵略者と戦うことになりました。
しかし、最終回のバット星人とゼットンとの戦いで行方不明となったことで、MATから戦死したと判断されてしまいます。もちろん郷は生きていたのですが、地球と同時にウルトラの星に侵略を開始していたバット星人の侵攻を食い止めるため、故郷のM78星雲へと戻ることになりました。この時、弟のように接してきた坂田次郎に、今後の教訓として「ウルトラ5つの誓い」を残し、旅立っていきます。
ちなみに、郷秀樹は「ウルトラマンと融合したまま地球を去る」というパターン最初の主人公でもありました。このパターンは意外と少なく、ウルトラマンが人間に化身していた、分離して別々になったというパターンの方が多く見られます。最近多くなった、ウルトラマンとしての力を持ったまま最終回を迎えるパターンに近いかもしれません。
あくまでも想像の範囲ですが、しばしば郷と「新マン」の意識が同一のものと思える場面が多く見られ、ふたりの意識は徐々に融合していったと考えられます。そのため、郷と新マンは分離不可能になったのかもしれません。そして、一度死んでいる郷を強制的に分離するには、ハヤタのように別に命が必要だったというわけです。
この郷がふたたび地球の人たちの前に現れたのが、今から半世紀前の1972年6月9日。『ウルトラマンA』第10話「決戦!エース対郷秀樹」でした。もっとも、この時の郷は本物ではなく、ヤプールの手先であるアンチラ星人の化けた偽物です。しかし、このエピソードはシリーズのなかでも特筆するほど重要な話でもありました。それはシリーズで初めて前作との接点が明確になったからです。
■ウルトラ作品どうしの「世界観」をつなぎ合わせた
第10話「決戦!エース対郷秀樹」が収録された、「DVDウルトラマンA Vol.3」(DIGITAL ULTRA PROJECT)
それまでのウルトラシリーズ作品では、前作との接点は皆無に等しく、何となく同じ世界かもしれない……程度のつながりでした。これが『帰ってきたウルトラマン』でウルトラセブンが登場し、その後に初代ウルトラマンも登場、この時に変身前のハヤタとモロボシ・ダンが当時の隊員服姿を見せたことで、ウルトラシリーズの世界観はひとつとなります。
この他にも、セリフからバルタン星人やゼットン、初代ウルトラマンという言葉が出て、世界観が同一になったことが確定しました。そして、書籍だけだったウルトラ兄弟の設定が本編にも導入され、以降のウルトラシリーズは基本的に地続きとなります。ここに最近は「マルチバース」という概念が加わり、ウルトラシリーズは並行世界の地球も加えたひとつの世界観を共有しました。
話を戻しましょう。『ウルトラマンA』10話で登場した偽物の郷の登場でTAC以前にMATが存在していたことがセリフからわかります。つまり本当にMATは解散したのでしょう。
さらに特筆するべき点は、『帰ってきたウルトラマン』でレギュラーだった次郎と村野ルミ子が出演したことです。これにより『帰ってきた』と『A』が同じ世界観にあったことを決定的になりました。ちなみに近年のマルチバースな世界観では珍しくありませんが、前作の非戦闘キャラの登場は初めてであり異例です。以降もあまり例がありません。
また郷は偽物でしたが、演じる団さんは本物。その後、『ウルトラマンタロウ』第52話「ウルトラの命を盗め!」、『ウルトラマンレオ』第34話「ウルトラ兄弟永遠の誓い」でも単独出演していることから、第2期ウルトラシリーズ皆勤賞となっています。さらに団さんの役者としてのシリーズ連続出演の4回は、『ウルトラQ』から『A』まで連続5回出演の小林昭二さんに続く記録でした。
ウルトラマンとしてのゲスト出演はゾフィーやセブンにおよびませんが、単独出演すると必ず見せ場となる戦闘シーンがある……という点において、「新マン」が登場した時のインパクトは絶大だったと思います。もっとも、『タロウ』ではカラータイマーを奪われてシオシオになったり、『レオ』では猿ぐつわのようなマスクをはめられたりと、散々な目にもあっていました。
第2期ウルトラシリーズの最初の作品として役割を果たした後も、後続の作品でも存在感を示した「新マン」と郷秀樹。色々と不遇な扱いを受けることもありましたが、子供の頃の筆者の心に残るヒーローでした。特に団さんがその後に演じた他の作品のキャラも、みんなダンディでカッコよかった印象があります。
(加々美利治)
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