70年代を席巻した「UFOブーム」 アニメ、特撮が続々放送、海外で「視聴率100%」の快挙も
マグミクス / 2022年6月24日 7時10分
■UFOブームで路線変更した人気ロボットアニメシリーズ
本日6月24日は「UFOの日」。1947年にアメリカ合衆国ワシントン州で、はじめてUFOが目撃されたとされる「ケネス・アーノルド事件」が起こった日です。この時に未確認の円盤状飛行物体が目撃され、「空飛ぶ円盤(フライングソーサー)」という言葉が一般的になりました。
UFOとは本来は未確認飛行物体の略称ですが、この事件をきっかけに「UFO=空飛ぶ円盤」という認識が一般化されたようです。そのせいか、みなさんもUFOといえばだいたい円盤状の飛行物体を思い浮かべることでしょう。それゆえ、アニメなどで登場する円盤状の飛行体は確認された物体であっても、だいたいがUFOと呼ばれています。
このUFOが日本で大ブームとなったのが1970年代後半くらい。1975年2月23日には「甲府事件」と呼ばれるUFOと宇宙人の目撃事件も起きて、TVでもたびたび特番が組まれるほどのブームとなりました。そんなUFOブームの人気にあやかって、タイトルに「UFO」を冠したTVアニメ、特撮作品がいくつか製作されています。
まずは『UFOロボ グレンダイザー』。1975年10月5日から1977年2月27日に放送された巨大ロボットアニメです。
当時の子供に大人気だった『マジンガーZ』、『グレートマジンガー』に続いて製作されたマジンガーシリーズの第3作。それまでのシリーズの流れのなかでは異色の作品になっていますが、それには理由がありました。
本来は『ゴッドマジンガー』という、完全に世界観を同じくする続編の予定でしたが、玩具の売れ行きが下降気味だったことからその企画を断念。劇場用映画として製作された『宇宙円盤大戦争』をもとに、TV用の企画に作り直したのが本作でした。
この流れにはタイトルに付けられた「UFO」が示すように、UFOブームの影響が強くあったそうです。その結果、東映ロボットアニメ作品としては敵が初めて宇宙人ということになり、以降のロボットアニメでは宇宙からの侵略者が定番となっていきました。
グレンダイザーは、スペイザーと呼ばれるUFOと合体する巨大ロボットです。さらに前々作の主人公である兜甲児が登場し、前半は自作の円盤「TFO」に乗っていました。
本作からスタッフが入れ替わったことで、それまでアクションが中心だった作風から人間ドラマ部分が重視されるようになり、後にも語られるようになった名エピソードがいくつも生まれています。
そして、数多くの美形キャラを生み出した荒木伸吾さんが参加したことで、1話限りのゲストキャラでもファンの間で話題に上るほどの美形キャラが何人も登場しました。これをきっかけにファン活動も大きくなって、女性作家による同人誌活動が盛んだった初期の人気作品だったと言えるでしょう。
こうして当時の人気作品となった本作でしたが、実は国内よりも海外での人気の方が高かった作品でした。フランスでは『Goldorak(ゴルドラック)』という名前で放送され、さまざまな状況が重なった結果ですが視聴率100%を記録するほどの人気となります。さらに2013年には「世界のテレビを変えた50作品」のひとつとして選ばれました。
ヨーロッパだけでなく中東でも人気が高く、特にイラクでは「放送時間になると路地から子供たちの姿が消える」「国民全員が共感できるものはサッカーとグレンダイザーだけ」というジョークが生まれたほどだそうです。
■UFOとアメフトの関連性はあったのか?
『UFO戦士ダイアポロン』は、「複数の人型ロボによる巨大合体」を描き、後世に大きな影響を与えた。画像は「放送開始40周年記念企画 UFO戦士ダイアポロン Blu-ray Vol.1」(TCエンタテインメント)
続いては、1976年4月6日から9月28日まで放送された『UFO戦士ダイアポロン』です。『週刊少年キング』に連載されていたマンガ『銀河戦士アポロン』が原作となりました。アニメ化に際して巨大ロボ「ダイアポロン」を登場させています。
このダイアポロンは、「複数の人型ロボットが合体し、1体の巨大ロボットとなる」という設定を初めて導入したロボットアニメです。ちなみに本作では合体でなく「合身(がっしん)」という造語が使われていました。これは「合体」が他社に商品登録されていたために生まれた造語だそうで、呉服関連の用語「合身(あいみ)」とは無関係だそうです。
ちなみに、このダイアポロンには他の巨大ロボットにない特異な設定がありました。それは、3体の小型ロボが合体後、その中身では主人公であるタケシが巨大化、ダイアポロンと融合することで完全な姿になるというもの。つまり単純な操縦型の巨大ロボットではありません。「合身」は合体のような機械だけの接続ではなく、人機一体になるということです。
この作品での「UFO」は、主人公チームの「UFO少年団」が乗り込む戦闘機でした。エンディング曲でも「空飛ぶ円盤」という単語が使われているなど、当時のUFOブームを積極的に作品に取り入れようとするスタンスが見受けられます。
続いては特撮ヒーロー番組になりますが、1978年4月8日から12月28日まで放送された『UFO大戦争 戦え! レッドタイガー』。もともとは後楽園ゆうえんち(現在の東京ドームシティアトラクションズ)が野外劇場用オリジナルヒーローショーとして企画したものでした。そのため、筆者をはじめ当時の子供たちの初見は、ほとんどがTVCMの映像だったと思います。
若い世代の方はご存じないと思いますが、後楽園ゆうえんちのヒーローショーはもともとTVで人気だった『仮面ライダー』から始まり、シリーズ第1期が終わったことで『秘密戦隊ゴレンジャー』へとバトンタッチしました。
この過渡期に番組事情に左右されず、安定して活用できるオリジナルヒーローとして企画されたのが本作です。野外劇場では仮面ライダーやゴレンジャーとの共闘も展開されましたが、『バトルフィーバーJ』からスーパー戦隊シリーズに切り替わって、以降は現在に続く流れになりました。
この作品では宇宙からの侵略者ブラックデンジャー軍団を「UFO軍団」と呼ぶこともあり、UFOは敵として存在しています。このUFOは「ジャンケンUFO」と呼ばれ、グー機、チョキ機、パー機が登場しました。
ちなみに前述した2作品とも、アメリカンフットボールをデザインモチーフにしていますが、特にUFOとは関係ありません。当時ブームというわけでもなく、日本でアメフトを盛り上げようとする運動が一部であったようで、その影響ではないかと考えられます。この時期に製作された他のアニメや特撮作品でも、アメフトがモチーフに使われていることもありますが、筆者を含めた当時の子供にはブームだったという印象はありません。
一方、こういった70年代後半のUFOブームは、ほかにもピンク・レディーの歌ったヒット曲「UFO」(1977年)、カップ焼きそばの「日清焼そばU.F.O.」(1976年)といったものを生み出しました。
そして、この頃のUFOブームが下地となって、矢追純一さんによるUFO特番が80年代から90年代の間、TV番組としてお茶の間を騒がせます。しかし、昨今ではあまりこういった話題が騒がれることが少なくなって、あの頃のようにUFOに対してのロマンや神秘性は影をひそめるようになりました。みなさんはUFOに対してどんな印象を持っていますか?
(加々美利治)
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