なぜラムが飛べない? 『うる星』ツッコミ所満載、FCソフト「ラムのウエディングベル」の秘密
マグミクス / 2022年6月25日 12時10分
■『うる星やつら』のファミコンソフト、元は全く違うゲームだった?
36年ぶりにTVアニメ化が決まった『うる星やつら』。PVでは新キャストのラム役上坂すみれさんや、諸星あたる役の神谷浩史さんの演技が旧アニメ版ファンも驚くほどピッタリで、期待が高まっています。
『うる星やつら』といえば、高橋留美子先生の漫画が原作ですが、実はファミコン用ソフトもあるのをご存じでしょうか?1985年にジャレコより発売された『うる星やつら ラムのウエディングベル』です。ラムを操作して遊ぶアクションゲームなのですが、原作ファンからするとおかしなところがあります。
お話は、ラムたちが通う友引高校で大地震が起きて、校舎が大炎上。地震で起きた次元のひずみのために、ラムは幼児の姿に、そして校舎も幼稚園に。炎上する建物のなかを上へ上へと昇って、屋上のUFOに乗ることで過去から未来へと次々にワープして、ラムも子どもから大人に成長、最後は未来の世界であたると結婚を目指す、というもの。荒唐無稽なストーリーや設定は『うる星やつら』らしいといえば、らしいですが、それにしてもあまりにシュールです。
さらにもうひとつツッコミポイントがあります。下から迫る炎から逃れるため、崩れ落ちる床をジャンプで飛び越えたり、建物のエスカレーターを使ったりして屋上を目指すのですが、ファンの方はご存知の通り、ラムは原作では空を飛べるはず。なぜ、空を飛ばないのでしょうか。実は本作、元になったゲームが存在して、そのグラフィックを『うる星やつら』に替えているからなのです。
●『ラムのウエディングベル』の元になった『モモコ120%』とは?
元になっているのは、アーケードゲームの『モモコ120%』。こちらは『うる星やつら ラムのウエディングベル』よりもさらにシュールな設定です。主人公は火の国のモンスターから結婚を迫られている4歳の女子、モモコ。燃え盛る建物でモンスターに追いかけられ、次々と現れる敵を光線銃のようなもので撃退しながら脱出を目指します。幼稚園、小学校、中学校と行く先々でモンスターに追いかけられつつも、最後はアイドルになって、幸せな結婚を、というストーリーです。当時のゲームとして珍しく、萌要素満載のゲームとなっていました。
先にご紹介した『ラムのウエディングベル』は、この『モモコ120%』のゲーム性をほぼそのまま流用し、グラフィックを『うる星やつら』に置き換えたものだとされていますす。ですから、光線銃の代わりにラムは電撃で攻撃し、モモコと同じように空は飛ばず、エスカレーターで移動します。
■ツッコミどころ多数、でも原作ファンには嬉しいポイントも
新しく、それでいて原作の持ち味も感じさせるデザインのあたるとラム。画像はアニメ『うる星やつら』キービジュアル (C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会
ラムが飛べないなど違和感はあるものの、『うる星やつら』のお馴染みのキャラクターたちが多数登場する点は、ファンには嬉しいポイントでした。面堂家のサングラス部隊とタコが行く手を阻んだかと思えば、上からはコタツネコが落ちてきて、ランのメッセンジャードールに甲冑をまとった水乃小路飛鳥も現れます。
敵キャラだけでなく、ラムを助けてくれるお助けキャラも。火の玉を吐いて敵を攻撃してくれるテンちゃん、敵を全員たい焼きににして食べてくれるレイなどが登場します。ただし、原作ファンからすると気になるところもあり、レイが食いしん坊なのは原作通りなのですが、たい焼き好きなのはこたつねこなので、設定がごっちゃになっている印象もありました。
さらにアニメでおなじみのラムが空を飛ぶときに発生するピロリロリという効果音が、ゲーム内ではトランポリンで大ジャンプするときに聴けます。効果音が鳴ること自体は嬉しいのですが、トランポリンでジャンプしなければいけないのが、寂しいような複雑な気持ちになります。
『モモコ120%』を元にして作られた『ラムのウエディングベル』ですが、両者にはゲーム性以外にも、もうひとつ共通点がありました。それはBGMに『うる星やつら』のオープニングソングとして有名な「ラムのラブソング」が使われていることです。『ラムのウエディングベル』が「ラムのラブソング」を使うのは当然ですが、『モモコ120%』は単体ではまったく『うる星やつら』とは関係がないオリジナルタイトルで、そこに人気アニメのBGMが使われているのは珍しいケースです。
ファンにとっては、ラムが空を飛べなかったり、元になっているモモコがアイドルになるせいで唐突にスタジオのステージがあったりと、おかしなところもたくさんあるものの、貴重なゲーム化作品のひとつではあります。あちこちの細かい原作とのズレに「ちがーう!」とツッコミを入れながら遊ぶのも、今思えば楽しかった思い出です。せっかくアニメが復活するのですから、これを機にゲームも新作を、なんて期待せずにはいられません。
(田下広夢)
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