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なぜPS5は「転売の的」になった? 転売ヤーだけでなく、購入者にも一因が…

マグミクス / 2022年6月27日 11時50分

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■PS5の高い人気が、転売の後押しにもなる皮肉

 家庭用ゲーム機としては最も新しい「PlayStation 5」(以下、PS5)は、2020年11月に販売を開始。そして、発売から1年半以上が経過するも、未だに入手難の状況が続いています。

 昨今、手に入りにくい商品が転売されるケースが目立つようになりました。このPS5も例外ではなく、インターネット上だけでも、定価を上回る額の販売が跡を絶ちません。

 どこからが転売目的なのかは一概に判断できませんが、一般的な購入理由である「ゲームプレイ」が目的の場合、ある程度遊んでから要・不要を考えます。そのため、本来のユーザーが処分するために売るとしても、「新品」や「未開封」といった文言は状況的に付きません。裏を返せば、こうした売り文句を掲げている場合、転売の可能性がかなり高まります。

 今もネット上で、定価以上の取引が持ち上がっているPS5。なぜ、転売目的の対象商品としてこれだけPS5に注目が集まっているのか。その背景の一端へと迫ります。

●品薄が続く状況が、事前に察せられたPS5

 需要が供給を上回る。それは転売の対象になる基本的な条件です。実はPS5は、早い段階で供給不足が続く見通しが立っていました。

 ゲーム機器が転売の対象になるのは決して珍しい話ではなく、発売直後に高額で流通されることがしばしばありました。ですが、今も高い人気を維持しているNintendo Switchですら、1年半も待つことなく普通に買えるようになりました(一時期、コロナ禍で需要が急激に膨らんだ際、品切れが続くことはありました)。

 なぜPS5の供給不足が続くのか。それは、新型コロナウイルス感染症の蔓延が大きな原因です。今現在はその影響がある程度押さえられていますが、一時期は多くの工場の稼働率が低下。そのため、生産に必要な部品が思うように揃わず、PS5は想定を下回る供給しか行えない時期が長く続きました。

 PS5の発売が始まったのは2020年11月。そして、感染症による影響が世界規模に広がったのは2021年から。新しいゲーム機器がシェアを伸ばすのに数年単位の時間がかかるため、PS5にとって大事なスタートダッシュを、コロナ禍が水を差す形になりました。

 感染症の影響で工場の稼働率が落ちるのは、誰が見ても明らかでした。であれば、PS5の生産が伸び悩むのも、十分予測できます。求める人は多く、提供できる量は予定よりも少ない。流通の少なさは価値の高まりに繋がり、その人気の高さが皮肉にも「転売しやすい状況」を招いてしまいました。

●長らく続く入手のしにくさが、購入希望者のストレスに

 転売の対象となる大前提は、「儲かること」。儲からないと分かっている商品を転売する人はいません。そして転売での儲けとは、「仕入れ額よりも高く売ること」。この差額が大きいほど、転売する側の利益になります。

 掘り出し物を見つけて仕入れよりも高く売る転売もありますが、PS5の場合は新品を購入し、定価を上回る額で販売して儲けを狙うケースがほとんど。「定価以上のお金を出しても欲しい」と考える消費者が一定数以上いれば、定価買いからの転売が成り立ちます。

 定価以上の額を出してでも購入する理由は、状況によっていくつかに分かれます。食料が不足すれば、生きるために高い金額でも止む無く購入するでしょうし、この時期を逃すと入手不可能という「限定感」が理由の場合もあります。また、「労力は払いたくないけど、モノは欲しい」と考える方は、例え高額でも手数料と割り切って払います。

 PS5の場合、需要に対する供給の少なさから、入手するのが非常に困難。1年半以上経った今でも、抽選販売にたまたま当たるにせよ、先着販売の場にうまく出くわすにせよ、運が良くなければ手に入りません。

 いつ買えるかも分からない運頼みな現状は、相応のストレスを購入希望者に与えます。こうした先の見えない日々から脱したい、その手数料として数万円上乗せしてもいい──そう考えてしまう方がいても、決しておかしくはありません。その弱みにつけ込み、PS5の転売が横行します。

 PS5が転売の対象になるのは、需要が供給を上回っているから。その埋められない差がある限り、定価を上回る流通が途絶えることはないでしょう。

■手頃な価格ではないからこそ、転売価格も上乗せしやすい

一時期は、PS5のコントローラも入手しにくい状況だった

●元値の関係から、転売の利益も上乗せさせやすい

 転売の多くは、旬の時期が限られています。供給され続ければ、いずれ需要を満たすほど普及するため、転売の相場は販売価格へ徐々に近づき、いずれは下回る運命です。しかし現状のPS5は供給不足が続き、長期にわたって需要が落ちないため、相場は下がらず変動しにくい状況が保たれています。

 相場が下がらない、つまり(転売する上での)価値が変わらないので、在庫として抱えても腐りにくく、扱う側にとって理想的な商品です。

 また、転売のやり方はいくつかありますが、フリマアプリなどを介して直接販売する場合、少額の商品を数多く扱うのはかなり手間がかかります。また少額商品だと、上乗せできる金額も程度が知れているので、効率がいいとは言えません。

 しかしPS5は、性能を踏まえると手頃ながら、単純に金額だけみると4万円台~5万円台なので、なかなかの価格です。こうした高めの商品は、転売時の販売価格に上乗せさせやすく、1回の転売でそれなりの額が手元に残ります。

 入手確率こそ手強いものの、価値が落ちにくく、1回の仕入れで万単位の利益が出る。転売屋にとっていくつもの条件が揃っている、理想的な商品なのです。

●スマホが便利過ぎて、転売のハードルも下げてしまう

 転売行為自体は、昔から長らく行われてきました。ですが、「転売のしやすさ」は大きく変わり、(良し悪しは別にして)今は誰でも気軽に転売できる環境が整っています。

 最も顕著な環境の変化は、スマートフォンの普及です。前述したフリマアプリも、スマホがあればすぐに利用できます。個人が直接モノを売りやすくなったため、転売のハードルもかなり下がりました。

 また、個人間の取引によるトラブルを避けたい場合、高価で買い取る店舗に売る手もあります。そうした店もスマホがあれば容易に調べられますし、複数店舗を対象に買取価格の比較も可能。スマホがもたらす便利さは、残念ながら転売にも役立っているのです。

 最新の機器でゲームが遊びたいと考えるユーザーは、かなりの数に上ります。その需要の大きさと、コロナ禍の影響を受けて生産数が伸び悩む供給量の差が、転売屋にとって格好の狙い目となりました。

 しかも供給不足が長く続く気配があるため、相場が落ちにくく、1件あたりの利益も出しやすい。そして、購入から転売までスマホ1台で足りてしまう環境もまた、転売のしやすさを後押ししてしまいます。

 今回は、日本国内における目のつきやすい事情を取り上げましたが、規制の基準が異なる海外のユーザーが日本向けのゲーム機を欲しがる、といった国をまたぐ転売事情もあり、なかなかに根の深い問題が横たわっています。

 転売は犯罪でこそありませんが、正常な流通を妨げる歪んだやり取りという側面があるのも事実。この状況が一日でも早く是正されることを、ひとりのゲームファンとして願ってやみません。

 なお、先日行われた ソニー・インタラクティブエンタテインメントの事業説明会で、部品不足が改善傾向にあると報告されました。また、今年は生産数を大きく増やすとも言及しており、状況が改善する兆しが見られます。転売は、最終的にババを引く可能性が大きいギャンブル要素の高い行為。個人的にも全くお勧めしません。

(臥待)

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