今こそ再評価したい昭和ウルトラシリーズの「超獣」たち ド派手な魅力を振り返る
マグミクス / 2022年7月9日 8時50分
![今こそ再評価したい昭和ウルトラシリーズの「超獣」たち ド派手な魅力を振り返る](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_99589_0-small.jpg)
■ド派手で品がない? いやいや、「超獣」の魅力はむしろそこにある!
映画『シン・ウルトラマン』では、成田亨氏のイメージを原型にした、一切のスキを感じさせないウルトラマンや外星人のデザインが大きな注目を集めています。時代が変わってもなお多くの人々を魅了するその芸術的な美的センスはまさに、原点にして頂点と言って差し支えないでしょう。またそれに付随して、ネロンガやゼットンなど大胆なアレンジが加えられた『ウルトラマン』に登場する円谷怪獣たちの美しさに新たな世代からも評価が集まったことは、特撮ファンにとって喜ばしいことです。
さて、昭和ウルトラ怪獣のデザインはシリーズごとにその時代背景や文脈、何よりも作者によって大きく異なります。そのなかで未だに好き嫌いが人によって大きく分かれるのが、1972年に放送された『ウルトラマンA』や、それ以降の作品に登場する「超獣」でしょう。
「超獣」とは文字どおり、怪獣を「超える」存在として位置付けられた巨大生物のこと。挿入歌のひとつ「TACのワンダバ一週間」の歌詞でも、超獣を「ごついやでかい」と形容しており、公式が認めたド派手デザインが特徴です。それこそが超獣の魅力でもあるのですが、受け入れられない方の気持ちもわかります。
幸い、2021年末に1970年代の円谷怪獣のデザインワークに詳細な解説と当事者の貴重なインタビューを併録した『豪怪奔放―円谷怪獣デザイン大鑑1971‐1980』(監修:円谷プロダクション/編著:鶯谷五郎)という、実に素晴らしい画集が刊行されました。これを「超獣」ワールドの指南書として、改めて魅力に迫りましょう。
●ふたりの天才の手探りで生まれた「超獣」のイメージ
「超獣」は主として、ふたりの天才が手がけました。ひとりは井口昭彦氏。『ウルトラマン』の頃より美術スタッフとして携わり、『帰ってきたウルトラマン』の第30話「呪いの骨神オクスター」の水牛怪獣オクスターで怪獣デザインを初担当しました。以降、今まで見たことのない「形状」の怪獣、星人を世に送り出します。一角超獣バキシムが最も有名でしょうか。3次元が許す限りの奇抜なデザインを、あくまでも台本ベースで発想していった稀代の作家でした。
もうひとりが鈴木儀雄氏です。多摩美術大学を卒業後、東宝から円谷プロに美術スタッフとして出向。巨大ヤプールやサボテンダー、また『ウルトラマンタロウ』に登場するタイラントは特に知られています。超獣デザインの他、隊員服やメカニック、そしてウルトラマンエース自体のデザインも担当された方です。
インタビューで共通しているのは、「超獣」のイメージをおふたりともほぼ手探りで作られたということ。明確な指示があったわけでもなく、台本に書かれてあったわずかなヒントを頼りに、私たちの知る「超獣」を生み出していったのです。
■再び脚光を浴びる「超獣」たち
「超獣」の生みの親のインタビューも載った『豪怪奔放―円谷怪獣デザイン大鑑1971‐1980』(ホビージャパン)
●トゲトゲ フサフサ 「子供心」に刺さる要素がてんこ盛り!
『豪怪奔放』の鈴木氏へのインタビューでは、「超獣」を「超獣」たらしめるトゲトゲやフサフサについても踏み込んでいます。首回りのフサフサや、全身を覆うようなトゲ、玉状の何かなど鈴木デザインに多く見受けられるディティールは、時間が少ないなかで無意識的に施されていった向きも多いようです。
実際、エースキラーなどは、鈴木さんご自身でも「なんでこんなものを描いたのか」と振り返るほど奇抜。こうした生みの親のプリミティブな感覚と、少年たちの感性が呼応したときに、傑作超獣は生まれたのかもしれません。
●どんどん再評価が進む「超獣」たち
あまりにも成田亨氏のデザインが「偉大」だったためか、まさに過剰を目指した「超獣」の評価は(子どもらは別として)、平成時代に入ると顧みられる機会に恵まれない状態が続きます。
しかし、時代の潮目も徐々に動き出し、例えば2006年放送『ウルトラマンメビウス』でも他の昭和シリーズ怪獣と同様に、バキシムやドラゴリーが大暴れ。さらに2020年放送の『ウルトラマンZ』ではウルトラマンエース自体が大きくフィーチャリングされ、超獣バラバも令和に大復活を遂げました。
全体的にド派手さが売りの「超獣」を愛するファンの輪は、一時期とくらべて格段に大きく広がっているようです。何より『シン・ウルトラマン』の監督・樋口真嗣氏は、そもそも「超獣」の大ファンなのです。今後も、さまざまなウルトラ作品で「超獣」が見られることを望みます。
(片野)
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