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50年前『キカイダー』と『デビルマン』が挑んだ「裏番組」とは 視聴率はバケモノ級!

マグミクス / 2022年7月8日 6時10分

50年前『キカイダー』と『デビルマン』が挑んだ「裏番組」とは 視聴率はバケモノ級!

■「20時台」で子供たちを取り込もうとした理由

 本日2022年7月8日は、半世紀前の1972年に日本の特撮史とアニメ史、さらにマンガ史に名を遺すほどの作品がTV放送を開始した日です。ひとつは『人造人間キカイダー』。もうひとつは『デビルマン』。ともに共通した目的のためにTV放送された作品でした。

『キカイダー』の企画は以前からあり、原型は『妖術武芸帳』(1969年)の後番組として企画されながらもボツとなったものです。それが『仮面ライダー』(1971年)のヒットにより再始動しました。この時に原作者として漫画家の石森章太郎先生(後の石ノ森章太郎先生)を加え、デザインや設定を整えたそうです。

 一方の『デビルマン』は、永井豪先生が描いたマンガ『魔王ダンテ』のアニメ化の企画の途中、TV放送に合わせてヒーロー的な要素を取り入れた結果、悪魔をヒーローとしたアニメ作品を新たに東映動画(現在の東映アニメーション)と共同で製作することになったことが始まりでした。

 こうした製作経緯のまったく違うふたつの作品の裏番組となるのが、当時オバケ番組とまで言われた、土曜20時からの1時間枠に放送されたTBS系列のコント番組『8時だョ!全員集合』(1969~1985年)です。この頃の『全員集合』の平均視聴率は30%近くあったそうで、1973年4月7日放送時には50.5%という日本のバラエティ番組史上の最高視聴率を記録していました。

 この土曜20時の放送枠最強だった『全員集合』に対抗するべく、NET(現在のテレビ朝日)系列が考えた戦略が、折からの「変身ブーム」に便乗した変身ヒーロー番組枠にして、子供たちの興味を引きつけようとした1時間枠『変身大会』だったのです。20時から『キカイダー』、20時半から『デビルマン』という編成で挑もうとしました。

 ちなみに当時としても翌日が日曜日で休みとはいえ、20時はそろそろ子どもが寝る時間です。それをあえてターゲットに選んだのは、『全員集合』にも子供の視聴者がついていたことが理由でした。

 この頃の他局の放送番組を見ると、フジテレビ系列はコント55号の冠番組でも視聴率が取れなくなって時代劇に方向転換していた時期で、『柳生十兵衛』(1970年)、『清水次郎長』(1971年)などが放送されています。日本テレビ系列はV9時代ということもあって、レギュラー番組よりも巨人戦の野球中継の方が健闘していました。

 このような激戦区であったにも関わらず、『変身大会』は1クールを過ぎるころには視聴率は16%にもなったそうです。当時の子供たちの評判も高く、それぞれのマンガが連載されていた「週刊少年サンデー」、「週刊少年マガジン」での評判はもちろん、子供向け雑誌での扱いも大きなものでした。

 こうして子供の評判から視聴率を上げた2作品ですが、大人の層も多少は意識したのか子供向けにもかかわらず、時おりお色気要素が盛り込まれています。そして、この作風は後続の番組にも多少の影響を与えていました。

 こうして完ぺきとは言えないまでも、2作品は『全員集合』の裏番組としては一定の評価を得られるほどの数字を残します。そして、後続の番組にバトンタッチすることになりました。

 しかし、『全員集合』の頂点といえる時期はまだこの後だったのです。1974年からザ・ドリフターズの正式メンバーになった志村けんさんの加入、その志村さんの歌う「東村山音頭」の大ヒットが、『全員集合』という番組の地位を一層盤石なものとしました。

■TV版とは真逆のバッドエンドを迎えたマンガ版

『8時だョ!全員集合』は放送当時、幅広い年代から圧倒的な支持を集めていた。画像は「8時だョ!全員集合 最終盤」通常版DVD(ポニーキャニオン)

 TVの本放送では大きな数字を残せなかったものの、『キカイダー』、『デビルマン』ともに当時の子供たちには人気のヒーローだったと思います。当時はまだアニメや特撮という言葉は一般的ではなく、「テレビまんが」というカテゴリーで子供向け作品はまとめて呼ばれていました。

 そういった点ではザ・ドリフターズも子供受けして、当時は子供向け雑誌でも特集を組まれていたほどだったので、視聴率戦争は子供視聴者の取り合いだったと思います。ただ、当時のテレビは一家に1台あるくらいの普及率だったので、家族全員が対象だった『全員集合』に軍配が上がるのも無理なかったのかもしれません。

 しかし、『キカイダー』と『デビルマン』の強みはTVだけでなかったことでした。マンガでも見られることが視聴率以上に、後に語り継がれることになる大きな要因のひとつです。特にTV版のハッピーエンドに近い終わり方とは反対だった、マンガの最終回のバッドエンドとも言えるビターなテイストは話題になりました。

 ここではあえてその内容に触れませんが、TV版がヒーロー然としたキカイダーやデビルマンが活躍する娯楽要素の高い作品だったことから比べると、マンガ版は悲劇的な内容でヒーローを否定するような重くシリアスな大人向けの要素が強い作品だったと思います。

 ちなみに2作品ともマンガが原作であると誤解されている人もいることでしょう。しかし、どちらも製作経緯を知るとよくわかりますが、TV版とマンガは同じ設定を使った別作品です。この点については石森先生も永井先生も後に語っていました。確かにふたりのキャリアと、その後に作られていった作品たちを考えるとマンガが原作と勘違いする人がいるのも当然かもしれません。

 さらに、1980年代くらいまでは番組を繰り返し見られるビデオ機器などの環境が少なかったことも、より気軽に見ることのできるマンガ版の普及に拍車をかけていた一因でしょう。

 しかし、筆者と同世代の子供のころリアル視聴者だった人には、TV版もマンガ版も両方好きだったという人がほとんどでした。それはTV版とマンガ版それぞれを別作品として楽しんでいるからだと思います。自分のペースで読めるマンガと違って、映像は一定の時間がどうしても必要となるので、確かに世代ではない人には敬遠されるのかもしれません。

 それが理由かはわかりませんが、2作品ともに何度かリメイクされることがありましたが、ほぼマンガのアニメ化か、その影響下にある作品となっています。それほどに石森先生、永井先生の作り上げたマンガ版はドラマとして高い完成度を誇っていました。その影響を受けた作品、作家も多く誕生しています。

 最近では気軽にネット配信などで昔の作品の映像も見られる良い時代になりました。『キカイダー』と『デビルマン』、半世紀経ったこの機会に、かつて一時代を築いたTV名作を視聴してはいかがでしょうか?

(加々美利治)

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