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12人を噛んだ犬の事故でわかった「狂犬病予防接種」の重要性 咬傷事故後に接種する「暴露後ワクチン」とは?

まいどなニュース / 2024年2月15日 11時0分

※画像はイメージです(Milan/stock.adobe.com)

群馬県で小学生を含む12人を噛んだ犬の咬傷事故が大きく報道された。加害犬の犬種に対し、「ペットにするような犬じゃない」といった声も多くあがった。

しかし今回の事故の最大の問題は、犬種ではなく、事故を起こした犬の飼い主が当該犬に、「狂犬病予防法」で定められている年に1度の「狂犬病予防接種」を行なっていなかったことだ。その危険性について、医療系の施設で研究業務に携わる、渡瀬ゆず(@kamo_kamos)さんがX(旧Twitter)に投稿した一連のポストが大きな話題になった。

「12人噛んだ犬、狂犬病予防接種してなかったのか。今の日本で狂犬病である可能性は低いだろうけど、噛まれた本人たちは暴露後接種も視野に入るだろうし大変だろうな。短期間でバンバン注射打たなきゃ行けなくて、専門の病院も少ないから、めちゃくちゃ通院大変なのよ」(渡瀬ゆずさん のXの投稿より)

「狂犬病」に感染した人は発症後、異常行動や痙攣などを経てほぼ100%死に至る。現在も世界で年間59000人が「狂犬病」で死亡(厚生労働省のHPより)しており、獣医師によると、死亡者の大半が「犬」に咬まれて感染していることから、人間への感染率が最も高い「犬」に優先的に予防接種をして蔓延を防いでいるという。

日本は現在、約50年以上「狂犬病」が発生していない数少ない「狂犬病清浄国」のひとつである。だが、狂犬病を予防するワクチン未接種の犬による咬傷事故が起きた場合、厚生労働省が定める通常の「動物由来感染症対策」に加え、被害者は「狂犬病」の発症を防ぐための「暴露後ワクチン」を、最大6回に渡り接種する可能性が生じる。

日本にも「狂犬病」が潜伏する可能性はゼロじゃない

<以下、渡瀬ゆずさんのXの投稿より>

「(狂犬病の)発症と咬みつき事故を分けて考えないと混乱しますが、発症は症状が出ている状態。生還はまず不可能。一方、咬みつき事故にあっても、適切な医療が受けられれば発症を抑えられる可能性が高いです」

「今の日本で狂犬病はいないことになってるけど、それは飼育されてる動物の場合。野生のコウモリなどに潜んでる可能性はゼロではないので、飼い犬の予防接種を行うことはとても大切。飼い犬を守ることにも繋がるはず」

「今回の犬の場合は、まず10日間保健所で(犬を)観察するんでしょう」「同時に噛まれた人に最悪の場合を考えた治療が取られるかと」

被害者12名分の暴露後ワクチン代は108万円

渡瀬さんの一連の投稿に対し、1回約15000円(治療費を含む)と高額な「暴露後ワクチン」×6回分×被害者12人分=「108万円」を算出した投稿も見受けられた。それに対して、仮に被害者に暴露後ワクチンが行われた場合として、加害犬の飼い主に課せられる負担についてもXで言及していた、渡瀬さん。

「飼い犬がヒトを噛んだ場合は原則として保険が使えないんですよ。交通事故と同じ。被害者には健保が7割分を立て替えてくれるけど、加害行為なので健保から飼い主に請求が来る。つまり飼い主は10割負担することになる」

「(動物を飼ってる人は)ペット保険とか、個人賠償責任保険とか、傷害保険でカバーできる場合があります。ペット飼ってる人は万が一の時の保険も考えてみてください。実際には医療費だけでなく、慰謝料もかかります」

(※ただし、海外で野犬などに噛まれて帰国したケースなど、第三者に責任がない場合はワクチンも含めて保険適用で治療が受けられるという)

加害犬の飼い主が支払うべき被害者12人分の医療費や慰謝料と比較して、「飼い犬に毎年打つワクチンは3750円くらい」と、Xで言及していた渡瀬さん。狂犬病の発症を防ぐ「暴露後ワクチン」や、「狂犬病予防接種」の重要性について話を聞いた。

狂犬病ウイルスが「脳」に到達するまでに

ーー「狂犬病」の発症を防ぐ「暴露後ワクチン」とはどんなものなのですか?

「狂犬病のウイルスは、噛まれた場所から脳にたどり着くまで時間がかかるため、『暴露後ワクチン』を計6回接種することで発症前に免疫を付けてしまおう、というものです。実際の接種方法については、暴露”前”のワクチン接種の有無、咬傷の状況などにより異なりますので、専門の医師の判断になります」

ーー「狂犬病予防接種」を受けていない犬が12人を噛んだ今回の咬傷事故の場合、どんな治療が考えられますか?

「今回は非常にレアケースだと思います。狂犬病予防注射を受けていない犬が一度に12人も噛んだということで、狂犬病である可能性を0.00000001%でも視野に入れて暴露後接種を行うか、日本には狂犬病はいないものと考えて、怪我の治療(破傷風、細菌感染症などの治療も)のみとするか……現場の医師と保健所の判断になると思います」

ーー日本では「暴露後ワクチン」を接種できる病院も限られているそうですね。

「海外では免疫グロブリン療法というものもありますが、この薬は日本では入手できません。WHOによると、免疫グロブリンの投与ができない場合であっても、暴露後すぐに傷口を徹底して洗浄し、ワクチン接種を完了させることで95%以上の防御効果が得られるとされています。狂犬病発生国において、実際に免疫グロブリンの治療を受けているのは1~10%と推定されています。

ちなみに、海外で動物に噛まれ、帰国後に治療を受ける場合、厚労省は『咬んだ動物の特定ができ、咬まれてから2週間以上その動物が狂犬病の症状を示さない場合には、咬まれた時に狂犬病に感染した可能性を否定できるので、暴露後ワクチンの連続接種を中止できる』としています」

「暴露後ワクチン」は「発症」までの時間稼ぎ

ーー海外渡航に備え、渡瀬さんは人間用の「狂犬病予防接種」を受けているそうですね。

「アメリカのような先進国でも狂犬病による死者数は増えています。犬だけでなく、知らない間に家に侵入したコウモリに噛まれたり引っ掛かれたりして、本人が気づかないまま狂犬病に感染してしまうこともあるそうです。狂犬病は発症前に暴露後ワクチンを接種すれば発症を防げるとされていますが、一方で、ひとたび発症すれば命が助かる可能性はゼロです。また、海外では治療が受けられる病院にすぐ行けるとは限りません。言葉の壁もあります。

事前にワクチンを打っておけば、動物に咬まれた後、病院に行くまでの時間的猶予ができます。暴露前ワクチンを打っていても暴露後ワクチンは必要になるのですが、発症してしまうと死ぬしかないので、事前にワクチンを打っておくことにより少しでも安心感が生まれます」

ーー人間用の予防接種を受けた際の副反応は…?

「副反応は特になかったです。3回接種が必要ですが、いずれもインフルエンザのワクチン程度でした」

犬に「狂犬病」の疑いがある場合は「安楽死」

獣医師によると、加害犬や被害犬に「狂犬病」を疑う症例が出た場合、人間に接種される暴露後ワクチンのような治療は行われず、安楽死処置の後、脳組織が検査に出されるという。

「犬が狂犬病に感染してしまった場合、感染した犬を救う方法はないので、飼い犬に『狂犬病予防接種』を受けさせることは、愛犬の命を守ることにも繋がると思います。日本では狂犬病を持っている動物はいないことになっていますが、それは飼い犬に対して『狂犬病予防接種』が徹底されたことで実現されたものです。かつての日本では、人も動物も毎年多くの命が犠牲になっていました。それまで日本と同じく狂犬病清浄地域だった台湾では、2013年に野生のイタチアナグマの感染が見つかり、野生動物にはまだ狂犬病が潜んでいることが確認されました」(渡瀬ゆずさん)

「狂犬病予防接種」について、ネット上では、政府や獣医師の利権や利益のための陰謀だと吹聴する人もいる。狂犬病は人間を含むすべての哺乳類に感染する病気だ。もし本当に利権のための陰謀であれば、猫や人など、すべての哺乳類への接種が義務化されているのではないだろうか?

年に1度の飼い犬への「狂犬病予防接種」は、法律で定められた飼い主の義務だ。「狂犬病予防接種」は愛犬の命を守ると共に、日本国民の命を守るための対策であることも忘れてはならない。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)

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