父が織った振袖と、娘の着こなしに感嘆 「思わずため息が漏れる美しさ…」「素敵なお話」
まいどなニュース / 2024年2月29日 7時35分
織物作家の父親「とみ/toitofabric 織師(@JanuaryTomy)」さんが「成人式の振袖織ったろか?」と娘に聞くと、「えー織れるん」という返事だったというところから、成人式当日までを綴った投稿が話題になりました。
実は成人式があったのは2018年で、お嬢さんは現在26歳になっています。2021年に一度同じような内容を投稿して話題になっていますが、当時のTwitterには文字数制限があったので、より詳しく加筆して今回再投稿。そのエピソードとオリジナリティ溢れる着こなしがまた注目を集め、5.8万を超える「いいね」がつきました。
成人式の前年10月頃に、織物作家の父に「(振袖)織れるん?」と聞いた娘は、数日後に「白黒の格子柄が良い!」と希望を伝えます。
格子柄は楽勝だと思った父でしたが、シンプルなだけに格子サイズに悩みます。悩んだ末に、綿糸は本藍の特注色を注文して、センターの経糸(たて糸)の幅を細くして動きを出すことにしました。
普段は洋服生活で着物を1枚も持っていなかった娘は、織り上がった反物を見て「これ本当に振袖になるん?」と言いますが、頭の中にはしっかりとやりたいスタイルがありました。娘は父の織った振袖を素敵に着こなし、成人式当日は多くの人に声をかけられたというお話でした。
華やかな色や伝統的な柄の振袖を着る人が多い中で、シンプルな格子柄の着物に帯や足袋の赤の差し色をいれて、ベレー帽に黄色い絞りの髪飾りのコーディネートはとても新鮮です。
お嬢さんの着物姿に感嘆の声が続々
「お若くて華奢なスタイルの方が着るとぜんぜん地味に見えない、瑞々しさが溢れてます☺️ 白黒の格子柄のリクエストに対して「もっと華やかにしたら?」とか言わずプロの技できっちり仕上げるすばらしさ」
「着物もかっこいいけどご本人もかっこかわいい」
「着物もめちゃめちゃ素敵だし何より似合っていて思わずため息が漏れる美しさ…」
「愛情が込められた特別な振袖で、娘さんの成人式がさらに特別で素晴らしい思い出となりましたね!」
「唯一無二で、スッゴク素敵です。よくお似合いです。」
娘のために振袖を織った父、toitofabric(トイトファブリック)の織師・久冨浩則さんに、成人式当時のことを聞きました。
──織物作家をされていますが、お嬢さんと着物の話をされることはなかったのですか?
娘は現代っ子なので例に漏れず洋服派です。着物を着る発想はなかったと思いますから着物を語る事もありませんでしたね(笑)。着物ももちろん1枚も持っていませんでした。
──それでもとても素敵なコーディネートを考えられたのですね。
コーディネートに関しては自分の中で明確なイメージがあった事をあとで聞きました。全て娘のセンスで選んだスタイルになりますね。
──お嬢さんが持っていたイメージはどんなものだったのですか?
まずは格子である事!聴けばそれは古典柄の弁慶縞でした。何故そのデザインにしたのかは、帯やベレー帽等小物を引き立てたスタイルにしたいと言うイメージがあり、そのためには振袖は地味めの色使いで、なおかつチカラのある柄にしたかったと言う話でした。ちなみに八掛を赤のグラデーションに提案したのは僕です(笑)。
──お父さんは織りにどんな工夫を?
そうですね、格子の幅と長さには悩まされまして、何度もサイズを変えながらお互い納得のいくデザインになりました。娘からはホワイト×ブラックと言われたのですが、僕はオフホワイト×黒に近い本藍染の濃紺を提案しました。ホワイトは明るすぎて軽くなるのと黒だと普通だと思ったんですね。ちなみにポイントのセンターだけを細い経糸にしたのは、振袖に動きをつけたかったからです。結果には大満足です!
──着物になったときは、お嬢さんはどんな反応をされたのですか?
振袖が出来上がって渡したら、大喜びで直ぐに羽織っていました。「本当にできるじゃん凄い!」と言われてまた笑えました。
──成人式当日にお嬢さんをご覧になったときは感動されたでしょうね!
とにかくカッコ良すぎるの一言でした。全てが完璧に考え尽くされたスタイルに脱帽でしたね。それほどショッキングでした。色使いやつまみ細工の使い方も良かった!着物着ないのにこれが出来るのは、密かにめちゃくちゃ考えてたんだろうなと思いました。
──成人式のあとは、お父さんの仕事を理解された感じでしたか?
僕は名前で呼ばれてるんですが、「ヒロ凄いじゃん」ってお父さんレベルがかなり上がったと思っています。なんにせよ、着物で人を幸せにしている父親って考えが頭にインプットされたみたいで嬉しいですね!
◇ ◇
現在お嬢さんはご結婚されて、久富さんはおじいちゃんになっているそうです。
【織師・久冨浩則さんのプロフィール】
toitofabricと言う屋号で10年を迎えました。昔ながらの手織りで生地を織っています。着物業界は難しい状況ですが、世界中の方々に着物を認識してもらいながら、1人でも多く作品を織り、生きた証を残し続けていきたいです。好きな言葉「カッコいい」 音楽を愛する織物作家
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)
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