繁殖業者が棄てた? 和歌山の観光名所で保護されたノルウェージャンフォレストキャット 里親が見つかるも屋外の過酷な日々が体を蝕んでいた
まいどなニュース / 2024年5月13日 17時30分
和歌山県・天神崎。田辺湾に面し、人気の観光スポットです。
この付近で11匹の猫がボロボロの体で彷徨っていました。いずれもノルウェージャンフォレストキャットという長毛が自慢の洋猫。同じ猫種ばかりなので、おそらくは繁殖業者が意図的に棄てたと思われました。
棄てた人間は「観光地に放てば、この子たちも生きられるだろう」とでも考えたのでしょうか。身勝手な行動に憤りを感じるばかりですが、11匹の猫については、城下町にゃんこの会和歌山(以下、にゃんこの会)と複数の他団体が動き、全てを保護しました。
治療中の「異例の里親募集」
にゃんこの会と他団体が手分けし、11匹を動物病院へ。全匹の不妊手術を実施し、健康状態も診断してもらいました。
全匹ともに見た目通り体がボロボロ。猫風邪、猫ヘルペス、耳血腫、子宮蓄膿症、子宮水腫 卵巣腫瘍。満足に食べていなかったことから、体重がわずか2kg足らずの猫も複数いました。
団体間の垣根を越えた連携で、それぞれの猫に適切な治療と世話をし、後に里親募集。通常は保護した猫はできるだけ健康な状態になってから里親募集をかけるものですが、この11匹の猫については治療をしながら呼びかけました。それには保護した人たちに共通する思いがありました。
(おそらくは)「売れ残った」「用がなくなった」という理由から棄てられた11匹に、1日も早く安心して過ごせる環境を用意してあげたかったこと、そして「残酷な人間ばかりじゃない」と知ってほしかったからです。
里親募集の際には11匹の保護経緯や健康状態も明記し、迎え入れてくれる里親さんは相応の医療ケアがあることも告知しました。
「命のバトン」の連携で11匹全てに里親が決まる
すると、里親募集を始めてからすぐ「うちで迎え入れさせてほしい」「健康になることを目指してうちでお世話したい」という名乗りが続々と寄せられ、保護からわずか1カ月で11匹が「ずっとのお家」をつかむことができました。
にゃんこの会をはじめ複数の団体と、心ある人たちの思いが一つになりました。各団体のスタッフはこのことに胸を熱くし、それぞれの里親さんに心から感謝を伝えました。
複数の猫たちは相次いで亡くなった
心ある人たちの「命のバトン」の連携でしたが、残念なことに複数の猫たちはその後、相次いで死んでしまいました。たっぷりの愛情を注ぎ、適切な医療ケアや世話をしたのですが、生きるための体力がすでに失われていたのかもしれません。
にゃんこの会のスタッフは「生まれてきた命がどうしてこんな最期を迎えなければいけないのか」「こんな理不尽がこの世の中にあって良いのだろうか」と、悲しい気持ちになりました。そして、あらためてこうも思いました。
「動物を商売の道具にし、必要がなくなったら身勝手に棄てるなんて。人間の都合で繁殖が繰り返され、動物たちは望まない出産を強いられ、必要がなくなればそのまま棄てられる。この構造を変えなければならない」
諸外国に比べ、遅れているとされる日本のペット事情。今回のような悲しい事例が繰り返されないためにもも、人間と動物が「ともに生きる」ためにできることは何か、より深く考えていきたいと思いました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)
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